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私達の最良の時/私達は幸いなる少数  作者: MV E.Satow maru
第3章 私達は幸いなる少数
75/79

2021年12月(4)

古城こじょうミフユ


 スクリーンから最後のテロップが消えた後の一瞬の静けさ。余韻はバンドと奏者たちと観客と観客によって静粛な空気へ変わっていく。静粛は観客も演奏者なのだ。そして満員の観客席から一気に惜しみない拍手が沸き起こり場内を満たした。


 やがて拍手が止むとアナウンスが入った。


「本作品制作中に不慮の事故で亡くなられたティフェンフェイのギター、ヴォーカルの西田摩耶さんへの黙祷を行います。ブラス・フリートのホーレイシア・コリングウッドさんによる追悼の演奏を行いますので皆様、その間黙祷下さい」


メインスクリーンに「In Loving Memory of Maya」という文字が投影された。


 スポットライトが点灯カットインして舞台前方中央1カ所を照らし出した。そこにはトランペットを持った黒い礼装ドレス、黒っぽいブロンドの髪をポニーテイルにまとめたホーレイシアが立っていた。彼女は観客席にいるあるご夫婦に目礼するとトランペットを高く構えてマウスピースに唇を当てた。


 彼女は目を閉じると先ほどまで劇中で演奏されていた「Finest hour in my life」の主旋律を元にしたトランペット・ソロ曲を高々に鳴らした。そしてその旋律が隅々まで響き終わると再び彼女は目礼を送り、そしてスポットライトが消灯フェードアウトした。


 再びスポットライトが点灯カットインした時、ティエンフェイとブラス・フリート&コメット・ストリングスを照らし出した。

 私は観客側から見て右側、上手のマイクスタンドの前に立った。私の隣ではギターを担いだ智絵美ちえみちゃんが下手、もう一本のマイクスタンドの前に立っていた。


 私はは観客を見渡した。息を吸い込む。ラスト2曲。いつもの通りやる。それが私の100%の力、摩耶まーやが鍛えてくれた歌声なのだから。


「これからラスト2曲。あいつに捧げます。聞いてるかな。いや、聞いてないか。きっとここにいて私達と一緒に歌ってると思うから。……ねえ、君の音楽をみんな聞いてくれているよ。じゃあ、みんな。いいかな。行くよ!あの子の最高傑作、Finest hour in my life」


そして摩耶まーやが作った音とリズムが会場内を満たし、音楽を織り始めた。


「Finest hour in my life」の最後の音が響き終わると盛大な拍手をもらえた。


 拍手が収まったところで今度は中谷ちゅうやちゃんがMCだ。


「ティエンフェイの中谷皆美なかたにみなみ、ドラマーです。MCなんて初めてなんだけど、この曲の最初の紹介は私がしたいってお願いしてやらせてもらってます」


観客席から暖かい拍手が沸き起こった。


「ありがとう。皆さん……私はあいつと幼馴染であいつがギターを始めたから追いかけてここまで来ました。あいつがいなくなって音楽なんてもういいや、誰にも聞かれなくていいやって思った事もあります。でも私の中にいる摩耶まーやは『中谷ちゅうやちゃん、そんな意気地なしだったっけ?』って言うんです。『もっと私達の音楽を聞かせてよ』って言うんです。

それに応えたい。そういう思いを歌に書きました。チセも智絵美ちえみ朱里しゅり先輩も曲をつけてくれたふーちゃんもみんな気に入ってくれたけど、あいつはどうかな。『もっと書けたんじゃないの』って言われそうな気がする。

でも今、ぶつけられるのはこれしかないから。私達はあの子と一緒に演奏して喜怒哀楽を一緒できた事は一生の宝物です。我ら幸いなる少数。We happy few Symphonic Rock Ver.。ティエンフェイとブラス・フリート&コメット・ストリングス、映画が結んだ縁の力を聞いて下さい」


ドラムを叩きながら中谷ちゅうやちゃんが叫んだ。


「1…2…1、2、3、4!」


 ギターでメロディーを奏でながら智絵美ちえみちゃんが歌った。彼女はティエンフェイでの練習、そして映画の中の香久耶かぐやを通じて摩耶まーやを知っている。


「我ら幸いなる少数 We happy few…

 偶然に選ばれし少数

 ここに集いて音を奏でる

 未来全ては記憶になる

 過去それはFinest hour」


 智絵美ちえみちゃんのギター、そしてベース、キーボードが音を奏で、中谷ちゅうやちゃんのドラムがリズムを刻み、そこに私の歌声が重なって行った。


「我ら幸いなる少数 We happy few…

 神様に祝福された歌声

 ここに集いた偶然という奇跡

 未来あの子はここにいない

 過去それはあの子との最良の時」


 メロディが消えて中谷ちゅうやちゃんのドラムだけ響く。そしてそこに再びギターが加わって対話を始めた。そしてドラムと共に中谷ちゅうやちゃんは幼馴染の親友への思いを歌った。


「我ら幸いなる少数 We happy few…

 あの子は早く駆け抜けた

 ここに集いてあの子を想う

 未来私達の記憶で歌う

 過去あの子と歌った最良の時」


 間奏でホーちゃんのトランペットと薫子かおるこちゃんのヴァイオリンの演奏が入った。ホーちゃんのトランペットに負けじと薫子ちゃんがカデンツアを奏でる。曲はフィナーレに向けて音とリズムが弾けていく。


 そして最後はティエンフェイ全員で歌った。


「私達がまた歌う時 We happy sing…

 私達の中のあの子も歌う

 あの子と歌った最良の時

 あの子と笑った最良の気持ち

 きっと未来に思い出すよFinest hour」


 最後に中谷ちゅうやちゃんとブラス・フリート&コメット・ストリングスのドラマーがドラムセットが乱れ打ちする中でみんなが思いの丈を込めて楽器を鳴らした。私が最後の音の切って止める合図を出すと同時に演奏を終えた。



 一瞬息を止めたかのような静粛の後、観客席からは盛大な拍手が沸き起こった。オケの人達も足を踏み鳴らして「拍手」をしてくれていた。


 ティエンフェイとブラス・フリート&コメット・ストリングスのメンバーが立ち上がり観客の皆さんに挨拶、盛大な拍手で沸いた。またその後オケの人達も起立して挨拶、こちらも観客は盛大な拍手を送ってくれていた。こうしてシネマ・コンサートは終了した。


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