01
外からの光と鳥の声に目を覚ます。
半身を起こし背伸びをした。
窓にはカーテンがないので、外の光が直接あたる。
時計を見ると朝の五時。今日は六時まで寝ていても大丈夫だが、寝過ごすわけにもいかないのでベッドから起きる。
この部屋で外から直接朝陽が当たるのは私が寝ているところだけ。
部屋の奥は薄暗く、規則正しい寝息が聞こえる。
みんなが起きる前に朝食の準備をしなければ。
静かに部屋から出るとすぐに台所だ。
大きな机一つと椅子が五脚。机の向こう側に調理台がある。
私は調理台の方に行って蛇口をひねると、十秒ぐらいしてから茶色の水が出る。しばらくすると透明な水になるので、透明な水になってから顔を洗い歯を磨いた。
台所から続く扉は三つ。
一つは先ほど寝ていた部屋。一つは玄関。もう一つはトイレだ。風呂はない。
ちなみに冷蔵庫もない。冷蔵庫が持てるのは裕福な家だけだ。
流し台、作業スペース、コンロと食器棚。食器棚と言っても食器棚の中に入っているのはほとんど食材。
私はいくつか野菜を取り、スープを作る。兄が職場からもらってきてくれた魚の骨も入れる。いいだしが出ている。後は塩と胡椒。
朝はいつもスープとパン。
スープが出来上がったころに、ドアが開いて眠そうに兄が起きてきた。
「おはよう」
「あぁ、おはよ……」
のろのろとした足取りでトイレへ行く。
カップにスープを注いでいると、弟も起きてきた。
「おはよう」
「おはよう」
こちらもまだ眠そうだ。部屋の隅にある手作りの足場を持ってきて、顔を洗い歯を磨く。
トイレから出てきた兄も弟の横に並んで、弟の面倒を見ながら歯を磨いている。
スープを机の上に並べて、パンを真ん中に置いて朝食の準備完了だ。
「姉ちゃん起こしてきて」
「はーい」
弟が自分の足場を所定の位置に戻して、寝室へと向かった。
兄と私は席に着く。
寝室からは、「ぐっ」「わかった、わかった」等の声が聞こえてきたので、姉も起きたようだ。
姉を起こしたことで満足してる弟と、弟の後ろから疲れた顔の姉が起きてきた。
姉が顔を洗い歯を磨いて席に着くまでみんなで待つ。
みんなが揃ったところで、いただきます、と食べ始める。
姉ちゃん、兄ちゃん、弟と言ってるが、私たちは血のつながりがない。
兄ちゃんも私も弟も姉ちゃんに拾われた。
兄ちゃんは町の食堂で、料理人として十年以上働いている。
弟は今年七歳になった。私は弟の世話があったので家にいた。
姉ちゃんは何をしているのかわからない。朝早かったり、かとおもえっば遅かったり、泊りで何日も留守にすることもある。兄ちゃんは姉ちゃんの仕事を知っているようだが、必要であれば姉ちゃんが言ってくれるだろう。
あと姉ちゃんの旦那さんがいるのだが、私は姉ちゃんの旦那さんに会ったことがなく、話は聞くのだけれど、私からそのことに触れることはない。
けれど、いつ帰ってきてもいいように、この家は五人分の食器、椅子がある。
姉ちゃんの旦那さんの話もそのうちしてくれるのかなと思っている。
食事が終わり、後片付けをしようとしたところで、兄が口を開いた。
「姉ちゃん、今日からリョウを連れて行こうと思う」
「……リョウはもう七歳か」
「ああ。親方に話したら、一度連れて来いと」
姉ちゃんは腕を組み悩んでいる。
「過保護かもしれないが、リョウは少し体が弱い。俺と一緒の職場であれば、俺がリョウの面倒を見ながらできる。親方もおかみさんもいい人だし、安心できる」
「……そうか、そうだよな。私と一緒に働くことはできないしな」
難しい顔をしていたが、姉ちゃんはぱんっと自分の足を叩き、
「わかった!頑張れよ、リョウ!」
そういって、弟を見た。
「がんばる!」
弟は両手に握り拳を作って頷いた。
「ただ、親方がダメだと判断したら一緒に働くことはできないぞ」
「うん」
「リョウは一般的な文字は読み書きできるから、もしならその辺りも言ってね、リャウ兄ちゃん」
「ああ。文字の読み書きができるのは仕事をするうえで有利だからな」
「ということは、私も何か仕事を探さないとだね」
「リュウはもしならこのまま家の仕事をしてくれれば、一人ぐらい養うことも……」
「仕事探す」
きっぱりというと、姉ちゃんは複雑な顔をした。
今はそれでいいかもしれない。けれど、姉ちゃんの旦那さんが帰ってきたり、兄ちゃんや弟が結婚すればこの家を出て行かなければならなくなるだろうし、どうなるかわからない。
自分も健康体なのに誰かについて行って養ってもらうのは気まずいというかなんというか……。
まぁ、私も結婚するかもしれないしね!
話はそこで終わり、私は朝食の後片付けをして、兄と弟は仕事へ向かい、姉は午後から出勤だということで布団に戻った。
私は洗濯ものを持ち、外に出る。
共同の洗い場で家族の服を洗いながら考える。
この国は、七歳までは労働が禁止だ。禁止だけれど、浮浪児などは“お手伝い”と銘打って働いていたりする。それは国の方でも黙認していること。
一時期、十五歳以下の労働を禁止にし、働かせたところも処罰していたが犯罪が増えた。。
教会には何らかの理由で親を亡くした子や、捨て子を引き取る施設はあるが、受け入れ人数は決まっていて、すべての親のない子を教会などの施設に入れることもできない。
教会にはいれなかった子は死ぬか、窃盗などの犯罪を犯すかとなり、犯罪が増えたのだ。
その後いろいろ試してみた結果、七歳以下の労働禁止、お手伝い可。に落ち着いた。
それでも犯罪は無くならないが、ある程度は柔和できたのでここ五十年ぐらいはこの制度で落ち着いている。
奴隷や人身売買はこの国では禁止されている。
教育に関していえば、簡単な文字の読み書き、算数を教えてくれる学校は七歳から十歳の学校があり、庶民用とお金持ち用の二種類ある。
ひとつは、ここの領主さまがやってくれている、教会で週に一回必要最低限の文字と算数を教えてくれる。授業料は一回ずつお金を払い、庶民の平均的なお昼一食分ぐらいだ。
もう一つは貴族や裕福な家の人たちが通う、しっかりとした学校。この国以外の文字や、数学、高度な魔法学などの初歩的なことをまんべんなく教えてくれる。入学金と、さらに月々にお金がかかる。
その後、十一歳から十六歳の人が通う学校がある。
こちらは高等学校と呼ばれていて、貴族の人は義務で行かなければならない学校だ。七歳からの学校は行かなくても家庭教師などに教えてもらえて知識があればいかなくても大丈夫らしい。
寮生活で、入学金や月々にかかるお金もすごいらしい。マナーから学問の分野の専門的なことも教えてくれる。
この学校を卒業しない限り、貴族としては認めてもらえない。
稀に私みたいな貧乏人でも通えることができるが、それは何かに特化した特別な人だけだ。魔力がすごく多いとか、すごいものを発明したとか。
この国は学業に力を入れているので、この高等学校はかなり他国でも有名らしい。
他国からの留学生も受け入れており、他国からもかなりの高評価だとか。
貴族が通う学校は、国が管理している。
この国の成人は男女ともに十六歳なのだが、この国の目玉となっている学校の卒業が十六歳だからだと思う。
領主さまのおかげで、庶民で簡単な文字が読める人は半数いる。逆に言うと半数は文字が読めないので、お店の看板は絵が彫ってある。
文字をかける人は文字を読める人のさらに半数。その中でも契約書などの難しい言葉を読める人はさらに一割だ。
姉はその一割にはいっており、姉から文字を兄も私も弟も教わった。
まぁ、読めるけど意味まで分かるかと聞かれるとそれはまた別の問題。
他国では庶民は簡単な文字すら読めない人が九割だというので、半数の人が文字が読めるのは凄いことだと言っていた。
すべて、姉から聞いた話。
洗い物をしながら、空に浮かぶ島を見る。
空に浮かぶ島、空島には王族や一部の貴族、裕福な庶民が住んでいる。
そして、先ほど言っていた高等学校がある。
そこへ行くにはロープウエイのようなものに乗るしか行く道がない。
飛行船もあるのだが、空島の周りには結界がはっており、飛行船で向かうと結界に阻まれ行くことができないのだ。
空島に行くのは一部のものしか行けないかといえば、そんなこともない。
王城や学校にはいることはできないが、空島の一部の区域と娯楽施設……遊園地みたいなところとかあるらしい……には庶民でも入ることができる。身分が証明されているもので、ロープウエイに乗るお金とその他チェックを通ればだれでもいくことができる。
行くことはできるが住むことは許可がないとできないので、観光や仕事で行くときには魔石のついた腕輪をはめる。
指定の時間内に空島から出ないと、魔石が輝き強制退場させられる。
強制退場二回で鞭打ちの刑が執行されて、空島に行くことも禁止になる。
最初は腕輪が爆発していたらしいのだが、結局腕一本犠牲にして空島に残り、盗みなどの犯罪者が多く出たので、魔石にテレポートの魔法を施し、強制退場させることにしたらしい。
いつか、みんなで空島に観光に行きたいなぁと思ってる。




