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私達の最良の時/私達は幸いなる少数  作者: MV E.Satow maru
第3章 私達は幸いなる少数
62/79

2021年9月(2)

古城こじょうミフユ


 14日金曜日にシネマ・コンサートの開催が発表された。

私達はビデオチャットで琴乃さんから事前に公演概要について説明を受けた。智絵美ちえみちゃんは東京にいたのでスマフォで参加していた。


「神戸の会場は三ノ宮にあるコンサートホールに決まったから。12月20日日曜日で確定。このコンサートの最終公演になる。他に東京、札幌、仙台、名古屋、広島、福岡で11月から順次公演をしますが、これらは劇中の音楽はオーケストラのライブ演奏のみにしてます」


 神戸だけはティエンフェイ、ブラス・フリート&コメット・ストリングスが参加してライブで歌も披露する予定である事はこれまでの打ち合わせで聞いてはいた。


 朱里しゅり先輩が代表で質問した。


「琴乃さん、他の地区での公演の歌はどうするんです?」

「神戸以外では、歌は録音音源を流します」

「それでいいんですか?」

「他の会場だってクラシック専用ホールでオケの生の音を聞いてもらったりとか特徴は出しているのよ。映画音源用のPAもいいもの入れてもらっているし。複数の公演聞いても楽しめるようにそれぞれで聴きどころは作るようにしている。神戸は貴方達の本拠だから敢えて歌の披露場所に選んだ。東京はブラス・フリートとコメット・ストリングスのインストを映画と別枠でやって貰う予定」


 私達の出演が神戸だけになったのは、私達大学生バンドの学業上の都合と招待したい人達がいるからというプロデューサーの琴乃さんの判断だった。

 こういう企画になっているのは琴乃さんが無理を押し通してくれたからじゃないかという気がした。


「琴乃さん、他の制作スタッフからクレームとか出てませんか。大丈夫ですか?」

「あ、それは問題ないから。本当はもっと貴方達に来て欲しいけど学業影響しそうだし、それはしないっていうのは貴方達を起用すると決めた時に取り決めた原則だから。それは他のスタッフも知ってるし理解してくれているから気にしないで。でもその分、神戸公演はティエンフェイの100%、願わくば100%を超える力を出してほしいな」

『はい』


これにはみんな揃って答えた。ティエンフェイの場合、朱里しゅり先輩が航海実習で時期によっては練習日程も取りにくい事も影響していたので大変ありがたい配慮だった。そしてたった1日1回の公演のためだけにティエンフェイに機会を与えようとしてくれている琴乃さんの期待に応えたいと思った。


 神戸公演での劇伴音楽・劇中音楽の演奏曲は以下の通りになった。


OP「Strand,Thread,Shuttle」(inst.)

作曲:琴乃/編曲:大井秀和

演奏:ブラス・フリート&コメット・ストリングス


B Part 始まり

「Casual encounter」

作詞・作曲:琴乃

「Finest hour in my life」 Maya Original Ver.

作詞・作曲:西田摩耶/編曲:比嘉ふみよ

Vo.&Gt.:茶屋智絵美ちゃやちえみ/演奏:ティエンフェイ


C Part 絡まる糸

「Yarn of doom」

作詞・作曲:琴乃

「Finest hour in my life」Chise&Symphonic Ver.

作詞・作曲:西田摩耶/編曲:比嘉ふみよ・大井秀和

Vo.:チセ(ミフユ)/演奏:ブラスフリート&コメット・ストリングス


G Part Finest hour(Epilogue)

「Finest hour in my life」Maya&Chise Symphonic Ver.

作詞・作曲:西田摩耶/編曲:比嘉ふみよ・大井秀和

Vo.&Gt.:摩耶まーや/Vo.:チセ(ミフユ)

演奏:ティエンフェイ、ブラス・フリート&コメット・ストリングス(録音)


Extra Part

「Finest hour in my life Trumpet Solo」

作曲:西田摩耶

Tr・編曲:ホーレイシア・コリングウッド


「Finest hour in my life」Symphonic Rock Ver.

作曲:西田摩耶/編曲:比嘉ふみよ・大井秀和


<ティエンフェイ新曲>

作詞:中谷皆美/作曲:比嘉ふみよ/編曲:大井秀和

Vo.:チセ(ミフユ)

Vo.&Gt.:茶屋智絵美ちゃやちえみ

演奏:ティエンフェイ、ブラスフリート&コメット・ストリングス


 エクストラパートは映画上映後に演奏する予定になっていて、ここでホーちゃんのトランペットによる摩耶まーやへの追悼演奏と「Finest hour」のダブル・ヴォーカル版、中谷ちゅうやちゃんが作詞する新曲を演奏する予定になっていた。


 そして作詞で手を挙げた中谷ちゅうやちゃんはこの作詞を始めてから学校や寮の食堂でノートPCやメモ帳を前によく唸っていた。


「うーん。ここは5文字必要だから……単語何がいいかなあ。あいつよく歌の詞スラスラ書いてたよなあ。けどさ、実はさ、あいつさ、……ええい、ここはこうするか」


そんな独り言をよく言っていた。


 寮の食堂で唸る中谷ちゅうやちゃん。邪魔しちゃ悪いので離れた席でふーちゃんとコーヒーを飲んでいた。ふーちゃんはああいう中谷ちゅうやちゃんを見て微笑んでいた。


中谷ちゅうやちゃん、難航しているみたいねえ」

「いや、必ずしもそうでもないかな。私や琴乃さんが物足りないってやり直させてるんだけど、言葉はいくらでも出てくるみたいだから。作詞の才能もありそう」

「へえ」

摩耶まーやは初めからこれしかないみたいな事を出してきたけど、そうスラスラ書けていた訳じゃなくて絞り込んで選んでいた感じはする。中谷ちゅうやちゃんはともかく語呂合わせじゃあるまいし言葉が湧き出すぎてベストじゃない感じがあって、その整理が私と琴乃さんの仕事になってる」

「面白いね」

「ほんと、あの子だけは良く分かんない所あるね」


 私はもう一杯コーヒーを淹れると唸っている中谷ちゅうやちゃんの側に置いた。


「あ、冬ちゃん」

「差し入れ。ホンモノだから」

「ありがとう!」


中谷ちゅうやちゃんは美味しそうにコーヒーを飲んだ。私は手を振って離れると彼女は再びノートパソコンに向き合って沈思黙考に入ったのが見えた。

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