〜才能として認められる世界〜
「お前何言ってんだ?」
「何回も同じこと言わせないでよ」
「お前と話してると本当に疲れるよ」
人生で何度言われただろう? 生まれから20数年、数えられない程言われてきた言葉だ。
人と話をすればいつもそう。そのせいで学生時代はほとんど友達はおらず、就職でもごとごとく面接で落とされ、今や無職の引きこもりだ。
まさに最底辺の人間と言えるだろう。
「な〜にがいけんかったんでしょうかねぇ?」
流行りのネットスラングを狭く暗い部屋でぼやくが、その答えは自分が一番良く知っている。
俺はアスペなのだ。
他人と会話している途中で違う事を考えてしまい、気が付けば異国の言葉でも聞いているのかと言うほど
相手の話に理解が追いつかない。
一種の病気として診断を受けることはできたのだが、それでも世間の目は厳しく「甘え」だの「言い訳」だの言われ結局扱いは変わらぬままであり、心折れこうして人との関わりを断絶し生きている訳である。
だけどそんな人生も今日で終わりだ! そう、今日俺は自殺する。どうせ生きてて良かった事なんて無いし、未練なんて全く無い。これから死ぬというのに今まで生きてきた中で一番清々しい気持ちというのだから皮肉なものである。
「次こそはまともな人生が送れますように」
ぽつりと呟いた後、窓から飛び降りた。頭から着地し、グシャリと嫌な音が聞こえた所からはもう覚えていない。
ーーーーーーー「・・・か?」
何か聞こえる....
??「・・・か!?」
え・・・?
??「大丈夫か!!??」
誰かの呼びかけにハッと気がつき飛び起きると、そこは病院でもなく暗く狭い自分の部屋でも無かった。
砂埃の乾いた匂い、行き交う馬車、どこまでも続く活気のある屋台、大きな城。まるでヨーロッパの絵画にそのまま飛び込んだかのような風景が広がっていた。