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通夜

春子はずっと下を向いたまま返事の代わりにうなずいている。

田中刑事は棺に近づき最後の別れをした。この時棺の下に

何か細工をした。棺に手を合わせて、


「じゃ、又明日のお昼に」

と言って出て行った。


春子が一人うつむいたまま棺の前に座っている。

しばらくじっとしていた春子が、突然、


「うううっ!」

と言って小声で叫びだした。


「バカ!もうバカ!バカ!どうしてこうなるのよ。

もうドジなんだから。何もかも失敗じゃないの。

どうして間違って飲んじゃったのよ。盗むところ


間ではうまく行ってたのに、もう。最後の詰めが

甘かったのよ。清一に飲ませる毒入りを一気に

間違って飲むなんて、ほんとにばかじゃない?


もう一銭にもならないわ。罰が当たったのよ。

欲にくらんで大罰が当たったのよ。ばかばかしいっ

たらありゃしない。うううう、あんた」


春子は棺にひれ伏して泣き続けた。


田中刑事と山本は、清二のことをあちこち聞いて周った。

「清二は相当母親のヨネと兄清一を憎んでましたね」


「ああ、堀金開発の事務員の話じゃ、いつか兄貴に

仕返しをしてやるとか、くそっあの兄貴さえおらんけりゃ

とかいうとったらしい」


「借金していた店の主人や友人達も口をそろえてそう言っ

てるそうです。とても自殺とは考えられませんね?」


「そりゃわからん。あてつけで死ぬ奴もいる」

「あてつけですか?」


「ああ、相手を殺るほどの勇気のない奴は、憎い相手の

目の前で毒をあおって死ぬなんて、歌舞伎とかオペラ

とかでありゃせんか?昔から」


「なるほど。話は変わりますが、清二の借金八千万円は

全額塩山ヨネさんが払うそうです」


「大変な息子を持ったもんだな」


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