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元英雄で、今はヒモ~最強の勇者がブラック人類から離脱してホワイト魔王軍で幸せになる話~【Web版】  作者: 御鷹穂積
第三章◇ヒモでいるために 

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63◇雪遊び(始)

本日複数更新です。

こちら1話めです。

本作以外の連載作品も更新予定ですので、

よろしければ……!

 


 温泉にでかけた俺たち。

 周辺の土地も七人組の一角、大商人フローレンスの土地だということで、雪の積もったその場所で雪遊びをすることに。


 そうして始まった雪投げは、予想外に盛り上がった。

 だが、子供の一人がフローレンスに雪玉を当ててしまったことをきっかけに、中止に。


 フローレンスが怒ったから、ではない。

 雪玉は彼女の胸に当たってぱしゃりと形を崩し、人肌で僅かに溶けると、谷間に流れ込んだ。


「ひゃうんっ!?」


 彼女は体をびくりっと震わせ、顔を赤くする。

 すぐさま雪を外に出そうとするフローレンスだったが、俺と目が合ったことで何かを思いついたように目を輝かせた。


「雪が胸に入ってしまいましたわ。このままでは風邪を引いてしまうやも。あぁ、誰かが拭いてくれると大変助かるのだけれど」


 と言いながら、俺の方をちらちらと向く。


「さすがですお嬢様。自分でやれば済むことも他人にやらせるとは、まさに金持ち的思考」


「そうでしょうそうでしょう! ――って今のは褒めてはいないわね!?」


 羊の亜人の執事であるセリーヌとは、今日も仲がいいようだ。


『レイン、言うまでもないけど、聞く必要ないからね』


「聖剣さまの言う通り。フローレンス、雪が邪魔なら胸ごと切ってあげてもいい」


 暗殺者マッジのナイフがギラリと銀光を反射する。


「ちょっとマッジ! 貴女言うことが怖すぎるのではなくて!?」


 フローレンスはぎょっとした顔で自分の胸を庇うように抱く。

 その拍子に胸がむにゅうっと形を変え、水となった雪が谷間から泉のように溢れ出る。


 つい、俺はそれに視線が吸い寄せられてしまった。


「! 予定とは違うものの、レイン様の視線はわたくしに釘付け……商才だけでなく女の魅力も飛び抜けているとは、我ながら恐ろしいものですわね」


 頬を染めつつ、フローレンスはなんだか満足げだ。

 と、そこまではよかったのだが。


 ぱしゃ、という音がすぐ側で聞こえる。


「わっ、やったー! まっじちゃんにあたったー!」


 うさ耳幼女のキャロが嬉しそうに飛び跳ねている。

 見れば確かに、マッジの胸にキャロの雪玉が命中している。


 しかし先程までのナイフ捌きを思えば、考えられないミスだ。

 いや、まさか……。


『わざとでしょ……』


「違う。あの子の投擲能力が私の反応速度を越えた結果。でも、雪が冷たい。困った。私は引き続きレイン様を護衛しなければならないので、雪はレイン様にとってもらうしかない」


 そんなことを言いながら、マッジが身を寄せてくる。

 彼女の体温で雪溶けが起こり、蜜を混ぜたミルクのような匂いが鼻孔を擽る。


 やがて他の七人組が怒ったり真似したりし始め、気づけばチビたちは雪投げをやめて違う遊びを始めていた。

 七人組の反応に慣れている子供たちは早々に雪投げを中止し、思い思いの遊びに興味を移したのだ。


 雪玉を転がして大きくしたり、しゃくしゃくと音を立てながら足跡を残したり、白狐の背に乗って雪原を駆けたり、砂の城ならぬ雪の城を作ったりだ。

 俺がそれを眺めていると、誰かが言いだした。


 『誰が一番レインを楽しませられるか』を競うのだという。


『あんたたち、こんなんばっかね』


 『七人組』の面々は邪悪な魔導師に囚われていた過去がある。

 五年前に俺がそいつを倒して以降、七人は魔族の国で保護され、各分野で活躍する人材に育った。


 辛い過去を共有した者同士、彼女たちには絆のようなものがあるように感じられる。

 喧嘩しているように見えても、仲違いには発展しない。

 良い意味で、お互い好き勝手言い合える仲。


 人間関係に疎い俺だが、彼女たちのような関係を『親友』とでも言うのかもしれない。

 何故かその親友たちが競うのは、俺のことばかりなのだが……。


 そして今日も、またいつもの競技? が始まる。

 それぞれ準備に取り掛かるということで、俺はチビたちの遊んでいる様子をぼうっと眺めているなどした。


 途中、雪の中から奇襲を仕掛けようとしたキャロを返り討ちにしたり、狐耳のウルに誘われて白狐の背に乗ったりしていると、時間。


 最初に声を掛けてきたのはルートだった。

 魔法学院の教師を務める彼女の得意魔法は、結界術。


「こちらをどうぞ~」


 パッと見た感じ、彼女が指し示したのは先程までとは変わらぬ丘だ。雪が降り積もっていて、登るとなると少し面倒だろうなと思う。


「レインさまは、雪上を滑ったことはお有りでしょうか~?」


「滑る?」


 雪原を舞台に戦った経験はあるが、その時に雪の上を転がったりしたのはルートの言う『滑る』とは違うのだろう。


「ご覧いただくのが早いですね~。ではあちらに視線をどうぞ~」


 視線を再び雪の丘へと戻す。

 すると人影が。


 銀光をぱらぱらと反射するのは、白銀の長髪を靡かせるエレノアだった。

 なるほど確かに、彼女は雪の上を滑っている。


 板だ。

 彼女は細い板を二枚、足に装着することで、雪上を滑り降りている。

 方向転換の補助のためか、両手には棒状の道具も装備していた。


 防寒具の上からでもわかる双丘を揺らしながら、彼女はこちらに近づいてきて、やがて綺麗に停止した。

 ふわっと、雪の粒が飛ぶ。


 エレノアの華麗な登場に、いつのまにか集まっていたチビたちがパチパチと拍手する。

 俺も釣られるように手を叩くと、エレノアは照れるように顔を赤くした。


「どうでしょう~? 滑雪といって、移動手段あるいは娯楽としている地域もあるそうです。楽しそうではないですか~?」




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