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第86話 トプの沼

 俺の行く手を阻止するように多い塞がる森の木々。

 多分エレンさんの仕業だろう、と無理やり伐採するわけにもいかないので、一度立ち止まると、やたら派手に塞がってきた。


【何だ? フェアリーの攻撃か?】

【いえ、ミツヒ様。これはドライアドの仕業です】

【木の人間見たいな奴か。それがこの森に住んでいるのか】

【フェアリーと共存しているのでしょう、沼が元に戻ってフェアリーが出てきて、森にも活気が出て来たのでは? それにフェアリーがドライアドに頼んだのかもしれません】


「待ってくださーい、ミツヒさーん」


【あ、本当だ。二人が飛んで追いかけて来た】


 可愛らしく飛んではいたけれど、追いつこうと必死だったのか、疲労感一杯だった。


「ハァハァ、待ってくださいミツヒさん」

「だから気にしないでください、エレンさんとエリーナさん」


 同じ眼線の小枝にとまり、俺を見る二人。


「ハァハァ、ではミツヒさん。では私たちの加護はいかがですか?」

「え? 妖精にも加護があるんですか?」

「はい、あります。いつかミツヒさんの役に立つかもしれませんので」


 折角授けてくれるのを、無下に断る理由も無いので、ありがたく頂いておくことにした。


「いいんですか? それじゃ、遠慮なくお願いします」


 すると、エレンさんとエリーナさんがパタパタと俺の直前まで飛んできた。

 まずエレンさんが、小さい両手を俺の両頬に添えて下唇にキスをすると淡く光る。

 次にエリーナさんも、小さい唇で俺の上唇とキスをすると、またもや淡く光った。

 まあ、キスと言うより、引っ付いた、と言ったほうが正解かもしれないな。

 木の枝に戻り俺を見る可愛らしいエレンさんとエリーナさん。



「ミツヒさん。無事に加護を授けましたよ」

「はい。では確認してみますね」


 ステータスウインドウを開いて見る。


ステータス

【 名 前 】 ミツヒ

【 年 齢 】 一七歳

【 職 業 】 村人 農民

【 種 族 】  人族

【 称 号 】 ≪心眼に愛される者≫

【 体 力 】 四〇〇〇〇

【 魔 力 】 二〇

【 スキル 】 健脚 瞬脚 剛腕 金剛 夜目 気配感知 気配遮断 身体加速

        毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 幻影耐性 呪耐性 従魔召還

【 従 魔 】 フロストタイガー フレイムウルフ

【固有スキル】  ≪ 心眼 ≫

【 加 護 】 水の精霊の加護 土の精霊の加護 風の精霊の加護

        火の精霊の加護 雷の精霊の加護 氷の精霊の加護

        光の精霊に愛される加護 闇の精霊に愛される加護

        妖精からの誰よりも愛される加護


「ありがとうございます、エレンさん、エリーナさん。加護が授かりました。でもなんだか競い合っているような加護が授かっていますが……」

「いいのですよ、ウフフ。ミツヒさんが良ければ、たまに遊びに来てくださいね」

「そうですね。ではまた」


 森の木々も元に戻り、晴れて自由になった嬉しそうなエレンさんとエリーナさんと別れた。

 歩き出したら、木々が道を作ってくれるように歩くゆとりが出来て、ファイガ、俺、ユキナと並んで歩く。


【また凄い加護が授かって嬉しいけど、加護ってやっぱりキスするんだね。何だか麻痺したのか、もう慣れて来たよ。ハハハ】

【グググ、キスですか、フンッ。やはり叩き潰しましょう、今すぐに】

【おかしいよ、ハネカ、やめようね】


 すると隣を歩くユキナが、興味深そうに頭を俺に擦り付けて来た。


【ミツヒ様、私はメスですがキスは出来るのでしょうか】

【ん? ユキナはいつもキス以上のことをしているじゃないか。いつも俺の顔をペロペロ舐めてくるからさ】

【そ、そうなのですか? 舐めるのは従魔としてですね、ミツヒ様】

【あー、わかったわかった。ユキナこっち向いて。はい、チュッ】


 ユキナの顔を両手で押さえて、俺に向かせキスしてあげたよ。


【え、え?……?……! エヘヘヘ、これがキスですね、ミツヒ様。ウフフフ】


 ユキナは嬉しそうに森中を駆け回り飛び回り、意味も無く爪斬で、片っ端から草木を切り飛ばし、なぎ倒しているし。


【ユキナ! 飛び回るんじゃないの。ほら、後からトライアドさんが倒した草木を直しているじゃないか】


 急に体を止めて振り返る。


【……! え、し、失礼しました、ミツヒ様。お、お見苦しい所をお見せしてしまって】


 ファイガは、何やってるんだか、と気にしないで歩いている。


【ユキナめ、滅ぼしてやりましょう。今すぐ叩き潰してやりましょう。グヌヌ】


 ハネカが怒っている事に気づき、ボフンッ、と小さくなったユキナが、俺の肩越しに巻きつくように飛び乗る。


【みつひさまー、はねかさまがー、こわいー】

【そ、それは卑怯ですよ! 卑怯! ユ、ユキナ!】

【てへっ】


 後は、ユキナが、フフン、とやってみたり、グヌヌ、とハネカが唸って見たりと、とても仲良くしていたっけ。

 歩いて帰る道中には魔物は全く出ずに、ファイガたちとじゃれ合いながらの帰路となる。

 それは、武器の出来上がる夕方までには時間があるので魔物でも出たら倒しながら帰ろうと思ったが、従魔が強すぎるので俺たちの周囲から魔物が遠ざかるように逃げている。とハネカが教えてくれた。

 散策しながら、森林浴をしながら、空を見上げながら楽しく歩いた。

 そしてターナの町に入りガンドさんの店に行く。

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