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元英雄で、今はヒモ~最強の勇者がブラック人類から離脱してホワイト魔王軍で幸せになる話~【Web版】  作者: 御鷹穂積
第三章◇ヒモでいるために 

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82◇魔弾と男装の秘密



 中性的な容姿の英雄、【魔弾】シュツは――実は女性だったと判明。

 しかも、それを彼女の全裸を見たことで知った俺。

 シュツは自分の身体の大事な部分を覆うように手を動かし、顔を真っ赤にした。


 やがて、シュツが消え入りそうな声で言う。


「目、瞑っていてもらえるかい?」


「分かった」


 俺はすぐに言う通りにする。

 数分後。


「も、もういいよ」


 目を開けると、身軽そうな服装の上に外套を羽織った、シュツの姿があった。


 剣鉈の他、弓や矢筒といった射手らしい装備もある。

 だが、アルケミの時も思ったが、やはり胸周りが気になる。


 アルケミは服を新調したとのことだが、シュツは元の服をそのまま着ているのだろう、少し生地が引っ張られて、へそが見えてしまっている。


「い、いつもは布を巻いて小さく見せてたんだけどね、急いでたから……」


「そ、そうか。別にいいのに」


「いや……すぐ戻ってしまうんだろう?」


 シュツが寂しげに言う。


「……だな。長くはいられないと思う」


 ここは、シュツとアルケミの集合場所に指定された街、そのすぐ外に広がる森の中らしい。

 俺達は川の近くまで歩き、手頃な岩があったので腰を下ろす。

 そして、魔王軍のヒモになった経緯や、ヒモになってからの日々について話した。


「マリーから聞いてはいたけど……本当にあの時の子供達と一緒に暮らしているんだね」


 今でこそあの国に欠かせぬ重要人物である『七人組』だが、五年前は囚われの童女たちだった。

 シュツからすると、彼女たちが魔族の国で出世して、俺を養っているというのは上手く想像できないのかもしれない。


「……君が消えた時。本当は分かっていた。君の能力で攫われるなんてヘマをするわけがないから、自分の意思で去ったんだとね。ぼくらがやったことは、恨まれても仕方のないことだったし、逃げ出したくなって当然だ」


『…………』


 ミカが何か言おうとしたが、それは結局言葉にならなかった。

 黙認した自分も同罪だ、と思ったのかもしれない。


「別に。嫌だったのは確かだけど、理解はできるよ」


「そうだね、ぼくも、理解はできる。人類の状況を思えば、一人の男の子の人生を歪めることで世界が存続するなら、それは受け入れるべきなんだろう。実際、ぼくら五人はそうしたわけだし。けれど、受け入れたからって許されるわけじゃあない。きみがいなくなってから、ぼくはそのことに気づいたんだ」


「……それで、俺を探したのか?」


 彼女は力なく首を横に振る。


「……違うと思う。謝罪をするつもりはないんだ。許す許さないの選択を君に強いることになるし、そんなの傲慢だと思うから。ただ……」


「ただ?」


 シュツは俺を見て、泣きそうな顔で笑った。


「いや、やっぱよくわかんないや。無事を確かめられれば、それでよかったのかな」


「無事だよ。たまに戦ったりはするけど、毎日楽しくやってる」


 俺の言葉に、シュツは「そっか」と呟き、俯く。


「そういえばさ、シュツ」


「……なんだい?」


「その……いや、やっぱなんでもない」


「そう言われると気になるじゃないか」


『……レインが聞きたいのは、なんでおっぱい隠してたのかってことじゃないの』


 先程のことを思い出したのか、シュツがカァッと顔を赤くする。


「あ、あぁ……! あはは、それね。そっか、気になるよね。ほんと大したことじゃあないんだけどね。ぼくは英雄紋が出る前は一人旅をしていて、その時に色々と面倒くさい目に遭ったんだよね。特に耳と胸が目を引くみたいで、しょっちゅう絡まれてさ」


「なるほど、だから耳はフードで、胸はその……布で締め付けたわけか」


「そうそう。幸いぼくの声や話し方は男とも女ともとれる感じだったから、男のふりをしたりして。そうしたら厄介事がグッと減ったから、以来そのままにしてたんだ」


 人間領では耳の長い者は珍しい。

 それがシュツのように美しい顔で、更には胸部が膨らみに富んでいるとなれば、人目を引くだろう。男がわらわらと寄ってくる姿が容易に目に浮かぶ。


「その点、マリーはすごいよね。いやらしい視線で見た人には注意するし、セクハラしようとした命知らずにはちゃんとお仕置きしてさ」


 アルケミもシュツもそれぞれの理由で胸の大きさを隠したが、マリーは堂々としていた。

 その上で厄介事に毎度対応していたので、シュツはそれを尊敬しているようだ。


「対処法は人それぞれだろ。問題が起きた時に解決できるのもすごいし、問題を回避しようと対策するのもすごいよ。問題を起こすやつをなくせれば、一番いいだろうけど」


 それは難しいだろうし。


「……レイン、変わったかもね」


 シュツが意外そうに俺を見ている。


「そうか?」


「少なくとも、以前のきみなら今みたいな言葉は出てこなかったと思う。ぼくらに対して、言わなかっただけかもしれないけど」


 ふむ。

 確かに、任務をこなすことに集中し、『普通』への憧れを抱えて眠る日々では、仲間たちの心の機微には気づけなかったし、それを気遣うようなことも言えなかっただろう。


「最近、勉強中なんだ」


「……女心を?」


 シュツが複雑そうな顔をした。


「いや、『普通』の人間らしいことを学ぼうとしてて……女心?」


「あぁ、なるほどね……! あはは、なるほどなるほど! ――今のは忘れてくれる?」


 シュツの耳が、尖った先端まで赤く染まっている。


『なんてこと……「七人組」だけで手に余るっていうのに、六英雄の三人も!?』


 ミカがよくわからないことを言っている。


「聖剣様? 何か勘違いしてるんじゃないかな?」


 シュツが反論するように言う。


 とにかくこうして、俺は【賢者】アルケミに続き、【魔弾】シュツとの再会も果たしたのだった。


 【剣聖】と【軍神】は元気だろうか。

 まぁ、今後の作戦次第では顔を合わせることもあるだろう。

 俺はしばらく、シュツと他愛ない会話をしてから、魔王城に戻った。




本日複数更新。

こちら2話め

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