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第17話 スマルクの町 手合せ

よろしくお願いします。

 手合せだけど、刃引きの剣でも危ないから、皮の鎧を装備をして裏庭へ出向く。

 そこに居たのはカルティさんだけでなく、ティファさん、ゴルドアさん、そしてエフィルさんもいた。

 エフィルさんの配慮なのか不明だけど、リリは買い物で出かけているので、今はいない。

 このような現状になったのは、カルティさんが昼食を食べている時に、俺と手合せをする、と話をしたら皆も興味があったらしく、観戦しよう、と集まっていたのだった。

 さらに、ティファさんも、手合せがしたい、と言いだし、カルティさんが勝手に同意していたので、今は二人とも事前に鎧を装備している。

 すると、両腕を組んでいるゴルドアさんが、俺に声を掛けて来た。


「来たな、ミツヒ。折角の手合せだから練習というよりも本気の試合をするぞ。しっかりやれ」

「えー、危ないですよ。いくら刃引きの剣とはいえ本気で当たったら怪我するじゃないですか」

「だからエフィルがいるんだよ、怪我はすぐ治る」


 エフィルさんを見ると、ウフフ、と笑って胸辺りで手を小さく振っている。

 あー、エフィルさんの回復魔法か、それはそれで見てみたい気がするけど……。


「それに相手は女性だから……」


 と思わず口を濁したら、聞こえたカルティさんが俺を睨みつけて来た。


「なんだ? 女だから何だ? 私は剣士の冒険者だ。私には手加減なんて無用だぞ。むしろミツヒが弱くて怪我するのが怖いんじゃないのか?」

「いえ、そうでは無く、あの、その、つまり。父さん以外と手合せするのが初めてなので……」


 そのやり取りを見ているゴルドアさん。


「大丈夫だよ、ミツヒ。安心して掛かって行け。二人共強いぞ。このスマルクの町なら上位片手に入る程だから胸を借りるつもりで思い切りやってみな」

「そうですか、わかりました。では胸をお借りします、カルティさん。お願いします」


 振り返ってカルティさんを見ると、何故だか顔を赤くして、両手で大きい胸を隠すようにしているし。


「む、胸を貸すのは、べ、別にこの胸じゃないぞ、胸を貸すというのはだな……」

「いや、知っていますよ、カルティさん。大丈夫ですよ」

「そ、そうか、ならいいんだ。わ、悪かったな」


 何故だか後ろで立っているティファさんが、ジト目でカルティさんを見ている。

 ゴルドアさんが倉庫に指を差す。


「よし、ミツヒ。倉庫からお前の好きな剣を選んで持って来い」

「はい。では選んできます」


 倉庫の中にある木箱には、何種類もの剣や槍、それに刺突武器も無造作に入っていた。

 その中の数本を取り出し持ってみると、俺は自分の使っている剣にほぼほぼ近い、中型より少し長い剣を選んだ。

 また、俺の皮の装備を見て、防具も中から選べと言われたが着慣れたものがいいから、と断った。

 怪我をしたとしても、ティファさんにすぐ治してもらえるのだから、実の装備で手合せした方がいいのだし、この手合せによって俺の難点や弱点なんかがわかれば占めたもので、今後に生かせると考えた。

 何回か素振りをすれば、しっくりしていい感じだ。

 ティファさんを見れば、やはり似たようなロングソードを持って、既に準備が整っていたようだ。


「ミツヒ、準備はいいか?」

「はい。俺は出来ています、ゴルドアさん」

「私もいつでもいいですよ」

「では前に出て構えろ」


 まず、ティファさんが前に出て来て合わせるように俺も前に進む。

 相対し構えるとゴルドアさんから声が掛かった。


「始めっ」


 まず俺から行こう。


「では、行きます」


 手始めに、俺から先に切りかかる。

 それは、ティファさんの強さも不明だったので、先手必勝かつ力量を見る為だ。

 力強く踏み込めば、一足飛びに間合いに入り、斜め上段から左右に繰り出す四連撃を打って見る。

 そこはティファさんも構えを取っているので、剣と剣がぶつかる金属音と共に真面に受けた。

 俺が一歩後退すれば、ティファさんも合わせるように追随して来ると、同じような四連撃を繰り出して来た。

只悲しいかな、俺は既にティファさんの攻撃軌道が見えていたので三回真面に受け、ぶつかる金属音と共に、最後の一撃は直前ですり抜けるように横に避ける。


「くっ」


 焦るティファさんは、体勢が崩れた姿勢ながらも、ロングソードを横一線、薙ぎ払うように切り飛ばしてくる。

 刹那、見切っている俺はギリギリ躱せる距離を後退すれば、空を切るロングソード。

 大剣ゆえにその慣性の力はそう簡単に止められないので、俺の前を通り過ぎた瞬間に踏み込んで上段から振りかぶり、ティファさんの頭上目がけて振り降ろす。

剣を振り切った状態で構えもとれないティファさんは、避けられない、と判断したようで覚悟したように眼を瞑る。

 だがしかし、剣は振り降ろさせる事無く慣性、重力を無視して形で頭上の直前で止めた。

 その風圧で、ティファさんの綺麗な銀髪が悲しく揺れていた。


「それまで」


 ゴルドアさんから声が掛かれば、ティファさんは息を切らし、力なく腰から地面に落ちるように座り込んだ。


「ハァハァ。参りました。ハァハァ」


 ゆっくり近寄って、手を差し出しティファさんの手を引っぱり起こす。


「ティファさん、大丈夫ですか?」

「ミツヒが剣を止めてくれたお陰で怪我もなく問題ないです。ただ、ミツヒの剣圧が、思いのほか重くて手が痺れています」

「あ、すみません、ティファさん」


 一歩前に出てくるゴルドアさんが驚いている。


「おいおいおい、ミツヒ、なんだその強さは。ティファだって強いのに桁違いじゃねえか」

「日頃の鍛錬のせいじゃないですか、ゴルドアさん。それに、町の周辺での魔物退治もして鍛錬していますから」


 あれ? ティファさんの顔がほんのりと赤くなっている。

 そうか、疲れたのだろうから、そっとしておこう。

 同時に、ハァ、とゴルドアさんが額に手を当てる。

 エフィルさんは終始笑顔だったけれど、いつもの笑顔ではなくなっているような……あ、少し引きつっているのかな?

 ――何故だろうか。


「次、カルティ。今の見てたろ。やるか? おまえがティファより強いのは知っているけど、手ごわいぞミツヒは」

「も、もちろんやりますよ。む、胸をあげますから」


 何か違いますよ、カルティさん。

 あ、エフィルさんは無視してティファさんと話し始めているし。

 教えてあげてもいいのに、と思っているのは俺だけなのかな。

 ゴルドアさんに至っては、聞いてもいなかったみたいだけれど、気にしないって大事な事なのだろう。

 うん、また一つ勉強になった。

 ゴルドアさんが元の立ち位置に戻れば、俺とカルティさんが数歩前に出て対峙する。

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