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私の守護石のルビーを作る

 不親切チュートリアルちゃんは、簡単に『私の石を返さないと』なんて言ってるけど、私が持ってるルビーは、さっき不親切チュートリアルちゃんから貰ったあれ一個きり。

 もう本当にどうしていいのか分からなくて、ちょっと本気で泣きそうです。やっぱりもらったあの宝石、返した方が良さそうな気がしてきた。



 完全にパニックになってる私を見て、ラディウスさん達女性三人が、笑顔で私の左右と後ろに立ってくれた。

「落ち着いて。初めてだもの、何の事だか分からなくて戸惑うのは当然よね。あのね、さっき魔力を解放して火の魔晶石を作ったでしょう? あれと同じ事をすればいいの。人の姿の時に魔力を解放すれば自分の守護石が出来るのよ。大丈夫だからとにかく一度やってみましょう」

 ラディウスさんのすっごくよく解る説明に、心の底から感謝したわ。それなら何とか出来そうな気がしてきたわね。

「分かったみたいね。失敗しても大丈夫だから一度やってみましょうか」

 金髪のラディウスさんが、そう言って杖を握る私の右手首に手を添えてくれた。小柄なデボラさんが、空いていた私の左手を取る。大柄なモルティさんは私の後ろに立って両肩に手を当てる。

「目を閉じて意識を集中するのよ。あれだけの魔晶石を作れる魔力があるんだもの、もう出来るはずよ。最初に貰った、ナディアが残したルビーを思い出してご覧なさい」

 優しいラディウスさんの言葉に、小さく頷いた私は深呼吸をして目を閉じる。

 思い浮かべるのは、最初に杖の中に入れたあの巨大なルビー。

 とても綺麗な真っ赤な石。あれを作るって、どうやって?

 綺麗なルビー、綺麗なルビー、あれを作る……。



 頭の中でぐるぐると考えていた時、いきなりそれは現れた。



 ラディウスさんの触れている右手から熱のようなものを感じた直後に、また雷が落ちたみたいな衝撃。

 思わず悲鳴を上げた私は握った杖に縋りつく。倒れそうになったけど、三人がしっかりと支えてくれた。

 目を閉じたままの私が見たのは、自分が立つ岩だらけの地面と、漆黒の世界で暴れ回る物凄い風と雨。だけど私が悲鳴を上げた瞬間、漆黒の世界に一気に光があふれて静かになった。



 誰かの感心したような口笛が聞こえた。



「もう良いわよ。目を開けて自分の仕事を見てごらんなさい」

 背中を叩かれて目を開いた私は、本気で気絶しそうになった。

 だって、目の前には大小様々な真っ赤な石が、それこそさっきの魔晶石みたいにそこら中を埋め尽くしていたのだから。大きいのはソフトボールくらいありそう。

「ええ〜! 何よこれ!」

 思わず叫んだ私の言葉に、離れて見ていた男性二人が揃って吹き出す音が聞こえた。

「な、何って……これだけの事を瞬時に理解して完璧にやってのけたのに、その自覚無しかよ。へえ、こりゃあまた凄えのが来たな」

 腕を組んで笑いながら感心したようにそんな事を言ってるのは、闇の竜のアラブ系イケメンのファイサルさん。

 隣では、水の竜のマーカスさんがしゃがみ込んで大笑いしている。

「ミサキ、あんた最高だな」

 立ち上がったマーカスさんは拍手をしながらそう言い、笑い過ぎて出た涙を拭いながら笑顔でサムズアップなんかしてる。

 せっかくのイケオジなのに、このアメリカンな軽いノリは何。



「ええと、これどうしたら良い?」

 見渡す限り一面のルビーの海。しかしこれだけ有ると、有り難みも何も無いわね。

「じゃあ、まずは大きなのをあなたが選んで私たちに一つずつ渡してくれる?」

 あ、さっき貰ったみたいに、それぞれに大きなルビーを渡せば良いのね。

 ラディウスさんの言葉に頷いて辺りを見回す。

「ええと、あ、ここに大きなのが沢山あるわね。これで良いかな」

 少し離れた大きな岩の横に、ソフトボールサイズのルビーの原石がゴロゴロあるのを見つけてそこに駆け寄る。

「だけどこれ、どうやって採ったら良いのかしら?」

 鉱石を採取するなら、ツルハシとかスコップとか、きっとそんな道具がいると思うんだけどね?

 そう考えながらルビーに手を触れた瞬間、さっきの魔晶石みたいにぼろっと外れました。

「うわ、デカい」

 後ろで見ていたファイサルさんの呟きが聞こえて、何だかちょっと嬉しくなった。



「じゃあこれを渡せば良いのね。だけどさっきもらった石は、ピカピカだったよね? ええと、これはどうしたら良いのかしら?」

 手にしたそれは、いわゆる原石みたいで表面はザラザラでいかにも掘り出したばかりの結晶って感じ。

『では研磨しますね』

 杖からアカネがするりと出てきて、私が持ってる石を飲み込んでしまった。

「はいどうぞ」

 すぐに吐き出してくれたそれは、綺麗な球体でピカピカに磨かれていて、また驚く。

「アカネ、凄いわね。ありがとう。じゃあ順番に取るから磨いてくれる?」

 そっと指で鼻先を撫でてやり、できるだけ大きそうな石を人数分集めた。




「はいどうぞ。私の守護石のルビーです」

 アカネが綺麗に磨いてくれたルビーを、そう言いながら五人に手渡した。

 ルビーを手にした五人は、それぞれ自分の杖を取り出して杖に渡したルビーを嵌め込んでいく。

 それぞれ個性的な杖で驚いたわ。




「ねえ、もう少しルビーをいただいても構わないかしら?」

 周りを見回したラディウスさんの言葉に、私は大きく頷く。

「ええ、もちろん構わないわよ、好きなだけどうぞ」

 五人は顔を見合わせて頷き合い、A3サイズくらいの底のある袋を取り出した。

 気がつくと、またサラマンダー達が大勢出てきて私を見つめている。

「ええと、あの子達に集めさせて渡せば良いの?」

 袋を出してるって事は、ここに入れてくれって意味なのだろう。そう思って尋ねると不親切チュートリアルちゃんが笑顔で頷くので、長老を見つけて話しかけた。

「じゃあ、ルビーを集めて渡してくれる。どれくらい渡せば良い?」

 最後は、袋を手にしている五人に尋ねる。

「それならここは、各自の守護石と交換といこうか」

 水の竜のマーカスがそう言って(呼び捨てされたから、私も呼び捨ててやる!)何やらぎっしり入った袋をもう一つ取り出してきた。他の四人も同じように中身が入った袋を取り出す。



 サラマンダー達が走り回り、またさっきのようにルビーを次々と飲み込んでいくのを、私は呆然と見ている事しかできない。

「これにて全て集まりましたので、柱の竜のお方々に紅玉をお渡しいたしますぞ」

 長老が、そう言ってマーカスの前に行く。

 差し出された袋に頭を突っ込んでしばらくすると、袋がどんどん膨らんでいく。

「ああ、もう充分だよ。それじゃあこれを渡しておくからミサキに届けておくれ」

 さっき取り出した、中身がパンパンに入った袋を長老に渡している。

 パクッとその袋を丸ごと飲み込んだ長老は、隣にいるファイサルさんのところへも行って、同じように袋に頭を突っ込んでルビーを渡して大きな袋を引き換えに受け取った。

 ラディウスさん達にも、それぞれ別のサラマンダーが駆け寄り宝石の交換をしている。

 原価で言ったら、絶対ラディウスさんの一人負けだと思うんだけど……ダイヤモンドが入ったあんな大きな袋を貰っちゃって良いのかしらねえ?

 貰った総額が幾らになるのか考えてちょっと怖くなってきたけど、皆平然としている。

「あ、そっか、魔力があればいくらでも作れるんだもの、原価はゼロなわけだから別に構わないのか」

 妙に納得して、まだいてくれたアカネをそっと撫でてやった。



 ええと、無事に守護石は渡せたようだけど、この後はどうすれば良いのかしらね?

 全然役に立たない不親切チュートリアルちゃんを振り返って、私は小さなため息を吐いたのでした。

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