第65話 テスタロの町
二二階層
背丈ほどの岩が、至る所に点在する広いエリアに出ると、奥の岩山から体長一m程のサンダーラビット、ウインドラビット、ファイアラビットが、岩陰から続々と群れで現れた。
【あの兎どもは雷、炎、風魔法です、かなり速い動きをします】
【了解したよ】
俺が行く前に、高く飛んだり、低く飛んだり、急に横に飛んだり、と素早い動きで広がり襲ってきた。
まだ距離もあったけれど、一斉に雷、風、炎の魔法攻撃を仕掛けて来たからたまった物ではない。
軌道を見て避けようにも避ける場所など無いほどの魔法攻撃。
これこそ怒涛の攻撃と言うべきなのかも知れない。
しかし、初っ端から加減しないなんて、こいつらの魔力量はどれだけあるのだろうか。
鍛錬なので、避けられる攻撃は避ける。でも避けた所にウインドカッターが飛んで来ているので、咄嗟に剣で受けると同時に背後には、ファイアボールが直撃していた。
加護があるので無傷でいられたけれど、闇雲に戦っても鍛錬にならないし、これは少し減らさないといけないな。
今回は、魔法攻撃を無視して切り飛ばし始めたけど、想像より捗らなかった。
それはハネカの言う通り、とても素早く上へ横へと好き勝手に飛び回るので、一体一体の軌道を見て切り倒すから面倒だった。
その上ファイアボールやライトニングを受けながらなので、一瞬見づらくなる事もあった。
「ハァハァ。こりゃダメだ。これだけいると面倒だよ、ハァハァ。ファイガ、ユキナ、少し間引いてくれ。フゥ」
【畏まりました、ミツヒ様】
【畏まりました、主様】
ファイガとユキナは楽しそうに、軽やかに駆け回りながら、爪斬で切り飛ばしている。
それだけでも凄いのに、ウインドカッターなどの魔法攻撃にも当たらずに、優雅に体をくねらせ、捻じりながら切り飛ばしているのだ。
フフフ、ハハハ、と聞こえてきそうなほど楽しそうに。
うーん、これは見習わないとな。
あっ、と言う間に残り十数体にまで間引いてくれた。
よし、もう一回やってみよう。
ファイアラビットのファイアボールを避けて踏み込み、ウインドラビットのウインドカッターを反転し避けながらファイアラビットを切り飛ばし、サンダーラビットのライトニングを走り避けて横に飛び、ウインドラビットを切り飛ばし、サンダーラビットに走り寄れば、ファイアボールを避けながらサンダーラビットを切り飛ばす。
と言った具合に、多方向から飛んで来る攻撃を避けながら攻撃に転ずる、いい鍛錬が出来た。
そして殲滅した。
数で押してくると、ルルナさんが言っていたけど、特にこの階層こそ、数で押してくる魔物、と言っていいのだろう。
加護があったからいいようなものの、他の冒険者たちは、この階層はどう攻略するのかな。
そうか、だから一〇人組のパーティじゃないとダメなのだろう。
【フゥ。かなり手こずったな。ファイガ、ユキナ、ありがとう】
頭を撫でてあげたら激しく尻尾を振って喜んでいた。
しかし、最強なだけあってファイガとユキナは本当に強いね。
そして、至る灰の場所に落ちている魔石を、全部では無く要所要所で拾いながら進んだ。
二三階層
他の階層より薄暗いが、夜眼があるので問題はない。
だがしかし、また嫌な羽音が、嫌な足音が、嫌な予感が……。
カサカサカサッ、と音を立て体長五〇㎝ほどの、体に艶のあるブラックフラッターとブラウンフラッターが先の辺り一面に、所せましと蠢いていた。
【あー、いるいる。あー、ウジャウジャいる。黒いのと茶色いのが。うわー、見たくない】
【あの虫は、魔法も攻撃力もありませんが、数十万と言う数で攻めてきて対象を食べつくします】
【あ、これはハネカさんにお願いします】
【畏まりました、ミツヒ様、フルフレイム!ミニマム!】
赤い魔方陣が展開され、辺り一面に紅蓮の炎が舞いあがった。
燃えた嫌なにおいと共に黒焦げになって一掃した。
茶色く濁った魔石が沢山落ちていたけれど……なんとなく拾わなかった。
二四階層
急に幅が狭くなり、岩壁に直径五〇㎝ほどの穴が、横並びに無数にある。
所々の穴の中に体長1m程のキラーマウスとポイズンビーバーが入っていて、穴の前を通ると襲ってくる、とハネカに教えてもらい点滅している穴に注意して、飛び出してくると同時に切り伏せる。
毒を吐くポイズンビーバーは、飛び出した所を一度横に避けてから上段から切り降ろして倒す。
所々で魔石を拾いながら進み、各局十数体の魔物を倒した。
その間、ファイガとユキナは黙って後ろをついて来る。
二五階層
ダンジョンにしては明るく温かく、丘の上のように辺り一面花畑だ。
赤い花のポイズンフラワーと青い花のファントムフラワーが咲き乱れている。普通に見たらとても綺麗な花畑だね。
【この花は、花粉麟分を散布して、毒と幻惑で獲物を惑わせ動けなくしてから、ゆっくりと攻撃対象の養分を吸い取ります】
【エグイけど俺たちは耐性があるから何事もなく進んで行くだけだね】
ファイガとユキナも平然としているけれど、何処となくつまらなそうにして、興味も無いようだった。
ついでに何本か切ってみたけど、魔石はでなかった。
二六階層
黒いマントのようなローブを着た、骸骨のエルダーリッチが現れ、いきなりファイアーボールを撃って来たが避けながら近づくとすぐに、ファイヤランスも撃って来たが、軌道を見て避けながら、さらに近づいて首を切断して倒す。
が、すぐに繋がって起き上がる。
今度は胴体を水平切りにして倒したがまた繋がって起き上がる。
しばらく魔法攻撃を避けながら切断しては倒しを繰り返し、鍛錬したけど単調な攻撃だったのでこれ以上は望めないな、と頭部を切り飛ばして倒した。
だがしかし、また繋がって再生し起き上がって来た。
【なあ、ハネカ。あいつはどうしたらいいのかな】
【あの骸は、単純な物理攻撃で倒す事は不可能に近いです】
【そうか。ならハネカに任せるよ】
【畏まりました。ヘルフレイム!】
エルダーリッチは断末魔と共に燃え尽きた。
その間、ファイガとユキナは隅で横になり伏せて待っている。
【ミツヒ様。この階層から先の魔物は不死です】
【了解、ハネカ。最後は誰かに頼むとしよう】
二七階層
体長八m程の蛇女が現れた。
青い髪、睨みの聞いた赤い眼で、常に怒っているような恐ろしい顔。体には大きい蛇が四匹と、その手には剣を持つ魔物、ステンノー。
ステンノーに近づき剣を構えると、体の蛇が攻撃してくるが避けて切る、が避けられ、他の三匹の蛇も攻撃してくる。
剣で受けようとした俺の剣を滑るように上手く避ける。
その最中にステンノーが、剣を振り上げ俺を攻撃してきたので、剣で真面に受けたら吹き飛ばされた。
【フゥ。油断したとはいえ、あの体で俺を飛ばすとは凄い力だな、それに蛇も厄介だ】
【あの蛇は毒、麻痺、石化です。噛まれたら離しません】
ステンノーに再度近寄り、まず蛇を攻撃するが、俺の攻撃が分かるのか、柔軟な動きで避けてそのまま攻撃してくる。
その合間にステンノーが剣で攻撃してくるが、避けながら振り切った剣を見極め、俺も剣を横に振り切り首を撥ね、倒した。
けれどすぐに繋がって起き上がるステンノー。
しばらく攻防を続けて鍛錬を繰り返し、頃合いを見て終わりかな、と感じ、ハネカのフルフレイムで、ステンノーを焼却してもらう。
灰の中に落ちていた魔石を拾った。
振り返り、待っているユキナとファイガを見たら、待ちくたびれたのか、気持ち様さそうに寝ていた事は、見なかった事にしてあげよう。




