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ドラゴン商店は素材屋さん  作者: しまねこ


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行き倒れ??

「ちょっとしっかりして!」

 摘んでいた花をとりあえず収納した私は、慌てて駆け寄って倒れたその子を抱き起こした。だけど完全に気絶しているみたいで全く反応無し。

「ええ、どうしたら良いのかしら。薬なんて持ってないし……」

 薬の素材なら大量に集めて持っているけど、ここには薬そのものは無いし、今の私に薬を作る技術は無い。

 それに私には医学的知識なんて皆無だから、応急処置って言ったって何をどうすれば良いかさっぱり分からない。そもそも、ここには消毒用アルコールも、伸びる包帯も絆創膏もないわよ。



 咄嗟に抱き起こしたはしたものの、どうしていのか分からずに途方に暮れていると、暗黒丸がコロコロと転がって獣人の子の胸元に来て止まる。そして一瞬だけ消えてすぐにまた姿を表した。

「ミサキ様。獣人は人間よりもはるかに頑丈です。簡単に診察しましたが、内出血を伴う打ち身は複数ありますが、命の危険があるほどではございません。それよりも、倒れた主な原因は疲労と空腹の様ですね。この子が捉えられていた奴隷だとすれば、おそらく水も飲ませてもらっていないのではないでしょうか」

 暗黒丸の説明に驚きつつ何度も頷く。いやあ、私の眷属達は皆優秀ね。

 どうやら医学の知識があるらしい暗黒丸が大丈夫だと言ってくれたので、ひとまず大きめの布を取り出して地面に敷き、そこに獣人の子を寝かせてやる。

「これ、どうするべきかしら。ギルドマスター達は帰っちゃったし、私がこのまま連れて帰っても問題にならない?」

 眷属達は戸惑うように顔を見合わせたり転がったりした後、代表して茜が口を開いた。

「とにかく一度メンフィスの街へ戻りましょう。そして、冒険者ギルドに行き倒れを保護したと連絡してください。ギルド傘下の診療所を紹介してくれると思いますから、あとの事はそちらへお任せするのが一番良いかと思いますね。もしも単なる行き倒れであれば、それで問題ありません。もしもこの子が本当に逃げ出した奴隷なのであれば、先程の一件の貴重な証人となります。ギルドに報告しないまま勝手に保護していた場合、最悪ミサキ様に誘拐の嫌疑がかかる可能性がありますので、それはお止めになった方が良いかと」

 言いにくそうな茜の説明に、若干遠い目になる。

「そっか、つまり私が手引きして奴隷を逃したと思われる可能性がある、って事ね」

 うんうんと揃って頷く眷属達を見て、私は大きなため息を吐いた。

「了解、ここは冒険者ギルドに一枚噛んでもらって、後の始末はお任せしましょう。ええと、淡雪に乗せて帰れるかしら?」

 小柄とはいえ、二人も乗せて大丈夫かしら?

 心配になってそう呟き、寝かせていた獣人の子を振り返った。


「ちょっと淡雪! あなた何してるのよ!」


 慌てて叫んで止めようと淡雪に横から抱きつく。

 驚いた事に、寝かせていた獣人の子に覆い被さるようにして、淡雪がぺろぺろとその子を舐めていたのだ。しかも顔だけでは無く、剥き出しになった腕や足も順番に豪快に舐めている。

「まさかと思うけど……食べないわよね?」

「ミサキ様、いくら何でも、食べて良いものと駄目なものくらい識別出来ます」

 一旦顔を上げてこっちを振り返った淡雪が、まるで文句を言うかのようにブルッと体を震わせて鼻先に皺を寄せてそう言った。

「薬が無いとの事ですから、私の唾液で代用です。この程度の擦り傷ならすぐに血も止まりますよ」

 確かに、冷静になってよく見ると淡雪が舐めていたのは怪我をした箇所ばかりで、そのおかげなのか滲んでいた血は止まってるし、ひどく汚れていたところも綺麗になってる。

「そっか、ありがとうね」

 もう一度、獣人の子の顔を舐め始めた淡雪のリボンのかかった首元を手を伸ばして撫でてやり、私も横からその子を覗き込んだ。

 幾つくらいなんだろう。小柄な体に小さな顔、そして可愛い三毛の毛並み。

 それにさっきは気がつかなかったけど、長い尻尾が敷布の上に力なく投げ出されていて、ふわふわなそれに触りたい衝動を抑えるのに苦労していた。



「う、ううん……」



 ごく小さなうめき声が聞こえて、慌てて顔を覗き込んだ。

 声をかけようとした正にその時、もう一度眉間に皺を寄せて唸ってから閉じていた瞼が唐突に開き、金色の綺麗な瞳が見えた。

 しかし、それは自分の顔を舐めている淡雪を正面から見上げる結果となった。

「ひゃああああ〜〜〜〜!」

 いきなり、そう叫んで細かった尻尾が五倍くらいに膨れ上がり、一瞬で手をついて起き上がって身構える。

「銀狼! どうしてこんなところに!」

 しかし、弱っていた体は急激な動きに耐えられずにぐらりと傾き、地面に手をつく。

 そしてそのまままた体を支えきれずにパッタリと倒れてしまった。

「せっかく逃げられたのに……まさかここで銀狼に襲われるなんて……母さん、逃げられなくてごめんなさい……」

 か細い小さなその声は、まさかの女の子の声。

「せめてなぶり殺しは勘弁してほしいなあ……」

 目を閉じてそんな事を言われてしまい、小さく笑って手を伸ばした。

「ねえ、ちょっと、大丈夫だから目を開けてちょうだい」

 軽く腕の怪我をしていない部分をそっと叩いてやると、驚いたみたいに目を開いてこっちを見た。

「ええ? 人間……じゃなくて、エルフ? でもちょっと違う?」

 不思議そうにしているその表情が妙に幼く見えて思わず吹き出したわ。

「はじめまして。ミサキよ。この子は私の従魔だから、無闇に人を襲ったりしないから安心してね」

 出来るだけ怖がらせないように笑顔で優しくそう言うと、ポカンと口を開けたその子は私と淡雪を交互に何度も見て目を瞬かせた。

「あなたの、従魔?」

「そうよ。可愛いでしょう?」

 笑ってそう言い、大きな淡雪の首元に抱きついてみせる。

 心得ている淡雪も、良い子座りしておとなしくしていてくれた。

「わあ、すごい……いえ、あの、私、ナータです。それより私……」



 ググ〜〜〜〜〜〜!



 体を起こしてそう言いかけた時、ナータと名乗った彼女のお腹からものすごく大きな音が聞こえて、咄嗟に我慢出来ずに吹き出しちゃったわ。

 お腹を押さえて無言で慌てる彼女を見て、笑って一つため息を吐いた私は、まずは何か食べさせてあげる事にしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] バンドエイドが気になって検索してみたら商標登録されてるんで、 使い方としては特に問題無いと思うんでトラブルにはならないと思いますが、 一般名称の「絆創膏」にしておいた方が良いのかなと思…
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