第21話 スマルクの町
そして俺の両隣に椅子をずらし、見やすくするのに座る位置を変えて、左右から水晶を覗き込むように見る。
すると、真剣な表情になるカルティさん。
「なんだと? 体力は四〇〇なら階級で言えばC級並みだと? それに魔力量が未だに二〇では魔法が適正無しに等しい。しかし何だったのだ昨日の強さは……。ムゥ。もしかしたらスキルの力が強いのかもしれないな。このステータスは紛れもなく事実だしな。健脚は速く走ることが出来るスキル、瞬脚は健脚に上乗せしてさらに速く走ることの出来るスキル、剛腕は戦闘時に剣や装備の重さを半分にして、俊敏さが増すスキルだ」
ん? 心眼は? 多分見えていないのか? でも、真実の事が見えるって言っていたけど……どうなんだろう……この水晶。
――もう少し確かめよう。
「カルティさん、この固有スキルとはなんですか?」
「ああ、これは簡単に言って見れば、加護と同様と考えてもいい。神などの階位から付与されるものだよ。早々に、滅多に、簡単には付与はされないよ、ミツヒ」
「成る程、そうですか」
やはりカルティさんには見えていない。
逆隣で見ているティファさんも、カルティさんの話に頷いてはいたけど同じように見えていないようだ。
心眼だけが閉じられているから、何か特別なものなのかな。
これは黙っていた方がいいな。
「わかりました、ありがとうございました」
水晶から手を離し、さっきのコツを確かめるように、水晶を使わずに空間を見れば、しっかりとウインドウが出たのを確認する。
一度閉じて、再度確認したが問題なく現れた。
これでいつでも見られるので、何だか嬉しくなった。
一度俺の肩から手を離したカルティさんが、横眼で俺を見る。
「ミ、ミツヒ。わ、私の、ス、ステータスを、み、見てみるか?」
「え? カルティさんのステータスは、他の人が見たらダメでしょう。それに俺みたいな村人が女性のステータスを覗くなんて……」
「わ、私は構わない。ぜ、ぜし見てほしいにょ、の」
あ、カルティさん、噛んだ。一体どうしたのだろうか。
「いいんですか?」
「見てくれ……」
そしてカルティさんは、静かに掌を水晶に触れ、俺が肩に掌を乗せる。
「では失礼して、拝見させていただきます」
ティファさんは、昔からの付き合いが長いからなのか、もう知っている様子で興味も無いのか触れていない。
ステータス
名 前 カルティ アルディラ
年 齢 一八歳
職 業 冒険者 (王国第三王女)
種 族 人族
称 号 剣士 (騎士)
体 力 八〇〇
魔 力 三六〇
魔 法 攻撃魔法 ファイアボール
回復魔法 ヒール
スキル 健脚 麻痺耐性
固有スキル ――
加 護 天使の加護
え? 何? カルティさんは王女だ? 冒険者で?
――あー、隠してたんだ。
あー、だから昨日のエフィルさんに教えてもらったとき、何処となく濁した口調だったんだ。
でもこれも囲われているから秘密なのかな、そうか、王国の秘密は隠せるのか。俺には見えているけど、これは黙っておかないと大変になるやつだな。
これぐらいは俺にも分かる。
まあ、口外するつもりは更々無いんだけどさ。
「凄いですね、カルティさん。剣士で魔法も使えるなんて。それに加護もあるじゃないですか」
「ま、まあな。でもミツヒの実の強さに比べたら、大したことではないさ」
「でも、手合せに攻撃魔法も使われたら俺、勝てないですよ」
「そうでもないさ、魔法は心の中で詠唱をするから、剣技をしている時や模擬試験の手合せなどで魔法を詠唱すると、どうしても少し動作が遅れるんだ。闘技場などのような広い範囲を使っての試合なら別だけどな」
カルティさんが水晶から掌を離す、と今度はティファさんが水晶に手を伸ばす。
「今度は私ですね、では見てください、ミツヒ」
「ティファさんのも見ていいんですか?」
ティファさんが、静かに水晶に掌を乗せて俺を見る。
「どうぞ、早く見てください。さあ早く」
何故だか急かされてしまったので、ティファさんの肩に触れる。
「では失礼します」
水晶を覗き、ティファさんのステータスを拝見する。
ステータス
名 前 ティファ ベルティエ
年 齢 一八歳
職 業 冒険者 (王女付き人側近)
種 族 人族
称 号 剣士 (護衛騎士)
体 力 七〇〇
魔 力 二九〇
魔 法 攻撃魔法 ウインドカッター
回復魔法 ヒール キュアー
生活魔法 アクア ブロアー
スキル 健脚 料理腕
固有スキル ――
加 護 天使の加護
あー、やっぱり。
王女には護衛の側近が付いているよな。で親友なんだよな。
もしかしたら幼馴染なのかもしれないな。
いつも面と向かって、普通に話をするし対等って感じがするし、これも黙っておかないといけないやつだ。
――以後気を付けよう。
「ティファさんも、カルティさんに負けず劣らず凄いですね、魔法も使えるし……え? へぇ、生活魔法ですか。さらにスキルの料理腕って、凄いなぁ、これだけあればいいお嫁さんになれますね」
「い、いつでもいいですよ、ミツヒ。いつ来てもいいですよ。ミツヒが良ければ、いつでも私は受け入れます」
真っ赤になりながらも堂々と言い放っている、ティファさん。
対して、グヌヌ、と後ろから聞こえるけど、この場合は聞こえない振り、知らない振りをするのが得策だ、と感じた。
うん、絶対にそうだ。
でも王女の護衛なのに、急にそんな事言っていいのだろうか。
その後は同意するつもりなのだろうか。と、考えても余計な事だ。
「ま、ま、ゆっくりと考えた方がいいですよ、ティファさんも綺麗なんですから」
肩から掌を離しながらいうと、ティファさんは、今になって片手で頬をさすって、自身が言い放った言動に、さらに赤くなり、頭から湯気でも出そうになっている状態にも見えた。
ステータスも見れたので、椅子から立ち上がって出口に向かえば、後ろからカルティさんがティファさんに話しかけ「綺麗?」とか「私は言われていない」とか言っていたが、勿論この場も聞こえない振りをした。
そして部屋を出るときに後から来る二人が、「フフフ」とか「それはないだろう」とか「生活魔法は卑怯」とか「何故貴様だけ綺麗」とか聞こえたがこれも絶対に無視しよう。
とても遠く感じた扉を開けて部屋から出て、受付まで行けば、振り返ったミレアさんが、どうでした?、と俺に聞いてきたので、普通の村人でした、と笑ったら、え? 絶対にそんなはずはない、という自信を持った表情だったけど「そうですか、わかりました」と素直に聞いていた。
どう言う事なのだろうか……。
ギルドを出てゴルドアさんに報告するためマイウ亭に戻る。
店に入ると厨房には、ゴルドアさんとエフィルさんがいた。
もう昼になるので、俺は水晶のお礼に、二人に昼食を奢りエフィルさんに三人分を頼んだ。
テーブル席に座るとすぐに料理が出てきた。
レッドラビットの肉と野菜をパンにはさんでソースが掛けてある。
それと果汁。
さっそく口に入れるとまだアツアツで、ジューシーな肉をホクホク食べた。
合間に飲む酸味の効いた甘酸っぱい果汁がさらに美味しく感じさせた。
俺は空腹だし、二人も空腹だったようなので終始無言で食べたのだった。




