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更正王女様シリーズ

更正王女様6歳が参る!

作者: 秋月煉

前回から間が空いてしまいましたが、宜しくお願いします。なお、主人公は6歳らしくありません。

昔、昔。

こことは違う遠い平和な国には、知恵の神様の加護を貰った、大変頭の良いお姫様がおりました。このお姫様、パーティーデビューにて、問題を起こした青年達を更正させたとして、親しみと尊敬をもって更正王女様と呼ばれていました。

そんな更正王女様には、姉と慕う兄達の婚約者達がおりました。勿論、婚約者達の家族とも仲良しです。

今回は、更正王女様と仲が良い、とあるお姉様が巻き込まれてしまった、騒動のお話です。


◇◇◇◇◇


ごきげんよう、皆様。

いつの間にか更正王女のあだ名が付きました、ティナリアです。あれから1年経ちまして、6歳になりましたの♪ そんな私は、今現在、廊下側の扉の前で、はしたないのは分かっていますが、立ち聞きをしています。

今日は、3番目のお兄様の婚約者である方が、妹様と城に遊びに来たのです。早く、お義姉様とお呼びしたいですわ。今はお姉様なのですもの。

お姉様の妹様も、私にとっては、お姉様です。だって、私よりも7つも年上なんですもの。

大好きなお二人が来ると聞いて、これでも急いで来たのですが、私が入ろうとしたら、急に泣き声が聞こえて、入るに入れなくなってしまったのです。

しばらく聞いて、私は自分の目が坐っている自覚があります。中の会話のほとんどが聞こえてますから。

あら、これは更正王女の出番ではないでしょうか?


「お姉様、お話は聞きましたわ! この私にも参加させて下さいませ!」


ドンッと扉を開いて入った私の前には、3番目のお兄様と、婚約者のマリアンナお姉様、顔を手で隠した女性が居ました。勿論、使用人も騎士も控えています。

たしか、女性を泣かす男は、きっちりシメた方がいいと、お母様が言ってましたわ! 妹の方は、ジュリアンナお姉様と言うのですが、大好きなジュリアンナお姉様を泣かした男、絶対に許しませんわ!!


「おい、ティナリアが本気だぞ!?」


「あら、いいではありませんか、この際ですから、しっかりシメてもらいましょう?」


なんて会話と、泣きそうなお兄様、大変いい笑顔のマリアンナお姉様の姿がありましたが、些細な事です。ジュリアンナお姉様は、アワアワと慌ててますが、既に遅いですわ。こうなったら、全力で頑張らせて頂きます! お姉様を泣かせた奴など、敵で十分ですわ!


「わたくしにも、詳しい話を聞かせて下さいませ」


はしたないのは分かってますが、こうしてわたくしも仲間入りができましたわ。

お姉様達の話を要約すると、ジュリアンナお姉様と婚約していたのは、侯爵家の嫡男だそうです。ジュリアンナお姉様とは、幼少の頃からの婚約で、仲は可もなく不可もなく。ごく普通の婚約者同士だったとのこと。しかし最近、様子がおかしくなってきて、この前のパーティーでは、エスコートすらしてくれなかったそう。代わりに彼がエスコートしたのは、子爵家の知らないご令嬢で、会場でもべったりだったとか。流石に気になって、相手の令嬢を調べたら、私生児で、最近引きとった子であることが分かり、更には、彼の他にも、男の影がチラホラと・・・・・。しかし彼は、その女性に夢中で、周りが見えていない状態。

あら、本当にまずいんじゃありませんこと? だってこの婚約、政略結婚ですわよ?


「侯爵家との婚約は、政略的なもので、この婚約が流れると、侯爵側がかなり不利になるんだ、だから破棄は出来ない」


頭が痛いことだと、お兄様は頭を抱えてしまいましたし、途方に暮れているジュリアンナお姉様は、また泣き出してしまいました。

ここは、わたくしが一肌脱ごうではありませんか! 大好きなお姉様の為ですもの。


「子爵家でしたわね? そちらの家はまともな教育をしていませんの?」


一番気になった事を聞くと、何故かお三人とも微妙な顔をされました。どうしましたの?


「それが、本人がまーったく聞かないそうでね、そこの嫡男とは学校で同級生だったし、話した事もあるんだけど、どれだけ言って聞かせても、まったく耳をかさないし、何より父親が可愛がっていて庇ってしまうらしいんだよ、お陰でまともな母親と、嫡男、次男、長女がどんどんやつれていくし・・・・・、問題児は外で問題を作って家に迷惑をかけまくっていると、最近は父親も気づいたらしいが、対応に困り果てているらしい」


あら、予想外に深刻でしたわね!?


「その父親は邪魔をしそうなんですの?」


「いや、最近、ようやく目が覚めたらしく、すっかりやつれてきているようだし、邪魔はしないだろう」


とは、お兄様談。では、その問題児二人に現実を知っていただき、何よりも、お姉様とその婚約者には仲良くなって頂けばいいのですわね?


「少しお時間をくださいますか? 上手くいくように考えてみますわ」


ニッコリ笑ったら、お姉様達は大変いい笑顔でしたのに、お兄様は諦めたような顔をされたのが、印象的でしたわ。


◇◇◇◇◇


さて、そうは言ったものの。わたくし、どうすればいいでしょうか?

自分の部屋に戻ってから、ずっと考えていますの。

まずは、前提として。

ジュリアンナお姉様と、クズは破棄が不可能。ウフフ、こんなバカはクズでいいですわよね。

さて、不可能の理由は、彼しか侯爵家を継げない故ですわ。一人っ子ですし、ここは親戚の血筋が不仲で有名ですので、もしも嫡男が居なくなったら、血の雨が降りそうですわね。他にも、ジュリアンナお姉様以外の令嬢との婚姻は、難しいのですわ。中立の立場の令嬢ですし、他に同じ派閥で適齢期の令嬢はいませんし。

次に、子爵家のクズ令嬢と、クズ嫡男を別れさせる。それも、綺麗な形で、自覚を持たせて。注意点としては、立場をどうやって自覚させるか・・・・・ですわね。嫡男は、現実が見えれば少しはマシかもしれませんが、問題は男を侍らせるクズ令嬢ですわね。自覚しない気がしますわ。

5歳の時は、確か令嬢には、本物の囚人が入る方の牢屋に入れて差し上げましたの。自分がいかにまずい事をしたのか自覚“は”、したようですわ。男性方は言わずもがな、ですわね。未だに笑いものですもの、あの方々は。令嬢のお姉様方には頭が上がらないそうですわ。

さて、そろそろ、本題ですわね。

どうしましょうか? 難易度がとっても高い気がしますの。

そもそも、私はその令嬢を見たことがないので、対策を練ろうにも漠然とした物になります。

まずは、敵情視察といこうかしら?


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


まず初めに私がしたのは、件の子爵一家と、自然と会う機会を設ける為の協力を、お母様にお願いする事でした。私は未だ6歳ですの。夜会には出れませんし、お茶会にいきなり接点のない子爵家の方を招く事は、怪しまれてしまいます。だから、素直にお母様にお茶会をお願いしたのです。

結果は、色々と説明をさせられましたが、無事に許可を頂けました♪ 私も参加していいようなものにして下さるそうなので、ホッとしました。

そして、ある昼下がり。王妃主催のそこそこ大きいガーデンパーティーが開催されました。

・・・・・お茶会の規模を通り越してますわ、お母様。予定よりも多くなったのは、色々と事情があるとのことです。詳しくは聞きませんでした。でも、女性しか出席してませんし、私の年頃の子も来てますから、ちょっとホッとしました。勿論、挨拶もしっかり受けてからの、自由時間です。

さて、観察を。

子爵家の皆様はすぐに見つかりましたの。お母様が教えてくれました。


「うわぁ・・・・・」


何と言いますか、ご家族の方が可哀想になってきました。だって、一人だけ、随分と派手な方が居るんですもの。確かにガーデンパーティーですが、決まりはあります。タブーの一つを見事に破っていますの! 昼間は、露出を控える服装をするのが一般的なのに、彼女は首元を大胆に見せています。夫人も、長女の方もちゃんとしておりますのに。問題児とは、本当でしたのね?


「御子息の方は、お兄様が引き受けて下さいましたが、宜しかったのですか? お母様」


「ウフフ、大丈夫ですわ、たまには兄として、頑張りたいそうよ?」


「まぁ! お兄様はいつでも素敵に頑張ってますわ!」


「あらあら、これはあの子には本当に頑張ってもらわないといけないわね」


そう、敵情視察の他にも、お兄様にはクズ御子息に対して、色々と話してもらうつもりですわ。その為のガーデンパーティーですから。だって、城の中からこのパーティーが見える位置の部屋に、今いらっしゃってますもの。かのクズ御子息が!

お兄様、期待してますわ!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


Side:第三王子


この度、我が妹姫からのお願いは、中々に難易度が高かった。

目の前にいる、馬鹿野郎の、トチ狂った浮気さえなければ、僕の大事な人と、その妹や、家族にも迷惑をかけなくても良かったと思うと、本当に腹が立つ。だから、義妹を困らせた元凶に、現実を見てもらうしかないよね?

そして、八つ当たりくらい少しはしてもいいよね?


「やあ、久しぶりだね、フレット」


「お、お久しぶりです、王子殿下」


自然と、彼が外を見るように誘導しつつ、会話を雑談から本題へ変えていく。


「君、浮気してるんだって?」


「ゲホッ、ゲホッ、わ、わたしは!」


単刀直入に言ったら、ちょうど紅茶を飲むとこだったらしく、咳込んでいた。見苦しく、言い訳しようとしている件のクズ(フレット)に、現実を見せてやる。


「見なよ、母上が用意したガーデンパーティー、綺麗だろ? でも、規則を守らない奴にはもったいないと思わない? 母上が不愉快だろうね?」


訝し気に下を見た彼は、ある場所を見て、ようやく気付いたらしい。そこでは小さな口論と、必死で謝る数人の姿。明らかに、悪いはずの人物は、悪いとすら思っていないようだ。彼が初めて見るだろう、その本性。


「君の婚約者は、本当に素晴らしい令嬢だよ、将来、義理の兄弟になるのに、本当に残念だよ、君の家では血の雨が降るが、関係ないよね? 君はあの問題児がいいんだろう?」


彼は目に見えて動揺したが、もともと頭は悪くないんだ。弟の側近候補にまで上がっていたくらいだし。まあ、後継ぎという事で、外されたが。

しばらく考え込んだ後、彼は途方に暮れていた。どうすればいいか、分からなくなったらしい。

まあ、助言くらいはしてあげよう。僕も彼とは後々のこともあり、仲良くしたいからね。まずは婚約者と仲直りしないとね?

さあ、仕上げは頼んだよ? 可愛い妹姫。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


結果から言えば、お兄様は成功させましたわ。クズ御子息もとい、侯爵子息はパーティーを見て、ようやく現実を見たようです。自分がどれ程危ない位置に居たのかを、ようやく理解したようですが、ここで新事実が浮上しましたの!

あのクズ令嬢! 私の末の兄を狙っていましたの!

というのも、ガーデンパーティーの際、私も確認したのですわ。

子爵家の夫人や、お姉様方は立派な方達で、挨拶もとても素晴らしかったのです。マナーに煩いという評判通りの方でした。逆にクズ令嬢は母と私にはそれなりに挨拶はしたのです。そう、とても拙いものでしたが。引き取られてから、何を学んでいたのでしょう? 我々以外にも、高位の方は居るのですが、皆様を無視!

ちらりと確認しましたが、容姿は可愛いらしいもので、思わず庇護欲をそそるような、そんな外見でした。ドレスには眉を顰めましたが。

パーティーマナーも、ガタガタでした。最低限のマナーさえ、守れないのですから。ここには異性は居りません。つまり、本性でも構わないとでも思ったのでしょう。喧嘩は始めるし、爵位が上の人にまでなのです。子爵夫人は謝りに行き、最終的に倒れてしまいました。

何だか申し訳ない事をしましたわ。夫人には後で、何か一筆したためましょう。

しかしあのクズ令嬢、よりにもよって、この時にフラッと消えたのです。倒れた夫人を置いて!!

探しに行かせると、何と末の兄と偶然出会い、お話をしていたとか。・・・・・まあ、兄は事情を知らなかったそうで、ただ単に、礼儀知らずのアホ令嬢と出会ってしまったと、困っていたそうですが。さすがですわ、末のお兄様。フラグをボキッと目の前でへし折るなんて。

前の令嬢は、あの騒動以降、修道院で最初は騒いでいたそうですが、ある日を境に現実が見えたのか、最近は大人しく修道院でお勤めに励んでいるとか、いないとか。あちらも色々と教育に関して、悩んでいたそうで、意見を出しただけですが大層感謝されました。

しかし今回はそれでは無理そうなので、はて、どうしましょう? 


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


一生懸命に考えても分からないので、ここはお母様に相談することにしました。


「あらあら、私の可愛いお姫様は、本当にいい子ね? あんな阿婆擦れ・・・ゴッホン、礼儀知らずなご令嬢にまで気を回すなんて」


と言いながら、頭を撫でられました。優しいお母様の手、私も大好きですわ。


「そうね、ならば行儀見習いとして、厳しいと評判の場所で教育してもらいましょう」


あら、お母様、名案ですわ! 子爵家なら、他の家に行儀見習いとしていくのは、おかしい事ではありません。でもその前に、迷惑をかけた方々には、謝罪をさせて、しっかりお灸をすえませんといけませんわ。

その後、私はそれぞれを時間をずらして一緒に呼び出し、オハナシアイを皆様としましたの。えぇ、フレット様と、ジュリアンナお姉様、子爵令嬢ですわよ?

初めに子爵令嬢を部屋に呼び、これまでの事をお話しして、きちんと説明致しましたの。かなりまずい事も含めて。私相手でも、やはり彼女は猫を被るつもりはないようで。たまたま、廊下で待っていたフレット様と、ジュリアンナお姉様が、この会話を聞いていて、彼が再起不能に近いくらい項垂れていようとも、中でお話し中の私は知りませんわ!!

この後、無事に、100年の恋が冷めたフレット様は、ジュリアンナお姉様と仲直りして、前よりも仲良くなったようです。

さて、子爵令嬢ですが、まさかの行儀見習いが、王城に決まりまして・・・・・。

一番下っ端のところから、異例ですが始めるそうですわ。無事に仕事が出来たのかは、私には分かりかねますわね。だって、私とは関わらないのですから。

無事、今回の騒動は解決いたしましたの。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


この後のお話を少し付け加えましょう。

お姫様が仲直りに協力した二人は、その後、末永くおしどり夫婦として評判となり、二人で親戚の不仲を解消し、一族をより発展させたと、後世には伝えられています。

この後の子爵令嬢ですが、一生を城で召使として暮らしたそうです。問題児だったこともあり、結婚できなかったとか、何とか。

こうして、お姫様はまた一つ、武勇伝を増やしましたとさ。


お読み頂きまして、ありがとうございますm(_ _)m

久しぶりの短編小説で、ちょっとドキドキしてます。

気に入って頂けましたら幸いです。



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[一言] ぶははは! 相手側の人、ある意味修道院より酷い! しかも、ターゲットが「アウトオブ・眼中」!?
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