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横っ面

車が止まると清二は扉を開けて荒々しい足取りで

玄関口を駆け上がった。廊下を大きな音を立てて走る。

豹がらのミニスカートをはいた春子が後を追う。


「やめなさいよ、あんた!やめなさいよ!」


物音に居間の皆は緊張する。食べる手を止め

廊下を注視する。荒々しい足音。障子が乱暴に

開けられ、酔った清二が現れた。


「こらっ、兄貴。黙って帰ってきやがって、

財産の半分はわしのもんじゃ。絶対、

兄貴に独り占めはさせんぞ!」


と大声で叫んだ。清一は黙ってすっと立ち上がり、

清二の横っ面を平手で思いっきり打った。

『ビシッ』と大きな音がする。


「わーっ」

清二が泣きべそをかきながら、左の頬を両手で

抑えて廊下を走り去っていった。


「わーっ。兄貴ばかりいい子にしやがって、

わしはいつものけもんや。こんちきしょう。

いまにみてろよ」


「ほら見てごらん、あんた」

後を追う春子の声が聞こえ、

急発進の車の音がして二人は去っていった。


ヨシがぐつぐつ煮える鍋の火を消す。

皆緊張の面持ちで座りなおす。

清一がおもむろに、


「母さん、来年の春に亜紀とこっちへ引っ越してくるよ」

ヨネは驚いて亜紀に、

「ええっ!いいのかい、亜紀ちゃん?」


亜紀は微笑みながら答えた。

「うん、いいよ。小百合姉ちゃんと一緒に暮らせるんなら」


小百合は戸惑ってヨシとヨネの顔を交互に見る。

ヨネが間をおいて、


「皆一緒に住んどりゃええじゃないか。屋敷は広いんじゃし。

なあ、ヨシ」


ヨシはせっせと肉を鍋に入れ火をつけなおしながら、

「わたしゃ姉さんの傍が一番ええ!」

そこで又皆は大笑いをした。清一が、


「それじゃあそういうことで皆さんよろしくお願いします」

亜紀も、

「お願いします」

と頭を下げた。


「じゃあもう一度食べなおし!」

清一が叫んで、塩山家の笑い声と楽しい夕餉が再び始まった。



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