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ドラゴン商店は素材屋さん  作者: しまねこ


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大量購入と私のお願い!

 店へ戻ってラディウスさんに見てもらいながら並んでいる服を色々と見せてもらった結果、そりゃあもう大量に買い込んだわよ。

 何よりも嬉しかったのが、店の品揃えが街の中で着る為の服と、いわゆる冒険者スタイルの服の二種類に大きく分けて展開されていた事。

 しかも、街の中用の服に至ってはさらに細かく展開されていて、普段着と外出着、それから室内着や下着といった具合にね。

 しかもパジャマっぽいのもあって、色もデザインも豊富!

 そしてもう一つの冒険者スタイルも最高だったわ。

 しかも、それほど厳つくないので、私が郊外への採集などに出る際にも着られそうなのがいっぱいあって、しかもどれもとってもオシャレ。

 例えば、ズボンは迷彩っぽい柄のカーゴパンツスタイルが主なんだけど、彩りはとても華やかだし、シルエットもウエストがキュッと締まってて体のラインに沿ってくれる。

 それなのに生地はかなりしっかりとした厚みがあって、だけど身に付けた時の不自然感は全然無くてしっかり身体を守ってくれている感じなのよね。

 しかも、スリムっぽいのからかなりゆったりめまで、カーゴパンツのデザイン一つとっても種類が豊富。それ以外にも、上着は言うに及ばずマントやブーツも種類が豊富。

 良いわ、こう言うのが欲しかったのよ。

 普段着用と郊外用の二種類を文字通り全身コーデで買い漁ったわ。

 初めて言ったわよ。ここからここまで全部買いますって!



 ああ、違った。よく考えたら同人誌即売会では言った事あったわね。机の上の分全部二冊づつつ買います!……ってね。

 え、なぜ二冊かって?

 そんなの、自分用と保存用に決まってるわ。

 本当なら、もう一冊布教活動用も欲しいんだけど、私、実は身近にオタク友達がいないのよね。

 ネットでは同好の士は沢山いるけど、中々リアルで会うのって難しいのよ。ほら、やっぱり勇気いるじゃない?

 即売会では、差し入れやお手紙を持って作者さんのところへ突撃した事は何度もあるけど、それは友達とは違うものね。

 ああ、この世界にはああ言う文化は無いだろうなあ……。

 よし、覚えている内に私の萌えを自己生産しておこう。

 郊外用のフード付きマントを選びながらそんな事を考えていて、ふとある事を思いついた。

 いずれ自分でやろうと思っていたけど、目の前に専門家がいるんだからこれは絶対に聞いてみるべきよね。



「ねえ、ラディウスさんは、これらの服ってデザインも全部貴女が考えているの?」

 突然手を止めた私のいきなりの質問に、かき集めた私の買った服をチェックするのを手伝っていたラディウスさんが、驚いたように私を振り返りつつ答えてくれた。

「店を始めた最初の頃は、もちろん私がデザインも縫製も全部やっていたんだけど、今はさすがに全部は無理ね。専任のデザイナーは何人もいるしお針子さんも各街に大勢いるわよ。それから生地や素材を卸してくれる商会も今では複数あるわね。今は基本的な指示だけで、私自身が直接デザインする事はほぼ無いわ。まあ、新作デザインの最終判断は全て私がしているけどね」

「じゃあ、もしかして注文すればオリジナルを作ってくれたりする?」

「もちろん、オーダーも取ってるわよ。あらごめんなさい。急ぐかと思って既製品を勧めたんだけどオーダーの方が良かった?」

 驚く彼女に、私は嬉々として縋りついた。

「いやいや、お店の服も最高だからもちろんまた買うわよ。既製品最高! って、そうじゃなくてね。あのね、あのね。作って欲しいデザインをお願いすれば、パターンから作ってくれたりする? もちろんお金はちゃんと払います!」

「ええ? それはつまり、あなたがデザインするって事?」

 またしても驚く彼女に、私はうんうんと首がもげそうな物凄い勢いで頷いたわ。



 そうよ、あの少し前から月刊誌で連載が始まった異世界物に出てくる、主人公を助ける美味しい役の女性冒険者スタイル! 私のお気に入りキャラの一人よ。

 私が今度のイベントで絶対コスプレしたかったんだけど、出来なかったあれよ! あの衣装も、ここでなら郊外採集の時に身に付けられるじゃない。

 変なカメコに取り囲まれる事も、意味不明な名刺を渡される事も無いわよね。

「もちろんデザインするわ! 何なら小物のデザインまでするわ! いくらでも描くからお願いします! 作ってください!」

 力一杯叫んだ私に、ラディウスさんは呆れたようにしばらく呆然としていたけれど、いきなり私の腕を捕まえて笑い出した。

「ミサキ、貴女最高ね。じゃあ、落ち着いたらまずは貴女のラフ画を見せてくれるかしら。それを見て考えるわ」

 またしても首がもげそうなくらいにうんうんと頷く私を、ラディウスさんは満面の笑みで抱きしめてくれた。



「じゃあ、どんな風に描けばいいか教えてくれるかしら。希望のデザインを描いてくるから」

 記憶が確実な内に、是非とも形に残しておきたい。

 その言葉に、店で私を待っていたデボラさんまでが一緒になって笑っている。

「ミサキは絵も描けるのかい。良いじゃない、どんなのがご希望なのか描いてみて貰えば」

 完全に面白がっているデボラさんの言葉に、そばにいたスタッフさんが笑いながら頷いている。

「オーナー、有能なデザイナーは常に不足してます。特に、小物関係は一人でも多く欲しいです。ここまで仰られるのなら、一度描いてみてもらっては?」

「確かにそうね。じゃあちょっと待っててくれるかしら」

 そう言ったラディウスさんは、そのスタッフさんと一緒に奥へ行ってしまった。



 二人を見送り、レジカウンターみたいな場所の横で大人しく待ちながら私は改めて広い店内を見回した。

「男性用の服は、ここには無いのね」

 何気ない呟きだったんだけど、そばにいたスタッフさんが店の外を指差した。

「ここは女性専門店なんです。男性向けは、同じ並びにある別の店舗で街の中での服のみ取り扱っていますね」

 その説明にちょっと考える。

「あら、男性向けの方が、郊外用の服って需要がありそうなのに」

 冒険者ギルドにいたのはほぼ男性だったのに。どうしてかと思って聞いてみると、苦笑いしながら教えてくれた。

 冒険者達は武器と防具にお金をかけるので、その下に身につける服はなんでもいいんだって。要するに柄や色は何でもよくて、求められるのはとにかく丈夫で長持ちする事だけ。

 それならすでに他にも作ってる人が大勢いるので、ラディウスさんも特にこだわる必要ないと判断したらしい。

 まあ、確かに防具の下ならなんでもいいのかもね。私はこだわるけどね。



 のんびりとスタッフさんと話をしていると、奥からラディウスさんとスタッフさんが出てきた。

「ミサキ。じゃあこれを預けるから、手が空いた時でいいから希望のデザインを描いてみてもらえるかしら」

 渡されたのは、大判のスケッチブックとインクとつけペン。それから十二色のパステル。

 半ば無意識で差し出されたそれを受け取る。



 ああ、この世界にもスケッチブックがあった。

 ちょっと紙は目が荒くて硬そうだし、つけペンのペン先も硬そうだけど、それでも描ける!

 カウンターにスケッチブックを置いて一ページを開く。

 立ったままでも構わなかった。

 もう気が付いたら描き始めていた。



 最近は○Padとペンシルでデジタルで描く事が多かったけど、元はアナログ派で鉛筆やインクとつけペンで描いてたわよ。実はペン画って大好きなのよね。

 呆気にとられる周りに気付かないまま、私は自分の記憶の中にある彼女を思い出して、もうそれはそれは夢中になって描き続けていたわ。



 ただいま、私の脳内ではドーパミンがドバドバ出ております。

 ああ、幸せ。

 やっぱり私の人生にどんな形であれ創作は必要不可欠だってコトを思い知ったわ。

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