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ドラゴン商店は素材屋さん  作者: しまねこ


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初めての採取と嫌な予感

「へえ、これがその咳止めを作るための薬草なのね」

 土猫の琥珀が教えてくれる薬草をせっせと摘みながら、私はまるで色も形も紫蘇の葉みたいな、濃い紫色をした腰くらいまでの高さのそれ見て感心したように呟いた。



 淡雪に乗ってかなりの距離を走り、ようやく到着した場所は深い森。

 まずはそこで、琥珀の案内でいくつかの木の実を収穫した。

 どんぐりや栗みたいな硬い殻に包まれたそれは、薬の素材として重宝されるらしく、手の届かない場所の収穫は、風呼び鳥の浅葱がごく小さな突風を起こして落としてくれた。

 しかも地面に落ちた木の実の収穫も、茜と、集まって来たサラマンダー達があっという間に拾い集めてくれたわ。

 何これ、超楽ちん。

 それから森の中を歩いて周って言われた木の樹皮を剥がしたり、生えている苔やキノコを教えられるままに採取して回った。

 もちろん私もやったけど、採取はサラマンダー達が手伝ってくれ、樹上の花や木の実は浅葱を始めとした風呼び鳥達が手伝ってくれたおかげで、一人では絶対に採取出来ないくらいの量の素材がどんどんと確保されて行った。

 どうやらこれらはどれも定番の薬の素材らしく、そうなると当然需要も多いので、ナディアさんもここには定期的に来ては、眷属達に手伝ってもらって大量に採取して回っていたんだって。



 琥珀に次へ行くと言われたのでまた淡雪に乗せてもらい、深い森を抜けた先にあったやや開けた場所で下ろしてもらう。

 そこは、緑の草原の合間に雑木林が点在する中々に景色の良い場所だった。

「へえ、良い所ね。ううんそろそろお腹が空いてきたわね。一度休憩して何か食べよう」

「それなら、向こうに良い岩場がありますよ」

 浅葱の言葉に教えられた場所を見ると、大きな岩がゴロゴロ転がってる場所で、確かにあの岩の上は平らになってるので、お弁当を広げたりお茶の用意をするのに良さそう。

「良いわね。じゃああそこへ行きましょう」

 階段状に欠けた岩に足をかけて、ゆっくり気を付けて上へ登ってみる。

「うわあ、これはまた良い眺めね。よし、じゃあここでお弁当にしましょう」

 淡雪は上には来ずに岩の横で転がってくつろぎ始めてるので、私は買ったばかりのお茶セットを取り出して組み立て、お湯を沸かしてみた。

「瑠璃、ここにお水をお願い」

 ヤカンの蓋を開けて水を入れてもらい、茜が火をつけてくれたコンロの上に乗せる。

「ええと、この茶漉しにお茶の葉を入れておくのね」

 金属製の茶漉しの中に、一番人気なのだと教えてもらった紅茶の葉を入れてカップにセットする。

「お湯を入れたらこれで蓋をして砂時計が落ちるまで待てば出来上がり、か。へえ、優雅なものねえ。紅茶なんて、ティーバッグでしか入れた事無いわ」

 小さく笑ってそう呟き、あっという間に沸いてきたお湯をカップに注いだ。それから砂時計をひっくり返して横に置いておく。

「ええと、お湯が余っちゃったわね。これってこのまま収納……出来ちゃったわ。そっか、それなら家でお茶くらい入れてお弁当と一緒に持っておけば良いんだ。帰ったら遠足用のお弁当セットを作っておこう。じゃあ水筒かピッチャーを探さないとね」

 小さく笑ってそう呟き、帰ったら準備しておく事を考えながら、お茶が入るまでの時間をのんびりと風に吹かれて過ごした。

「やめた。お茶は冷たいのだけ用意しておいて暖かいのは外で入れよう。絶対その方が気持ち良いわ」

 春の暖かな日差しに照らされ、思わず眠りそうになる。

「ああ、だめだめ。まずは食事よ。ああ、もう砂が落ちちゃってる!」

 慌てて蓋を開けて茶漉しを外す。

 残ったお茶の葉は茜があっという間に燃やしてくれたわ。エコね。これならゴミも出ない。

「じゃあいただきます!」

 軽く手を合わせて、屋台で買って来たハンバーガーを食べる。

「うん、ちょっと塩味が濃いめだけどこのバーガー美味しい。何の肉かはきっと考えちゃ駄目よね」

 少なくとも私の知る世界とそれほど違わないと聞いていたので、きっとこれは牛肉だと思っておきましょう。



「はあ、美味しかった、じゃあ、デザートにあのイチゴを食べてみようっと」

 屋台で買ったあの美味しいイチゴを取り出して食べながら、周囲の景色を見回す。

「ううん、全く人がいないわね。それに街も街道も全く見えない。どれくらい離れてるのか見当もつかないわね」

 基本インドア派でオタク趣味だった私は、イベント遠征ならどこへでも平気で行ったけど、アウトドアやキャンプの経験は全く無い。こんな郊外でお弁当広げるなんて子供の頃の遠足以来ね。

 なんだかおかしくなって、笑いを堪えつつ甘くて美味しいイチゴを、包み一つ分の半分くらい食べたところでギブアップ。

「ううん、もうお腹いっぱい。これはまた後でいただきましょう」

 そのまま収納してその場に寝転がる。

「はあ、ちょっと休憩……ああ、風が気持ち良いわ……」

 食べてすぐにお昼寝出来るなんて、なんて贅沢。

 小さな欠伸を一つした私は、目を閉じてのんびりとお昼寝を楽しんだのだった。



 気持ちよく寝ていた私は、不意に目を覚まして驚いて飛び起きた。

「ねえ、今、悲鳴が聞こえた?」

 そう、甲高い悲鳴が聞こえて飛び起きたのよ。

「あちらから聞こえましたね。どうやら大勢の人間が集まって何か騒いでいます。ちょっと確認して来ますので、ミサキ様はここから動かないでください」

 下を見ると、寛いでいたはずの淡雪が一瞬で私の所まで駆け上がって来た。

「人間達が東の森の中で大勢騒いでいます。ただの狩りしては様子が変ですので、念の為警戒を」

 眷属達も全員出てきて警戒体勢に入るのを見て、私は戸惑いつつも杖を取り出して浅葱が飛んで行った方角をただ見つめる事しか出来なかった。

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