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私達の最良の時/私達は幸いなる少数  作者: MV E.Satow maru
第1章 私達の最良の時
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2020年1月(4) ティエンフェイ・ミーティング

 次のティエンフェイの合奏練習。中谷皆美なかたにみなみはスマフォを取りだしてスピーカーにつないだ。


「この間、メッセした件なんだけど。この子はどうかな?」


 そう言って中谷皆美なかたにみなみはスマフォの再生ボタンを押した。

スピーカーからはスマフォのテキトーな録音のせいでくぐもった音で『Around the World』の音楽が鳴り、そこにハスキーヴォイスの歌声が合わさってきた。

「道なき未知を辿っていく♪」そんな歌詞が歌われていた。


 比嘉ひがふみよが眉を上げながら言った。


「へー。これが中谷ちゅうやちゃんのお気に入りの子の歌か」

「どうよ。プロデューサー」

「ええんちゃう。素直な声はうちらに合わない。古城さんだったっけ。ハスキーヴォイスは面白いと思うよ」


 西田摩耶にしだまやも乗ってきた。


「これなら私が復帰してダブル・ヴォーカルとかいろいろ出来そう」

「あー。続けてくれたらね。音楽経験ないそうだから勧誘からして難関。簡単じゃないと思う」


 北見朱里きたみあかりが何か気付いた。


「この子、制服の規定変えさせた子だったっけ?」

「そうです。あの子です」


 古城ミフユの名前は学内では入学早々から知られていた。入学式前に「男子向け、女子向けという規定が必要なのか」と問い合わせたのだ。そして大学側は時代だと思っていたのかあっさりと「そういう日がくるだろうとちょうど教授会で規則改正を決めたから。制服は男性・女性どちらでも着用可だから心配するな」というふうに回答した、らしい。

 おかげで今の2回生の代から女子学生はスラックスを選択する子が半数ほど出た。当然古城さんはその筆頭だった。


 中谷皆美なかたにみなみは言った。


「古城さんの問題は音痴だって言ってる事なのよね」

「えー。『Around the World』上手いじゃん」


 疑いの声を上げたのは比嘉ふみよだった。中谷皆美なかたにみなみが言った。


「相当練習したからって言ってた。この曲なのかアニメ映画の方なのか分からないけど好きらしくて必死で取り組んだらしいわ」


 比嘉ひがふみよは納得した。


「なら練習は耐えられるって事ね。ちゃんとしたモニタ・システムで練習したらなんとかなるか。5月末までまだ時間はあるし」


 いやあ、うちのプロデューサーも楽天的だわ。半年切っている状況なんだけど「時間はまだある」と言いくるめてなんとかなると思わせてるねえ、なんて事を中谷皆美なかたにみなみは考えていた。ふーちゃんが私と同じ判断ならいけるな、うん。


「曲だけどさ、適性見て場合によっては編曲いるね。この子勧誘するなら『Around the World』もティエンフェイバンドバージョンに編曲しなきゃいけないし。このあたりは摩耶まーや、よろしく」


 中谷皆美なかたにみなみは曲作りはノータッチだった。リズム担当としてパートの文句は言うけどギターとかは作曲担当とその楽器担当がやり合ってねってところ。

西田摩耶にしだまやが「えー」と叫んだ


「うわっ、中谷ちゅうやちゃん、そこ丸投げ?」

「だって、あんたの喉が治ればそりゃそれでいいけどさ。今は喉は無理したらダメだよ。その代わり作曲で無理してね♡」


 西田摩耶にしだまやは呆れた。無茶苦茶な奴だと知っていたけど、全く以て酷い。ちっとは私をいたわれよ、中谷ちゅうや


 北見朱里きたみあかり中谷なかたにさんの方を見て怪訝そうに言った。


「なんか古城さんが引き受ける前提の話ししているけど、さっきあんたが難しいって言ったよね?何か当てはあるの?」


 中谷皆美なかたにみなみは底抜けの楽天家だった。


「当てならないよ。当たって碎けたって言うじゃん」


 比嘉ひがふみよ、西田摩耶にしだまや北見朱里きたみあかりはまた呆れた。こいつ、テキトーだって知ってたけど、ここまで無鉄砲だったとは。それに「砕けろだろうが」とさらに呆れた。


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