発作
そうしたある日、一ヶ月ほど前のことである。
早朝ヨネは急に咳き込んだ。息ができない。
それは苦しい喘息の発作であった。
ヨネははいつくばってやっと電話口に出た。
「ゴホンゴホン。うう。ヨシ!」
「どうした姉さん?」
「咳き込んで、苦しい。死にそうじゃ。ゴホンゴホン」
「わかった。今すぐ行く!」
店の開店準備をしていたヨシは、受話器を置くと
奥に向かって叫んだ。
「小百合!お店準備しといて!姉さんとこへ行ってくるから。
何か咳き込んで苦しそう。病院へ連れて行ってくる」
「はーい!わかりました。おかあさん!」
白馬みそらのエコーランド。数十軒のブティック、土産品店、
喫茶店、レストラン。さらにプールやディスコなどが
なだらかな坂道数百メートルの両側に立ち並んでいる。
可愛いブティック『SAYURI』はエコーランドのほぼ
中央にあるこじんまりとした店舗住宅である。
ヨシは軽乗用車でみそらのからジャンプ台、八方ゴンドラ、
ペンション村を越え、田舎道を抜けて森上までの数キロを
急ぎ走った。
白馬山麓の旧家塩山邸は植え込み石垣に囲まれ、奥には古い
土蔵まである。広い中庭と駐車スペース。古い乗用車が1台
と軽トラが1台止まっている。
ヨネはその横に車を止めると踏み石を踏んで玄関へ駆け込んだ。
「ねえさん!ねえさん!大丈夫?」
長い廊下を走り、ヨネの寝室の障子を開ける。床からはみ出し
瞳をむいてもがいているヨネ。ヨシは駆け寄りヨネの体を起こす。
「ねえさん!救急車を呼ぶわね!」
息絶え絶えのヨネ、苦しそうにうなづいた。
ほどなく救急車のサイレンが聞こえてきた。
エコーランドの店内にいた小百合は、不安げに外を見る。
塩山邸に救急車が到着し、酸素マスクをあてがい担ぎ込まれるヨネ。
ヨシも救急車に乗り込む。村人数人が不安そうに見守っている。
2週間ほど中国へ仕入れに行きますので休みます。
検索でご覧ください→『映画村きりもんじブログ』