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やっと異世界へ

 それはいつも通りの朝だった。いつものように登校し、時間になったら朝礼が始まる。朝礼の後は10分の休憩時間を挟んで一限目が始まる、はずだった。


 朝礼が終わり担任の先生が教室から出た後、突然教室の床が光り出した。そして徐々に魔法陣が描かれていき、最後に目を覆うような光が放たれた。


 光が収まり目を開けると、いつもと違う風景が目の前に広がっていた。まるで西洋のお城の中にある、王様との謁見の間のような部屋に俺と他のクラスメイトは立っていた。まるでではなくここは本当に謁見の間なのかもしれないと思った。なぜなら、俺たちの周りには兵士が一列に、俺たちを挟むように左右両方に立って並んでいた。さらに、俺の目の前には、いかにも王様というような服装と冠を付けた人が中央の椅子に座っていて、その横に二人ずつ座っていた。


 この状況をクラスメイトの約三割の人たちは理解しているようで落ち着いて周りを見回していた。他の七割の人たちは逆に慌てふためいていた。この三割というのは、まあオタクの方たちで、残りの七割はそれ以外の人たちだ。ちなみに俺も何が起こったのかなんとなく理解していた。しかし、理解はしていても非現実的な出来事に驚いて焦ってはいた。


 ここでようやく声を発したものがいた。クラスの中心人物で人気者の天王寺志郎(てんのうじしろう)だ。



 「あの、ここはどこなのですか?それにあなたたちは一体何者なんですか?俺たちを使って何をするつもりですか?!」



 天王寺は王様と思われる人物に向かってそう叫んだ。天王寺のこの発言で騒いでいたクラスメイト達も静かになり、落ち着きを取り戻していた。さすが、クラスの人気者はカリスマ性もあるなぁなんてことを思っていたら、王様がようやく口を開き始めた。



 「突然の転移で驚かしてしまい申し訳ない。私はこの街、<アルスーラ>の王をやらせてもらっているザールと申します。私たちはあなた方の力を借りたいと思い、ここに呼び出しました」


 「俺たちの力を借りたい?自分らはただの高校生ですよ!いったい何ができるというのですか」


 「あなた方には勇者としてこの街を救ってほしいのです」


 「「「「勇者?!」」」


 

 オタク達以外は勇者という、ゲームでしか聞いたことがない単語を聞き驚いた。俺を含めたオタク達は、やはりこのテンプレ展開か、とすべてを理解しているような表情で特に驚きはしなかった。



 「そうです。あなた方の中に勇者の素質を持った方がいるはずです。その方を中心に問題を解決してほしいのです。その問題というのは……」



 そこからザールは今この街で抱えている問題について話し始めた。簡単にまとめると、この世界には人族以外に魔族が存在するらしい。そして人族と魔族は対立しているが、今は和平協定を結び、争いは起きていないらしい。しかし、近いうちに魔王が復活するらしく、それに合わせて魔族たちは襲ってくるに違いないと考え、それなら襲われる前に自分たちの方から仕掛けようと思いついたそうだ。

 そのため勇者を召喚しようとし、勇者の周りにいた俺たちも巻き込まれて転移させられた、ということらしい。



 「もちろん問題が解決し、この街が安全になれば勇者達には褒美を用意し、元の世界にも戻すことを誓おう」



 元の世界に戻れることを知り安心したのか、クラスメイト達の表情はいつも通りに戻っていった。



 「ここまでで何か質問はあるかね?特になければこれからステータスプレートを皆に配る。そこで自分の職業を確認し、勇者に選ばれしものは我に知らせてほしい」



 そういうと周りにいた兵士たちから学生証のようなカードをもらった。しばらくするとカードが光り出し、文字が次々と浮かび上がってきた。そこには自分の名前と年齢、職業に加えてステータスも載っていた。


 

 「おい、見ろよ!天王寺が勇者だ!」



 天王寺の周りにいた男子が天王寺のステータスプレートを見て叫んだ。すると、他のクラスメイト達は天王寺の方へ近寄って行き、「おめでとう」や「流石だな」、など声をかけていた。まあ、天王寺が一番この中で勇者っぽいしわかりきっていたことだ。



 「さてと」



 他人のことばかりでなく自分のステータスプレートを眺めた。そこにはこう書かれていた。


ーーー遠藤隆志ーーー

  年齢:16

  職業:魔王

ーーーステータスーーー


 え、魔王?


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