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2021年7月(5)
中谷皆美
ティエンフェイはあの日に活動を停止した。
何故か私はドラムの練習だけは続けていた。私のドラムの練習は単なる時間つぶし、精神修養の面もある。スティックを持つのを止めたら息が出来なくなる。スティックのリズムは私の呼吸と同じなのだ。
そんなきっかけをくれたのはあいつだった。あいつが「ねえ。中谷ちゃん。ギターやりたいけどドラムかベースやらない?」と言って来なかったら今の私なんて存在しないだろう。
私にとってドラムは呼吸と同じだ。だからといって人にそれを聞いてもらう必要は必ずしもない。だから寮の部屋でスティックだけ叩き、軽音学部のスタジオでたまに音を出せばそれで充足する。
映画は幸いヒットしているらしい。
私達はまだ誰も映画を観ていない。いつか観なきゃいけない事は分かってる。その覚悟がまだない。




