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元英雄で、今はヒモ~最強の勇者がブラック人類から離脱してホワイト魔王軍で幸せになる話~【Web版】  作者: 御鷹穂積
第三章◇ヒモでいるために 

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92◇ヒモと童女と遊びの約束

本日複数更新

こちら3話め

 



 朝食後。

 俺とエレノアは謁見の間に呼ばれた。


 子供達はミュリと一緒にお勉強の時間だ。


「ゆうしゃさま、あとで遊ぼうね?」


「れいん、ウルとも遊ぶ」


 ウサ耳のキャロと狐耳のウルが同時に言う。

 俺は少し考えて、チビ達に声を掛けた。


 いや――。


「キャロ」ウサ耳の童女を「ウル」狐耳の童女を「ネア」猫耳の童女を「ハウ」犬耳の童女を「ユニン」馬耳の童女を「コミミ」ミミズクのような羽角を生やした童女を、呼ぶ。


 帰る場所を失い、俺と共に魔王城に保護された、六人の子供達。

 不思議にそうに俺を見る全員を、一人ひとり抱きしめる。


 驚いたように、擽ったそうに、嬉しそうに、それぞれ反応する子供達。


「俺に色んな遊びを教えてくれてありがとう。お前達が当たり前のように遊びに混ぜてくれたから、俺は沢山の『普通』を取り戻せたよ」


 キャロとウルが俺の服の裾を掴んだ。

 急にこんなことを言ったから、不安がらせてしまったようだ。


 安心させるように頭を撫でる。


「あとで合流するから、またいっぱい遊ぼう」


「今日はあたしも混ぜてよね!」


 ミカも笑顔で言う。

 みんな、笑顔で頷いてくれた。


 子供達はフェリスに任せ、食堂を後にする。


「……びっくりしたじゃない。まるでお別れの言葉みたいだったわよ」


 ミカに小突かれる。


「そんなつもりはないよ。でも、言っておかなきゃと思ったんだ」


「あの子たちとの日常は、ずっと続きますよ」


 エレノアが言う。


「そうだな。俺達が勝つから、ずっと続くさ」


「……はい」


 エレノアの声は、どこか沈んでいるように聞こえた。

 俺は彼女の隣に並ぶ。


「もしかして、俺が勇者として戦うことに、負い目を感じてるのか?」


 エレノアは驚いたような顔をしたあと、恥じ入るように俯いた。


「事態が事態とはいえ、結局レインさまに【勇者】としての働きを求めることになり……。こんなことがしたくて、この国にお招きしたわけではないというのに」


「でも、俺と【勇者】を切り離すことはできないだろ」


「――――ッ。それは、いえ、はい、ですが……」


「確かに俺は『普通』になりたくて、英雄を辞めたくて、それでエレノアのヒモになったけどさ」


「はい……ヒモを働かせるなんて、養う側失格です……」


 エレノアが更に落ち込んでしまう。

 え、ヒモって働いたらいけないのか……。


 じゃなくて。


「そもそも俺が【勇者】じゃなかったら、エレノアたちを助けられなかったわけで」


「――っ」


「昔は、誰かを助けても、『無事でよかった』くらいで終わったんだけど。エレノアたちに再会して、キャロたちと一緒に過ごすようになって。過去に助けたやつらが、今の自分にとって大事な人になって、それで、思ったんだけど」


「…………はい」


「みんなを助けることができた力なら、【勇者】ってのも悪くないのかもしれない」


 エレノアが、複雑な顔になる。


「そう思えたのは、エレノアのおかげだ」


「え?」


 彼女が俺を見た。


「俺が、ずっと逃げたいって思ってたものを、俺自身に認めさせるなんて、エレノアはすごいな」


「~~~~っ」


「【勇者】として誰かを助けるもいいけど、俺はやっぱりここでの生活が気に入ってるからさ。さっさと世界を救って、その……」


 俺は少し照れくささを感じながら、意を決してエレノアに言う。


「また俺を養ってくれよ」


 エレノアは目に涙を浮かべ、それを拭ってから、とびっきりの笑みを浮かべた。


「はい! もちろんです!」


「いい話ふうに纏めてるけど、これヒモとそれを養うために超働いてる女の会話なのよね」


 ミカが突っ込む。


「レインさまは一流のヒモなので問題ありません!」


「出た! ヒモの等級! 久々に聞いたわよそれ!」


 そういえば再会の日にも、そんなことを言っていたか。


 随分と遠い日のことに思える。

 それだけ、今の生活が俺にとっての『当たり前』になっているのかもしれない。


 当たり前を満喫するためにも、目の前の戦いを勝たねばなるまい。


 ◇


 謁見の間には、前回の会議に参加していた面々が揃っていた。


 この内、『七人組』は全員、『幻惑の魔女メイジ』率いる魔法部隊、フローレンスが自費で雇った傭兵団、ヴィヴィ麾下の情報官たちが参戦。


 四天王のライオと、メイジの父である魔法部隊隊長はこの国に残る。

 いくら世界の危機とはいえ、自国の防備は疎かには出来ないからだ。


「賢者様経由でいただいた、軍神様の指示書にはみなさん目を通しましたね?」


 メイジが言い、俺達は頷く。


「レインさまを酷使した腹黒メガネに従うのは癪ですが、今回は仕方ありません」


 エレノアは他の五人の英雄をよく思っていないが、そのことで作戦を無視することはない。


「では行きましょう……あ、その前に、あれやっておきます?」


 メイジの言葉に、俺は首を傾げる。

 魔王軍における、戦いの前の儀式のようなものがあるのだろうか。


 それにしては、他のみんなもポカンとしているような。


「ではわたくしから。えー、こほんっ」


 メイジは声の調子を整えるように咳払いしてから、潤んだ瞳で俺を見た。


「わたくし、この戦いが終わったら、勇者様と結婚するのですっ」


 『七人組』から殺意が迸る。


「戦場でそういうこと言うやつは大体死ぬんだけど、あんたは殺しても死ななそうよね。あとレインとの結婚とか許さないから」


 ミカがツッコミを入れた。

 後半部分に同意するように、『七人組』が首を縦にぶんぶん振る。


「メイジの悪ふざけはともかく、戦いに赴く前の決意表明というのは悪くないでしょう。私はこの戦いに勝利し、レインさまの楽しいヒモ生活を――」


「あ、そろそろ時間なので出発しましょうねぇ」


「メイジ……ッ!!」


 エレノアが叫び、メイジが楽しげに微笑む。

 俺、エレノア、メイジ、ミカといった『空間属性』を扱える者の手によって、各人員を転移させる。


 そして、俺達自身も戦場へ転移。


 戦いが、始まる。




書籍版発売まであと3日!!!


既に購入できるところもあるようですが、

公式発売日は22日なので、

そちらに向けて3章完結まで投稿していきます。


ではでは!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 色んなフラグをビンビンに感じるぜ。
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