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私達の最良の時/私達は幸いなる少数  作者: MV E.Satow maru
第1章 私達の最良の時
8/79

2020年1月下旬(2)

(承前)


古城こじょうミフユ 


 中谷なかたにさんがどこから話そうかなという感じで天井を見上げてから私の方を見ると話を切り出した。


「うちら軽音部で『ティエンフェイ』ってバンドやってるんだけど聞いてくれた事はある」

「ごめん、ない」


即答、瞬殺、ごめん。去年妹と友達で学祭見て回った時、屋台とか研究室巡りと練習船体験航海に気が取られて回れなかったんだ。


「そうか、それは残念。でね、ヴォーカルは西田にしださんがやってるんだけど、喉の調子が悪くて春休みには簡単な手術で治す予定なんだけど、しばらく歌うのはドクターストップが掛かっちゃって。今度の学祭に間に合わないんじゃないかって焦ってる。年1回のうちらの中では一番大きなお披露目の場だしさ。でもヴォーカルのいない『ティエンフェイ』は考えられない」


そういうと中谷なかたにさんは私の方へ身を乗り出してきた。


「古城さんの声ってとても魅力的。この間のカラオケ、うちは気に入ったし、みんなにも聞いてもらったらイケるって事で意見は揃ってるの」

「えーと。中谷なかたにさんはあの場にいたからわかるけど」


そう。なんで他の人が分かるの?


「ごめん。私が隠れてスマフォで録音していてみんなに聞いてもらってるから」


それはちょっとねえ。怒っておかないと。


「中谷さん、それは良くないよね」

「古城さん、ごめん。これは私が悪かった。コピーとか無断で絶対しないから」

「……許す。でも消してね」

「……分かった」


 中谷なかたにさんの凄いところはこの程度でへこたれない所だった。


「続けるね。古城さんにうちのバンドに入ってもらって一緒に春の学祭の舞台で一緒に演奏しよう。古城さんの声なら成功間違いなし。っていうか助けて。お願いしたいと思えた人って君しかいないの。うちのバンド、インスト曲もやるけどメインは歌だから。ヴォーカル抜きのティエンフェイは考えられないから」


凄い口説き方されてる。問題は愛の告白じゃなくてバンドの話だという事だけど。


 中谷なかたにさんが北見きたみ先輩の片腕を掴んで言った。


「ええい。北見きたみ先輩のノートつけるからさ。この人、とっても頭がいいから。ノートコピー希望者多いんだ」


と勝手に北見きたみ先輩のノートを売りつけようとしてきた。


中谷なかたにさん。勉強は自分でやるからいいです」


これはちょっとねえと思ったのでちょっとキツく返してしまった。勝手にノートをドナドナされそうになった北見きたみさんもちょっとねえという顔をしていた。


中谷なかたにさんにはカラオケの時にも言ったけど、私、重度の音痴だよ」


この様子を見ていた比嘉ひがさんが言った。


「ごめんね。中谷なかたにさんがあなたの声を気に入ってちょっと熱が入り過ぎてるみたいだから。とりあえずみんなでコーヒー飲みましょ。今日は一旦話は終了。また出直します」

「分かりました」

「ごめん。私もちょっと無茶苦茶だった」

「いいよ。中谷なかたにさん。熱心さは分かったから」


 そして五人で淹れたコーヒーを飲みながら互いの紹介とか雑談になった。みんなからは古城さん淹れたがるだけあるねと味を褒めてくれた。


 中谷なかたにさんからメッセアドレスだけ交換しようよと言われて断る理由もないのでみんなとスマフォを振ってアドレス交換までした。

彼女達の熱さは嫌いじゃないんだな、私。

みんなでマグカップとか洗って元に戻すと解散になった。


 部屋に戻るとメッセが飛んできた。西田さんだった。


マーヤ:私達の演奏、ネットで聞けるようにしているから。良かったら聞いてみて感想教えてくれたらうれしいな。

ミフユ:ありがとう。聞いてみるね。


 西田にしださんが送ってきたメッセのメッセージ末尾にURLが添えられていた。スマフォをBluetoothスピーカーにつないで聞いてみた。リプレイで何回もずっと聞いていた。

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