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元英雄で、今はヒモ~最強の勇者がブラック人類から離脱してホワイト魔王軍で幸せになる話~【Web版】  作者: 御鷹穂積
第三章◇ヒモでいるために 

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68◇雪遊び5(レジー)

本日複数更新。

こちら6話め




 五番手はレジーだった。

 ちなみに先程のスプーンの件は、中立のフェリスが預かることで一旦保留になったらしい。

 ……普通に洗うのじゃダメなんだろうか。


「わ、わたしは、その……そろそろみんな疲れてきた頃かなと思うので、休憩する場所を作ってみました……」


 みんなの視線が自分に集中していることに緊張した様子で、レジーが言う。

 彼女が手で示した方向には、横穴があった。


 いや、違う。山などを削って出来たものではなく、雪を積み上げて創ったようだ。

 雪洞、というらしい。


 中々の力作で、子供達が一度にみんな入れるくらいに大きい。

 さすがに白狐は小さく変化(へんげ)してから入っていたが。


「あれ? 寒くないね?」「あったかいかも?」「眠くなってきた……」と好評の様子。


 俺も少し気になってきたところで、レジーに腕を引かれる。


「れ、れいんさまは、こっちです……」


 みんなが入った雪洞の真裏に、もう一つ小さな雪洞が隠れていた。

 レジーと共に、中に入る。

 中が狭いので、どうしてもレジーと密着した形になる。


『先に言っておくわよレジー、あたしもいるからね』


「はぁはぁ……れいんさま……」


『聞いてないし……ッ!』


「すごい。確かに思っていたより暖かいな。雪の壁で冷たい風を防いでるのは分かるが、他にも何か理由が――レジー?」


「え、えへへ。確かに暑いくらいかもしれませんね。ならこんな沢山着ている必要はないかもしれません室内に入ったら上着を脱ぐのは当たり前と言えば当たり前ですしだからここでわたしとれいんさまが服を脱ぐことに何もおかしなことはないんですよ分かりますか?」


 レジーは気づけば防寒具を脱ぎ、メイド服姿に。


 そしていつの間にか俺の服にも手を伸ばしていた。

 雪洞内は狭く、しかもレジーが巧みに入口側を陣取っているので逃げ場もない。


 レジーの吐息が俺の鼻に掛かり、雪洞内がレジーの匂いで満たされる。

 ぽかぽかするというか、服の中でじんわりと汗を掻いているのが分かるくらいには暑くなってくる。


『この子ほんと成長しないわね……』


「あー、レジー? いくらなんでも、ここで薄着になるのは寒くないかな」


「だ、大丈夫ですよれいんさま。寒くなったら肌と肌で温め合えばいいのです」


『服を脱がせておいて何言ってんの! レインはそもそも脱ぎたくないって言ってるのよ!』


「俺はともかく、レジーが風邪を引いたりしたら大変だろ」


「え? 『俺が温めてやるよ?』」


『それわざとよね? 聞き違いじゃなくてもうわざとよね?』


 視界いっぱいに、レジーの顔が映っている。

 頬は赤らみ、瞳は水気を帯び、緊張と興奮からか微かに震えている。


 俺もなんだか緊張していたが、どこかで次の展開を読んでもいた。

 多分もうすぐこうなるだろうな、という直感があった。

 そしてそれは現実となる。


「レジー?」


「もうっ! おねえちゃんあと一分後くらいに来てくれてもいいのに……!」


「それでは手遅れになってしまうでしょう。そもそも、協定違反です」


 ヌッと伸びた手がレジーの首根っこを掴み、ずるずると雪洞の外まで引きずっていく。

 彼女の姉、俺付きのメイドであるフェリスだ。


 俺は前を外されていた防寒具を閉じ直し、それから外に出る。

 先程まで暑いくらいだったからか、冷気がどこか心地良い。


『……協定……協定……なるほど、ね』


「ミカ?」


『今回はなんか違うと思ってたけど、さっきの発言でわかったわ』


「確かに、フェリスがなんか言ってたな。協定違反、だったか」


『お互いの企画に手を貸すだけじゃなく、多分、あんたと二人きりの時間を許してるんだと思うわ』


「二人きり……あー、なるほど?」


 思い返してみる。


 ルートとは最後に二人でそりに乗った。


 エレノアが隣に来て、しばらく二人で雪を眺める時間があった。みんながやってきたのは、俺がエレノアと手を繋いだあとだ。


 ヴィヴィのかき氷を俺が食べさせてもらった。マッジたちがやってきたのは、スプーンどうこうの話題になってから。


 そしてレジーとは、雪洞で二人きりになった。フェリスの介入は、レジーが俺の服を脱がそうとしてから。


 モナナの雪巨人も、もしかすると彼女と俺が二人きりになるシナリオが用意されていたのかもしれない。


 今回の競技においては、彼女たちの間で何かしらの話し合いが行われ、各企画で俺と二人きりになるのは許容する、みたいな合意に至ったのかもしれない。


 確かに、そうでもなければ、いつものみんなはもっと早く介入してきただろうな、と思う場面が幾つもある。


 だとすると、残るマッジとフローレンスの企画でも、同じように二人きりになる時間があるのだろうか。


「でも、二人きりじゃないよな」


『え?』


相棒(おまえ)がいるのにな」


『――――ッ!』


「ミカ?」


『ふっ。ふふふっ! そうね、そうよね! 「七人組」の計画でも、あたしとあんたと引き離すことは出来ないのよ!』


 よくわからないが、ミカが上機嫌になった。

 俺は雪の上で正座させられているレジーを見かねて、フェリスにそろそろ許してやってくれと頼みに行くことにする。




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