2020年1月下旬(1)
古城ミフユ
夜、女子学生寮の自室で寝巻き代わりの大学トレーナーに着替えてデスクランプをつけて翌日の勉強をしているとドアがノックされた。
「はーい。開いてますよ」
と言うとドアがいきなり大きく開かれた。そこには1回上の北見朱理先輩と同級生の中谷皆美、西田摩耶、比嘉ふみよの四人が立っていた。みんなも私と同様にトレーナー姿だった。
「折り入って話があるんだけど、ここじゃなんだから食堂に来てくれない?コーヒーを奢るからさあ」
中谷さんが代表して言ってきた。すかさずその飲み物はどの程度のグレードを想定しているか聞いてみた。
「本物?」
すぐ答えが帰ってこない。あー、中谷さん。インスタントコーヒーを考えていたよね。そう思わせる間の後で清水の舞台から落ちて骨折する事にしたらしい。
「い、いいよ。レギュラーコーヒー奢るから」
私はトレーナー姿のまま部屋を出て一階の食堂へと一緒に降りた。
食堂の一角に寮生が自主管理している区画があって簡単な自炊や飲み物を作れる事が出来た。コーヒーや紅茶も置いてあって使った分の金額を備え付けの代金収納用の貯金箱に入れたらいいようになっていた。
中谷さんが北見先輩や西田さん、比嘉さんをつついて小銭を集めると「食堂管理委員会」と書かれた貯金箱にお金を入れてコーヒーサーバーの上にドリッパーとペーパーフィルターをセットしてたっぷりコーヒー豆の粉を入れた。
「全部中谷さんたち持ちでは悪いから私が淹れるよ」
そう声を掛けた。
「じゃあ古城さん、よろしく」
中谷さんはあっさりと後の工程を私に譲ってくれた。コーヒーへの執念が強いお母さんに似てしまったようで下手な淹れ方されるなら自分でやった方がいいやと思うようになってしまった。まさかこんな所が似るとはねえと自分でも呆れる。
お湯を少しドリッパーに入れて蒸らすと聞いた。
「で、一体どういう話なの?」