第29話 エントアの町
五階層
体長三m程の、銀色の皮膚が非常に堅い、ミスリルリザードマン二体が闊歩するように現れた。
俺を見つけた途端に、素早い動きで走り寄って来たか、と思ったら間合いに入ったのか急に振り返るように硬い尻尾で攻撃を仕掛けて来た。
けど先に軌道を見ていた俺は、飛び上がりその状態で、後ろ向きの首めがけて切り飛ばそうとした。
だがしかし、それは失敗に終わる。
想像より硬い皮膚だったので、鱗しかきれなかった。
次は鋭い爪の攻撃が来たのを見て、避けて踏み込み強め振り切れば、今度は綺麗に切断して倒した。
もう一体も威圧する咆哮を上げていたけど、動く前に強めで切りかかれば、血しぶきが舞って断末魔の咆哮と共に倒れて灰になる。
灰の中が光っていたので、見たら白色の魔石が落ちていた。
コイツは硬かったな。
スキルの金剛と剛腕が無ければしんどかったかもね。
【魔石はどうしますか? ミツヒ様】
【ハネカの言う通り、いらないからそのままにしておこう。この先も長いし荷物になるしね】
進んで行くと、体長二m程の灰色のファントムリザードマン七体が現れた。
【ミツヒ様。あの蜥蜴二体以外は幻です】
【お、本当だ。二体だけに赤い点滅があるな。あれが本体か】
点滅のある本体の一体に切りかかれば、まさかばれるとは思っていなかったのか、構えながらも動かなかったので簡単に切り裂き倒すと、倒した本体を含んだ四体のファントムリザードマンが消えた。
鍛錬なので、あえて幻を切断してみるが空を切るように手ごたえが無く、やっぱり倒せない。
更に厄介なのは、本体が入れ替わる事だ。
これじゃ、本体知らないと倒すのは大変だよ、このファントムリザードマン。
【簡単です】
残りの本体の攻撃を避ければ、大した事では無く、本体を切り伏せ倒したら幻影も消えて行く。
魔石が出たけどそのまま放置する。
その後、何度かミスリルリザートマンとファントムリザードマンが出てきて倒したが、さすがに飽きたので躊躇なく倒しながら進んだ。
六階層
体長二m程の黒い体毛で、大きな口には鋭い牙を持つキングウルフと、炎を吐き出して攻撃してくる、赤黒い体毛をしたファイアドッグが二体ずつ現れた。
四体が咆哮を上げながら一斉に攻撃してきたが、既に攻撃軌跡が見えるので、先頭を突進してきたキングウルフはいなすように避け、二体から吐き出された炎と炎の間を踏み込む。
近づこうとしたら、後ろから反転して来たキングウルフが横に回って襲ってきたので、大きく開いた口眼がけて振り切れば、動かない塊のように地面に落ちる。
すぐに炎を吐き出してくるファイアドッグに向かって走り飛び、後方に向かって反転して着地すると同時に二体まとめて切り飛ばす。
最後の一体は、あえて攻撃を剣で受けたけど、鍛錬にもなりそうになかったので、一撃で倒した。
しかし普通に考えたら、とても素早いし、近接戦と中距離戦があるので倒すのにかなり大変だと思う。
四体がかりはキツイね。
俺は軌道が見えているから先読み出来るけど、他の冒険者や攻略者は大変だろうな。
【ミツヒ様には、何の役にも立たない。かと】
その後、何度かファイアドッグ、キングウルフが襲ってきたが難なく倒した事は言うまでも無い。
順調に進んで行くと、今度は体長二m程のファントムドッグが三体現れ、口を開き威圧するような咆哮を上げながら牙をむいて俺を睨んでいる。
【ミツヒ様。あの犬も二体は幻です】
【あ、本当だね。左の一体が赤く点滅しているから、そいつが本体だな。言われなかったらわからないよ】
【幻も実体と同じ攻撃がありますのでご注意を】
【了解したよ】
三体からなるファントムドックの牙攻撃や爪攻撃を受けながら鍛錬してみる。
一度幻影を切り飛ばしたら、しっかり手ごたえはあったけど消えてもすぐに現れた。
この魔物も厄介だな。
息の合った三体が実体として波状攻撃してくるから本体が見つけにくくなるよ。
【ミツヒ様なら全く問題ありません】
【まあ、確かに見えているから大丈夫だけどね。さて、そろそろ倒すか】
次々襲って来るファントムドッグの様々な攻撃を避けて、本体を切り倒すと同時に二体の幻影も消えて行く。
灰の後には魔石が落ちていたけど放置した。
七階層
奥から体長四〇㎝程の、灰色の羽を持つ蝶のようなグレーバタフライが五匹飛んで来た。
【あの蝶の粉は麻痺毒です。ミツヒ様には耐性があるので問題ありませんが、汚い粉が掛かります】
好きに切ってください、とばかりの遅い羽ばたきで向かって来たところを、簡単に真っ二つにして倒した。
だが、体に似合わないものすごい大量の麟分が広範囲に頭上から降り掛かり、思わず咳き込む。
その後にも体長五〇㎝程の、紫色の羽を持った如何にも毒々しいポイズンモスが五匹飛んで来た。
【こいつは毒だね。大丈夫だけど、今度は粉を避けながらやろうかな】
やはりゆっくり羽ばたいて来るポイズンモスを、駆け抜けざまに一瞬で切り倒したので、麟分が落ちる前に通り過ぎた。
八階層
体長二m程の、スケルトン八体が剣を持って現れたけど、数は多くても森で鍛錬したので興味も無い。
なので向かって来るスケルトンの頭を、一瞬のすれ違いざまに次々と頭を切断して倒したが魔石は出なかった。
次は奥から剣と盾を持ったスケルトンナイトが一〇体襲ってきたが、健脚に瞬脚を上乗せして地面を蹴り、スケルトンの時よりも素早くすれ違いざまに八体の頭を次々切り飛ばした。
残り二体とは、剣で受けて鍛錬しようとしたけど、やはり単調でつまらないので少し相手をして倒した。
一〇体も倒せば魔石の一つも落ちているかな、と見たけど魔石は落ちていなかった。
拾わないにしても、これだけ倒して一個も無いなんて……少し残念な気分になった。
他の人たちなら、もっと残念だったに違いないな。
九階層
体長二m半程ある、茶褐色の肌をしたミノタウロスが四体現れた。
棍棒を持ったミノタウロスの攻撃を、進みながら次々に避けて通り過ぎ、後方の二体の首を切断して倒せば、首から血しぶきをあげながら倒れ灰になる。
残り二体のうち、一体から繰り出された力強く振りかぶった棍棒の攻撃を、剣で真正面に受けて踏ん張ると体が浮いた。
もう一体からも、横から振りかぶった力技の攻撃も、真面に受けたら体が浮く。
おおっ、さすが馬鹿力だな。
金剛で受けてなかったら普通じゃ吹っ飛ぶなこれ。
【ミツヒ様が軽量なのか。と】
【わ、悪かったな。せ、背が伸びないから軽いんだよ】
【応援します】
鍛錬中なのに、悲しい気分になったことは言うまでもない。
気分を切り替えそして、いい鍛錬とばかりに、何度も正面から棍棒や体当たりを受けて、力の流し方や逃がし方を再確認し、上手くなっていくのを実感する。
一人楽しんだけど、気が付けばミノタウロスが息を切らせて肩で息をしているので、頃合いと感じ、棍棒の攻撃を受け流しながら切り倒した。
灰の後には、赤くほのかに光る角が落ちていた。
【お、これは初めてだから拾っていこう】
【そのようなゴミは、何の役にも立たない。かと】
【いいんだよ、一つだけね】
さらに進むと、ミノタウロスより大きい体長三m程の、黒褐色の肌を下ミノタウロスウォーリアが、棍棒ではなく重量級のメイスを持って二体現れた。
おおっ。あの魔物はいい鍛錬が出来そうだな。
強さも不明だから、取り敢えず一体だけ行っとくか。
一体のミノタウロスウォーリアが、構えながら突進して来て、斜め上から振りかぶったメイスの攻撃を直前で避ければ、メイスが空を切る。
刹那、切りかかれば、武器は慣性に従い、なす術も無く倒れる。
もう一体から繰り出される横一線の振り払う攻撃を、正面から剣で受けると、さっきよりも体が浮いた。
次に上段から繰り出されるメイスの攻撃も剣で受けたら、さすが重量級。
一瞬体の重みが倍以上になる感覚だった。
少し楽しくなってきたので、しばらく魔物に合わせた攻防をしていたけど、やはり重い武器なのか力尽きそうだった。
なので、メイスの攻撃を受け流し切り倒したら、また角が落ちていた。
あ、これは一つ拾ったしこのままにしておこう。
でもこの階層はちょっと良い鍛錬になったな、うん。
【それは良いとしても、あまりお体でお受けになるのは如何なものかと思いますが】
【でも、実際に受けて見ないと場合によっては、予想外、想定外になって攻防が後手になることもあるからさ】
【心配ですので程々にお願いします、ミツヒ様】
【了解、ハネカ。気を付けるよ】




