報告とまさかの展開
「後の手続きはこちらでしておきます。ご苦労様でした」
受付で手続きをしてくれているスタッフさんを何となく眺めていると、ギルドのスタッフさんに声をかけられた。
「了解、じゃあ彼女の事よろしくお願いします。ええと、もし私のことを何か聞かれたら、構わないから教えてあげてください。これも何かの縁だろうし、力になれることがあれば協力しますので」
「了解しました」
「はい、それじゃあ失礼しますね」
笑顔で一礼して、とりあえず施療院という名の中規模病院を後にする。
もう一度冒険者ギルドにも顔を出したんだけど、ギルドマスターのガボットさんはいなくて、一応彼女を施療院に預けた事をカウンターにいた人に報告してから冒険者ギルドを後にした。
「ううん、やっぱり気になるし、要らぬお節介かもしれないけど一応商人ギルドにも声をかけておこうっと」
これはどちらかというと、私自身が納得するための報告。ここまでしておけばまあ、一通りの事はしてあげたと思えるものね。
って事で、冒険者ギルドをでた私はのんびりと歩いて商人ギルドへ向かった。
もちろん、杖を出して淡雪と並んで歩いてるわよ。
「あらあら、こんな時間なのにかなりの人がいるのね」
到着した商人ギルドはなぜか大勢の人であふれていて、何やら賑やかだ。
もしかして、私は知らなかったけどお祭りとか夜市みたいなのがあったりしたのかも。
しかし私が建物の中へ入った途端、スタッフさん達がものすごい勢いで立ち上がった。
「ギルドマスター! ミサキ様が! ミサキ様がお越しになりました〜〜〜!」
「はあ、一体何事?」
そんな扱いをされる覚えがなくて慌てていると、奥から虎の獣人でギルドマスターのテラさんが、これまたものすごい勢いですっ飛んで出てきた。
「ミサキ! 貴女今夜は採取で外に出てたんじゃないの?」
すがりつかんばかりの勢いでそう言われて逆に驚いたわ。
「ええと、私が外に採取に出てるって、誰から聞いたんです?」
個人情報〜〜! って脳内で叫びつつそう尋ねると、にっこりと笑って右腕を引かれた。
「とにかく、貴女が帰ってくるのを待ってたのよ! 色々と説明するからこっちへ来てちょうだい!」
「ええと、それならちょうど良かったです。私もテラさんに報告があるんです。実はちょっと郊外でトラブルに巻き込まれまして……」
後半はやや小さな声でそう言うと、急に立ち止まったテラさんが勢いよく振り返って私を頭の先から足の先までまじまじと眺めた。
「どこも怪我はしてないみたいだけど、何があったの?」
「ええと、ちょっとここでは、その……」
はっきり言って、何故か大注目状態なのでちょっとここで話して良いかどうかの判断がつかなかった。
「ああ、そうよね。ごめんごめん。じゃあとにかくこっちへ来てちょうだい」
そう言って、腕を引かれて奥にある多分商談用の部屋の一つにそのまま連れて行かれた。
「まあ座って」
なかなかに座り心地の良さそうなソファーに座り、即座に出されたお茶をいただく。
「まず先に報告を聞くわ。何があったの?」
テラさんと、それから精霊魔法使いのリロルさんが座るのを見て、私もお茶の入ったカップを置いて小さくため息を吐いた。
それから、郊外であった人狩り達を捕まえた事件のあらましと、三毛猫の獣人の子供を保護した事をまずは伝えた。
「ええ、ハイディ村って言えば、郊外の獣人の村よね。そこの三毛猫の子供?」
さすがに登録している人達全員は覚えていないみたいで、首を傾げて考え込んでいる。
「ハイディ村のナータって言ってましたね」
名前を告げた途端に、テラさんが大きく吹き出す。
ええ、今の話のどこに吹き出す要素があった?
驚く私を見たテラさんは、苦笑いしたながらなぜ笑ったのか教えてくれた。
どうやら彼女の事は知っていたらしいのだけど、何と、ナータちゃんは子供じゃなくて、立派な成人女性でした。子供扱いしててごめんなさい。
「まあ、彼女は小柄だからよく子供に間違われて悔しい思いをしてたわ。両親は腕のいい冒険者だったんだけど、確かに少し前に亡くなってるはずよ」
頷いた私は、彼女から聞いた借金の話と襲って来た人狩り達の事も詳しく報告する。
「ちょっと警ら隊に報告してきます。これは聞き流せる話じゃありませんから」
真顔になったリロルさんがそう言って立ち上がり、早足に部屋を出て行ってしまった。
「ご苦労だったわね。貴女に怪我が無くて何よりだわ。それにしても、初めての郊外採取でそれって、なかなかないわよ」
「そうですよね。私もそう思います」
呆れたようにそう言われて、私も同じ事を思っていたので、苦笑いしながら何度も頷いたわ。
それから顔を見合わせて笑い合った。
「ところで、テラさんも私に話があるみたいな事を仰ってたけど、何だったんですか?」
カップに残っていた飲みかけのお茶を飲み干したところで、ここへ来た時の事を思い出してそう尋ねる。
「そう、そうなのよ! そうなのよ!」
何故か目を輝かせたテラさんが、身を乗り出すようにして私の手を取った。
「ねえ、ミサキ。絵を描いてってお願いしたら描いてもらえるかしら? もちろん報酬は払うわ!」
「はあ、絵って何?」
いきなりそう言われて叫んだものの、直後に黙る。どう考えても心当たりは一つしか無い。
「ええと、それってもしかして……」
するとテラさんは満面の笑みで何度も頷いた。
「昼過ぎに、突然ラディウスから話があるからって言って呼び出されたのよね。それで何事かと思って行ってみて驚いたわ。もう最高すぎて叫び声しか出なかったわよ。お願い! 私の部屋に飾るから絵を描いてちょうだい。それから、絶対彼女も気にいると思うからあのスケッチブック、彼女に見せてもいいわよね?」
「彼女って?」
答えは分かる気がしたけどあえてそう尋ねる。
「ローズリィに決まってるでしょう! 作者のレディパープルは一切身分を明かしていないから、窓口は全てローズリィが担当しているのよね。ねえ、良いでしょう?」
まさかの作者様へのダイレクトルートの出現に、言葉も無くコクコクと頷く事しか出来ない私だったわ。




