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私達の最良の時/私達は幸いなる少数  作者: MV E.Satow maru
第2章 千切れる糸
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2021年3月20日土曜日 朝

古城こじょうミフユ


 琴乃さんの神戸ライブがある週末がやって来た。会場は学校からも比較的近い地元の公会堂大ホールだった。地元企業家が戦前に寄付したものだそうで耐震工事を経て今も使われている歴史のある場所だった。


 琴乃さんとのビデオミーティングでは「お客様にはこじんまりした会場で音の圧力を体感して欲しかったから」という選定との事。東京だとホーちゃんたちを呼んだりと琴乃さんは若手演奏家を招いていて、神戸ではティエンフェイが招待されたのだった。


 土曜日の朝、寮の駐車場で借りてきたレンタカーのワゴンにコントラバスやキーボードなどの楽器、衣装類を載せると私が運転して摩耶まーやと一緒に会場へ向かった。朱里しゅり先輩、ふーちゃん、中谷ちゅうやちゃんは阪神電車で移動して会場で合流予定だった。


「じゃあ、先に行ってるからね」


 そういうと3人に見送られて私は車を発車させた。


 公民館には20分もかからずに着いた。荷下ろしはみんなが来てからやる事になっていたので、脇道の路肩でハザードランプを点滅させて車を停めた。摩耶まーやにふと頭に過ぎった事を聞いてみた。


摩耶まーやは運転免許はまだ取ってないんだったっけ?」


濃い藍色のTシャツにジーパン姿の彼女は窓の外を眺めていた。


「うん。そういうタイミングがなかったんだ。取らないと不味いなあって思ってるけど去年の夏は録音で時間取れなかったしねえ。先の就職活動考えたらまずいなって思ってる。冬ちゃんはいつ取ったの?」


私は窓から古く歴史を感じさせる公会堂の建物を見上げながら言った。


「私は1回生の時の夏休み。お祖母ちゃん、ずっと運転教習所に勤めていて、安くしてもらえるから取っておきなさいって言われて呉に帰っていた時に」

「ふーん。合宿とかあるならそこで取ってもいいなあ」

「合宿はないけど安くしてもらえると思うし、なんなら下宿紹介してあげても良いけど、ただそういう日程取れないよね?」


 映画の音楽製作担当のレコード会社からは夏の封切り時の舞台挨拶やミニコンサートの日程調整の連絡は来ていた。ティエンフェイとしても学業に問題ない範囲で協力していこうという事で受けていた。


「取れないよねえ。これだけは弱ったなあって感じかな。車で芦有ドライブウェイを走るとか冬ちゃん見ていたらやってみたいなあって思ったし」


そういうと摩耶まーやはクスッと笑った。どこかでスマフォのバイブ音が低く鳴った。摩耶まーやがスマフォの画面を一瞥した。


「みんな、着いたって。搬入口に車移動させてよろしくてよ」

「何、その女主人ミストレス風。ジーパン姿でそれって似合わないよ!」


 私がそう言うと二人で笑った。私はハザードランプを消して右ウィンカーを出すとゆっくり車を発進させた。


 荷下ろし場に車を付けると、中谷ちゅうやちゃん達が来ていたので、全員で楽器類を降ろした。楽屋に入るとコンサートの搬入関係を担当している人が来られたので楽器機材を預けた。


 摩耶まーやは右手の拳で左手の平をポンと叩いた。


「リハまで時間はあるなあ。ちょっと出てくるね。忘れ物しちゃったし」


ふーちゃんが聞いた。


「ん?どこ行くの?」

「実家。電車で2駅ほどだから。忘れ物しちゃって。今日のコンサートまでに取りに帰ろうと思っていたけどタイミングなかったから。今から取りに行ってくる」

「あいよ。じゃあ、時間までに帰って来なよ」

「了解。12時30分までには戻るから」


そういうと摩耶まーやは楽屋を出て行った。

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