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私達の最良の時/私達は幸いなる少数  作者: MV E.Satow maru
第2章 千切れる糸
51/79

2021年7月(1)

古城こじょうミフユ


 映画「Sync.Thread」は予定通り24日金曜日に封切られた。仮題「Strand Thread」からこちらに変更されていた。


 私達は誰も観に行ってない。


 摩耶まーやが交通事故で亡くなった事を受けて新山監督とプロデューサー、琴乃さんは摩耶のご両親と会って摩耶まーやの音楽を取り下げられるか意向を確認していた。

 ご両親からは彼女の音楽が世に知られるのであれば、是非そのまま使って欲しいと伝えられていた。

 私達もその点は全く異論はなかった。ただティエンフェイの活動は休止しているので舞台挨拶などへの協力は申し訳ないなと思いつつ辞退させてもらっていた。


 幸い映画は思った以上、というか想像もしないようなヒットをしつつあった。大学でも映画の評判はとても良い。


 ホーちゃんとはメッセやビデオチャットでたまに話はしていた。ブラス・フリートやコメット・ストリングスは舞台挨拶や演奏会で忙しくしているらしいけど、私達の話は大抵音楽以外のたわいない話だった。


「……ってね。光の奴がこの映画は面白い、勉強になるから見ておけって言うのよね。そういうの冬ちゃんは詳しい?」

「詳しくない。海外ミステリードラマや映画は妹が好きだからある程度知ってるけど」

「シャーロックとか言わないでよ」

「シャーロックもいいよねえって妹は言ってるけど、ちゃんとしたジェレミー・ブレッド版も見るべきって合わせて言われる。あの子、どこかでブレッド版見せられてDVD BOXをお父さんにねだって誕生日プレゼントで買ってもらってるし」

「その様子じゃ妹さんは映画版は却下しそうねえ」

「あ、それはもうとっくに断言されてる。私は嫌というほどじゃないけど」

「あの映画の音楽はいいよねえ。今をときめく映画音楽家だし」

「音楽は分かんないや」

「……そっか。ごめんね」

「ううん。こっちこそごめん」


 こんな会話に終始して「じゃあね」と言いあってビデオチャットやメッセが終わる。きっと取り付く島もないと思われているだろう。


 私達は完成した映画を観に行っていない。


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