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ぷろろーぐ

基本、一人称です。

よろしくお願いします。

 八歳を過ぎた頃から変化の予兆はあった。

 何も無い所に、何かが見えているような見えていないような。

 だけど何だかよくわからないまま月日が流れた。

 その力? は十歳になったとき、確実な変化が起きた。


 頭の中で、ピーン、と金属音が鳴ったような気がしたときから……。

 ――識別できるようになった。

 それは、人の感情なのか、気持ちなのか、まだ良く分からないけれど、色で識別できるようになっていた。

 最初は何の色かも不明だったので、戸惑うこともしばしばあった。

 それは少しずつ判明して来た。

 魔物はまだ見たことはないのでわからないけど、もしかしたら見えるのかもしれない。

 見えていた色で分かった事。


 白(無感情)、赤(怒)、青(悲哀)、黄(幸喜)、緑(楽)、桃(好意)、灰(疲弊)、黒(殺意)、等々。


 感情が重なれば、その別々の感情の色が、その人の上で交互に点滅した。

 確実な感情識別では無いけれど、そんな感じだろうくらいのものだった。

 普段は見えない。けど、眼に少し力を込めるようにすると見える。

 何の力なのかどうなのか分からないが見える。

 ――この事は誰にも言ってない。

 それは、余計な話をして変に思われるのも嫌だし、実際に見たところで、どうってことないし、今の自分には何の役にも立たないからほとんど使わなかった。


 始まり


 その日は青い空が澄み渡り、すがすがしい風が山間やまあいを吹き抜ける。

 森の緑も濃く生き生きと育っている。

 村の近くには沢があり、流れる水の音が聞こえる。

 ここは俺の生まれ育った辺境の村タモン。

 北の外れにある集落で、今現在二〇〇人ほどが生活している。

 主に農業と狩猟で生計を立てている小さい村だけど、みんな仲良く生活には困らない。森の中では魔物も出るので村の周囲には塀があり門番も常駐している。

 その一画で畑を耕す俺はミツヒ。

 黒髪、黒い瞳、身長一三〇センチ程で筋肉がつき始めた、多分、多分だけれど顔立ちの整った少年だと思う。人に言うほどの事でもないけどさ。

 今俺は、人参畑で鍬を持ち、一列また一列と一心不乱に耕している。

 少し息は上がるけど、楽しむように耕す事を心掛けている。

 そして一つの人参畑を耕し終え、畑一帯を見渡す。


「フゥ。いい感じだな、半分進んだし思ったよりいい速度で耕せた。これなら明日にはジャガイモ畑に入れるな」


 俺の家は農家なので手伝っているけど、これも鍛錬として力を付けるために速く耕すように鍬を振るうことを楽しんでいるよ。

 ――最近は父さんが狩猟を始めたんで、ほとんど俺に任されっぱなしだけどね。

 一休みしていると、見慣れた女の子が駆け寄ってくるのが見えた。


「ミツヒー、水持ってきたよー」


 幼馴染のランが水筒を持って来た。

 茶髪で腰まである髪を後ろで束ね、仔馬の尻尾のように揺らしている、俺が言うのも何だけど、青眼のクリッとした可愛い少女。

 身長は俺と同じで一三〇㎝くらいのスレンダーの活発な女の子でもある。


 いつも元気なランだな。

 あー、久しぶりに力を使ってみるか。

 んっ。あ、頭の上で黄と桃が点滅している。うん、なんだか楽しそうだ。


 ランから水筒を受け取り、一気に飲む。


「プハーッ、美味い。悪いねラン、いつもありがとう」

「いいのよ、ついでだしいつも野菜くれるからさ。ミツヒも調子良さそうね」

「うん。いい感じで調子よく耕せているよ」

「じゃ、家に戻るから。またね」


 ランは村長の娘でしっかり者だ、それに気が利く気立てのいい人気者のラン。

 彼女の走って帰る後姿を見送ってから、鍬を手に取り再び農作業を進める。


「よーし、次の人参畑だ。また鍛錬しながら、より速く進めて終わらそうかな」


 後半も黙々と作業を進めた。

 畑仕事が終わり夕方も鍛錬を始める。

 畑の脇にある大きな木の下には、持ち手を剣の形状の握り手にしてある重い棒が置いてある。

 それもロングソードの重さの倍にした棒を素振りする。

 これがまた重くてきついけど、筋肉がパンパンになるまで素振りをする。

 これを毎朝夕に必ず行っている。なぜ鍛えているか、俺は将来の夢があり、そのために強くなりたい、ならなければ、と鍛えている。

 素振りを終えれば、とても苦しい鍛錬で、息を切らしながら両ひざに両手で支えるように中腰になる。


「ゼェー、ゼェー、終わったー。でも気持ちいいー。ハァハァ」


 綺麗な夕日になり日も沈む頃、こうして一日の終わりがやってくる。

 勿論疲労はあるけれど、今日もいい修行になったなぁ、と思いながら家路に向かいながら歩いていると、 畑を挟んだ道の外れに村長のズーロさんが空を見上げながら立っていた。

 何か考え込んでいるようなので力を使って見る。


 ん? 白? ……何も考えていなかったようだ。なんだ、ボー、っとしているだけだったか。

 心配して損した気分だけど、何も無いに越したことはないから、これも良し、としておこう。


 茶髪のズーロさんは村長だけど、四〇歳くらいの中肉中背で普通の、いいおじさん、って感じなんだ。

 でも見かけによらず、昔は冒険者として活躍したA級の魔法剣士だったらしい。

 言われてみたら確かに面影はあると思ったよ、本当に。

 ズーロさんとは距離があったので、声をかけずに家路に向おう。早く帰りたいからさ、うん、そうしよう。

 村の奥の外れに建っている、小さな木造の平屋が見えてくる。

 ――ボクと両親の家。

 ほどなくして家に着くと、入口では二人の姿があって、帰って来た俺に気が付いた。


「おぅ、ミツヒ、おかえり」

「おかえりなさい、ミツヒ」 

「ただいまー」


 サイルト父さんとティマル母さんだ。

 父さんは黒髪短髪で身長は一八〇㎝、ガッチリした体格で、優しい母さんは茶髪を後ろで三つ編みにしている。

 一七〇㎝と周囲の女性より、やや大きいがスタイルは良いのではないだろうか、いや、いいと思う。


「畑の進み具合はどうだ?」

「うん、順調だよ、人参畑が終わったから明日はジャガイモ畑だね」

「そうか、順調か、それは良かったな。今日は手ごろなレッドボアが獲れたから、今晩はミツヒの好きな肉料理だよ」


 レッドボアは、近くの森の奥地で獲れる大型の熊のような獣で村の主食になっている。


「久しぶりだねレッドボア、肉が柔らかくて美味しいんだよなー、楽しみー」

「はいはい、そのまえにお風呂に行ってきなさいミツヒ」

「うん、わかった、行ってきまーす」


 タモン村の外側には地熱の高い岩盤地帯があり、沢の水の一部を水路に通して村の中に引きこんでいる共同の風呂がある。

 屋根は無いが男女別々に区分けして、高い板で仕切られ一〇人は余裕で入れる無料の風呂。

 体を洗い風呂につかると熱くもなく適温の風呂。

 俺が最初なのかまだ誰もいなかったので、数か所に灯りを付けて入る。

 最後に出る人が消すのが風呂の決まりだ。


「フゥ、いい湯だなー。今日も鍛錬した筋肉をほぐしてっと」


 そしてまた、いつものように風呂の縁に頭を乗せて空を見上げながら温まり寛いでいると、誰かが入って来るのを感じた。


「お、ミツヒ」「やあ、ミツヒ」


 二人の少年が入ってきた。

 ダースとラッタ、三歳年上で今年から主に狩猟で生活している。

 ダースは剣士、スキルは金剛、魔法は簡単な回復魔法が使える。

 ラッタも剣士だが、まだ魔力は小さいけれど攻撃魔法もある。

 短髪赤髪、身長一七〇㎝で、体つきもちょっとごつくなり始めている、ほりの深い顔のダース。

 そしてラッタは、金髪を肩まで伸ばし、身長は同じく一七〇㎝で細マッチョなのっぺり顔。

 いや、悪く言った意味じゃなく変な顔じゃないよ、普通に整っていると思う……多分。

 三人仲良く温まりながらのひと時だった。

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