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ドラゴン商店は素材屋さん  作者: しまねこ


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素材の納品と予定変更!

「はあ、コーヒーが美味しい」

 家の近くの広場に出ている屋台で、コーヒーのお店を見つけたので持っていたお茶セットのマグカップにたっぷりと入れてもらう。

 それからお惣菜パンを一つ買ってのんびりと歩きながらそれを食べた。

 以前は、朝は弱くて出勤前はコーヒーしか飲まなかったんだけど、ここでは少しくらいなら食べられる。

「これも、ドラゴンになった事と関係あるのかしらね?」

 ややアメリカンのコーヒーを飲みながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。



「さて、それじゃあまずは商人ギルドね」

 飲み終えて空になったマグカップを水晶魚の瑠璃が出してくれた水で濯いで綺麗にしてから収納して、一つ深呼吸をする。

「そういえば、淡雪の食事ってどうしてるの? やっぱり生肉とか?」

 よく考えてみたら、淡雪の食事を私は全く考えていなかった事に今更ながらに気が付いた。それにおトイレだってそうよ。

 思わず、隣を歩く淡雪を見てそう話しかける。

「食事は昨日、ミサキ様がお食事と休憩をしている間に私も済ませました。近くの草原には小動物がたくさんいましたからね。排泄も郊外で済ませております。まあ、街におられる間はご迷惑にならない範囲で済ませますのでご心配なく」

「いやいや、駄目でしょそれ。ええと、おトイレって家の中に作っておけばいいのかしら?」

 ペットを飼った事が無いけど、少なくともトイレの世話は飼い主の務めだろう。ペットトイレの広告を思い出しながら、淡雪の頭を撫でてやる。木箱に砂を入れておけばいいのかしらねえ?

「大丈夫ですよ。お屋敷の裏庭に砂場がありますので、出掛けない時はそこで済ませます。精霊達に頼んでおけば、後片付けもしてくれますから、ミサキ様が何かなさる必要はありませんよ」

 驚いて目を見開くと、土猫の琥珀が淡雪の背中に現れて器用に座った。

「お任せください。それくらいなら、さっと分解出来ますので!」

 その言葉の意味を考えて、思わず吹き出したわ。

「ああ、要するに出したものを土に返すって意味ね」

 苦笑いしながらそう言うと、琥珀は得意気にうんうんと頷いてから更にとんでもない事を言ってくれた。

「ミサキ様も、郊外で行きたくなったら言ってくださいね。サクッと分解して差し上げますので」

 まさかの提案に、もう一回吹き出してしまった私は……悪く無いわよね。

「でもまあそうね。もしもの時はお願いするわ」

 琥珀の頭を撫でてやりながらそう言い、笑いを堪えられない私だったわ。

 ちなみにこの世界では水が豊富で、街では上下水道完備。何とトイレが水洗なのよね。魔法万歳! 魔晶石万歳!



 そんな話をしながらゆっくりと歩いて、商人ギルドに到着した。

「おはようございます。ご用件を伺います」

 笑顔で駆け寄って来てくれたスタッフさんに挨拶をして、収納していた薬草を一枚だけ取り出して見せる。

「ええと、薬師ギルドへ納品に来たんですけど、予約とか必要だったりしますか?」

 分からない事は聞くに限る。多分鑑定的な事をしたりするのかと思ったけど、手にした薬草を見たスタッフさんは笑顔で大きく頷いた。

「かしこまりました。それならこちらへどうぞ」

 そのスタッフさんの案内で、カウンターの端にある受付へ向かう。

「こちらが薬師ギルドの受付になりますので、ギルドカードをお見せください」

 笑顔でそう言って、一礼して下がって行くスタッフさん。ううん、完璧で的確な案内だったわ。

 笑って颯爽と戻って行く後ろ姿を見送ってから誰もいないカウンターに向き直る。

「すみません。薬草の納品に来たんですけどここで良いんでしょか?」

 まだ持ったままだった薬草を見せると、中にいた犬の獣人の男性スタッフさんが慌てたようにカウンターに座ってくれた。

「ありがとうございます。量はどれくらいお持ちでしょうか?」

 トレーを用意しながら聞いてくれたので、少し考えて首を振った。

「そこには乗らないですね。種類も色々ありますけど、とりあえず定番の物を中心に集めて来ましたよ」

 いくつか持っているものを取り出して見せると、奥から何人かが飛び出すみたいにして駆け寄って来た。

「あの、それならこちらへどうぞ。とりあえず納品いただける物を順番に出していただけますか!」

 そう言われてカウンターの端にある扉から中に入り、大きな机の前へ行く。



「じゃあ出しますね」

 そう言って、まずは定番の薬草や木の実を取り出していく。これはサラマンダー達が集めてくれた分を渡した。私が持っている分は大した量じゃあないので、今後の参考の為に見本としておいておく作戦。

 次々に取り出されるそれらを、スタッフさん達が総出で手早く整理してくれた。さすがに慣れていらっしゃる様子。

「いやあ、どれも素晴らしい状態ですね。しかもこんなにたくさん。早速担当者に連絡して早急に処理していきます」

 渡した分の明細を詳しく書きながら、窓口に座った犬の獣人さんが何度もそう言って嬉しそうにしていた。支払いは、ギルドの口座へ振り込まれるらしい。

「お役に立てたなら良かったです。いずれ店を開店する予定なんですけど、まだすぐってわけにはいかなさそうなので、定期的に納品するようにしますね」

 素材の明細を受け取りながらそう言うと、何故か拍手が沸き起こったわ。なに、そんなに困窮してたの?

 聞けば最近、メンフィスの街を拠点にしていた薬草採取専門の冒険者が何人か引退したり拠点を移したりしてしまったらしく、定期的な素材の納品が滞っていたらしい。

 まあ、どこを拠点にするかはあくまでも個人の自由だからね。

 そんな訳で、冒険者ギルドに定期的に依頼を出したりしてなんとか凌いでいたらしい。

「あらら、そうなのね。ええと、足りない素材とかあったら気をつけて採取するようにしますけど、何か足りないのってありますか?」

「お願い出来ますか!」

 私の提案に、目を輝かせたスタッフさんが一人、ものすごい勢いで奥へ行ってすぐに戻って来た。

「あの、出来れば早急に欲しい素材のリストです。時期的に難しいものもありますので、可能な限りで結構ですから、どうかお願いします!」

 何枚もの束になったそれを受け取りつつ、苦笑いして頷いたわ。



「ううん、ハンドクリーム作りはまた今度ね。困ってるのなら、こっちを優先しないとね」

 小さくため息を吐いて呟いた私の言葉に、琥珀が得意気に胸を張って見せた。

「お任せください。これくらいなら造作もないですよ。すぐに集まります」

「そうなのね。頼りにしてるわ。それじゃあ予定変更して、このまま郊外へ採取かな。ああ、それなら着替えないと、さすがにこの格好で郊外へ出るのは危険ね。

 街の中用の身軽な服装の自分を見てそう呟き、満面の笑みのスタッフさん達に見送られてひとまず家へ戻る事にしたわ。



「家へ戻って郊外用の服に着替えたら、そのままお出かけね。じゃあ淡雪。またよろしく」

「はい、お任せください。どこへでもすぐにお連れしますよ!」

 嬉しそうに尻尾を振りつつワンと吠えた淡雪を撫でて、着替えの為に一旦家へ戻ったのだった。

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