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ドラゴン商店は素材屋さん  作者: しまねこ


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採取と納品

「はあ、緑しかない森と草地だけだけど、こうして高いところから見るとなかなかに良い眺めね」

 連れてきてもらった上部が平らになった案外大きな岩の上で、私は思った以上に高い位置からの景色を楽しみつつ、まずはお湯を沸かして前回とは違うハーブティを淹れてみる事にした。

 これはそのまま飲んでみたところ、ちょっと思ったよりも酸味のきつい癖のあるお茶だったけど、意外な事にベーコンと刻んだ野菜が入った脂っこい惣菜パンとの相性抜群で、どちらも美味しく頂けたわ。

 よし、この組み合わせは気に入ったので、またこの惣菜パンも買っておこう。

 ちなみに、このハーブティは二煎目も美味しいと聞いていたので、収納してあった残りのお湯を入れて二煎目のお茶を淹れてみる。教えてもらった通りに少し長めに蒸らしてから、ゆっくりとカップに注ぐ。

「へえ、二煎目は案外あっさりと軽くなってて飲みやすいのね。これくらいならお茶だけでも普通に飲めるわ」

 一煎目よりも癖が抜けて飲みやすくなったそれを、ちょっと猫舌気味な私は冷ましながらゆっくりと楽しんだ。

「この前は、こんな感じでのんびりと寛いでいた時に悲鳴が聞こえたのよね。さすがに二回続けてそれは無いって」

 小さく笑ってそう呟き、若干ドキドキしながら残りのお茶を飲み干す。

 だけど、辺りは静まり返っていて昨日のような悲鳴も、誰かが争うような物騒な声も聞こえては来なかったわ。

 なので安心してそれからしばらくの間、私はのんびりと周りの景色を眺めながら食後の休憩時間を過ごした。



 その時、淡雪が何処かから戻ってきたのが見えた。きっと、私が休憩している間に狩りに行っていたのだろう。

「おかえり。お腹いっぱいになった?」

 少し身を乗り出すみたいにして岩の上から声を掛ける。

「はい、この辺りは雪原と違って小動物が多いので狩りが楽でいいですね」

 岩の上の私を見上げて、泡雪がなんだか嬉しそうに尻尾を振りながらそんな事を言ってる。

「そっか、あの雪原だと確かに獲物になるような生き物は少なそうね」

「そうですね。獲物がいないわけではありませんが、この辺りとは比べ物になりませんね。ましてや我らは群れで狩りをしますので、大物が狩れないと皆揃って飢える事になりますから、大変なんです」

 確かに、狼って群れで狩りをするイメージね。ううん、襲われる方はたまったもんじゃないだろけど。

「へえ、確かに聞くだけでも大変そう。でもそれなら、淡雪は一人で狩りが出来るの?」

「もちろんです。自分一人分くらいなら余裕ですよ」

 得意げにそう言われて、思わず笑っちゃったわ。

「さて、淡雪も帰って来た事だし、それじゃあ次の採取場所へ行きましょうか」

 大きく伸びをしてそう呟くと、取り出していたお茶セットを手早く片付けて岩の段差を使って地面に降りたわ。大丈夫だったけど、正直に言うとちょっと怖かったかも。

「それでは、次の採取場所へ向かいましょう。あと二か所は今日中に行けますね」

 琥珀の得意げな説明を聞きながら、淡雪の背中に乗せてもらって先頭になって走る琥珀の後を追いかけて行った。



 途中で定番の薬草や木の実も順調に採取しつつ、リストに載っている素材を見つけてはせっせと集めて回り、その日は日が暮れる前に早めにメンフィスの街へ戻った。

「じゃあ、このままもう一度商人ギルドへ行って集めて来た材料を納品したら、ついでにねり油を買ってこよう。それで明日はもうお休みにして、今度こそハンドクリームを作ってみるわ。それからご依頼のイラストの図案も考えないとね」

 テラさんからの依頼のイラスト、どんな柄にしようかなあ。あ、ついでだから誰の絵がいいかリクエストを聞いてもいいかも。

 街が見えて来たところでそんな事を考えていたら、何だかおかしくなって笑いが止まらずに苦労したわ。




「ああ、早速こんなに沢山! 本当に、本当にありがとうございます!」

 昨日に引き続き商人ギルドに顔を出して薬師ギルドに向かった私は、大量に納品した素材の山を前にスタッフさん達総出でお礼を言われた。

 何、そんなに困っていたの? だけど聞いてみればこれだけあれば当分大丈夫らしいので、三日続けて素材の採取には出かけなくて済んだみたい。

 帰り際にねり油が欲しいとお願いしたら、一抱えもありそうな大きな缶をそのまま渡されてしまった。

「こんなものではお礼がわりもなりませんが、どうぞお持ちください!」

「いやいや、これは売り物なんでしょう? ダメですよ。ちゃんと買いますから値段を教えてくださいって!」

 カウンター越しに何度か押し問答をして、結局そのままもらって帰る事になった。ううん、さすがは薬師ギルドと言えども商人、押しの強さは素人が太刀打ちできるものじゃあなかったわ。

 多分数キロは余裕でありそうなねり油の入った缶を一旦収納した私は、そのままのんびりとあちこち眺めて歩き、適当に見つけた居酒屋っぽい店へ入ってみた。

 もちろん、杖を出して淡雪を隣に従えてよ。



 こっちの世界へ来てから初めての大失敗……。

 ええ、もうあの店は二度と行かないわ。

 盛り合わせの料理は美味しかったし、おススメなのだと言う赤ワインも確かに美味しかった。

 だけど、どうやらあそこは若干治安の良くないお店だったらしく、もう次から次へと妙な輩が声をかけて来て、全然ゆっくり出来なかったのよね。

 中には淡雪がいても平気で隣に座り、肩に手を回そうとする奴までいて割と本気で凄んだらビビって逃げて行ったわ。

 女に凄まれて逃げ帰るくらいなら、最初から声なんてかけるんじゃないよ。

 早々に料理を平らげて赤ワインを飲み干した私は、大注目を集めつつも素知らぬ顔でため息と共に店を後にしたのだった。

 入れ違いになって今日は会えなかったけど、今度テラさんに会ったらリクエストのキャラ確認と一緒に、この街の治安について色々教えてもらおう。今回みたいにあまり治安の良くないお店とかの情報も知っておきたい。

 淡雪や眷属達がいるから何があろうと早々遅れを取る事は無いだろうけど、今回みたいに付き纏われてゆっくり食事も出来ないなんて嫌だもんね。

 何となくもうちょっと飲みたい気分だった私は、あらためて周りを見てから一軒のお店に入ってみた。

 ワインボトルと葡萄の看板が上がったその店は、中にいくつものランプが並んだ、なかなかゆっくり出来そうなお店で、密かに安堵のため息を吐いた。

「いらっしゃい。おや、従魔連れなんですね。それならカウンターの方が良いかな?」

 ダンディな髭がキュートなイケおじマスターの優しい声に、私は笑顔で頷きカウンターに座らせてもらった。

 奥のテーブルに三人組の男女。それからカウンターに座っている年配のご夫婦らしい男女。お客さんはそれだけ。

 ううん、いいお店見つけたかも。

 突き出しなのだろう。小皿に入ったナッツと干した果物の入ったお皿を見て、まずはおすすめのワインを注文した私だったわ。

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