呼び方と甘え方
朝麦 遊です。
叶くんは私の好みをもろに受けた子です。
頑張れ叶くん。
新入生が校門をくぐり、まずすることと言えば
大体の人が「自分のクラスを確認する」だろう。
そして、柊月、叶もそうする派なので生徒の群がるクラス発表の張り紙の元へ歩き始める。
「ね〜叶。私達クラス同じかな〜?」
「さぁな。まぁ小学校も中学校も全部同じだったし可能性はあるんじゃない?」
その通り。仕組まれているんじゃないかと疑わざるおえない程に同じクラスになるのだ。
「また同じになったら多分運命に仕組まれてるね。」
「そーだな。」
相変わらず叶は素っ気ない。私は少しむくれながら自分のクラスを確認する。
私は出席番号で言うとちょうど真ん中あたりのため、見つけにくいのが難点で今のようにたくさんの人で後ろからしか見ることが出来ないとなると本当に困難になる。
それは叶も同じで下の方にあるので何とか見える位置に行こうと2人で人の波に抗ってみる。
が、私はあっけなく負けてしまう。人の肘などが当たり倒れそうになる所を叶が支えてくれる。
そして一気に私をクラス表の方へ押し、無理矢理前に行く。
「ったぁ…何すんのよ!!」
「うるせー逆に俺のおかげで前に来れたんだ感謝してほしいんだけど」
「はいはい。ありがとうございました。──で?アンタ、何組だったの。」
「ん。俺C組だけど。お前は?」
「まだ見つかんない。叶も探してよ」
「は〜一回眼科行けよお前。自分の名前も見つけられないのかよ」
「ほんと一言多い!……白谷…菅本…このクラスじゃない」A組は違う…B組は違う…
「ん。見つけたぞ。」先に私の名前を見つけたのは叶だった。
「えっ!嘘!どこどこ?!」
叶が指さしたのは
「…え?c組…」
「まーた、一緒みたいだな俺たち」
今日初めて叶の笑顔を見た。叶の笑顔には嬉しさと安心という感情が詰め込まれているように感じられた。だが、
「何笑ってんの。私達いつになったらクラス離れるのよ」とは言いつつ多分一番嬉しくて、安心したのは私の方だと思う。
「まぁこれで学校で迷うことは無くなったから喜べよ。」
「まぁ今はそう捉えてあげる。」私も笑顔で返し脱靴場と思われる場所へ駆け出す。
「あ!おい待てって!」いきなりかけ出す私を見て慌てた様子の叶が追いかけてくる
「お前脱靴場の場所分かんのかよ」
「多分こっちよ!勘!」
はぁ〜 という表情に変わった叶を見て自然に笑顔がこぼれる。
「まぁ合ってるんだけどな。柊月にしては珍しい」
「合ってるの?!やった!」と少し喜んだがすぐ動きを止め先程の叶の言葉を思い出す。
「え…さっき…」
叶の方を見ればニヤニヤしてこちらを180cmの世界から見下ろしている
「何赤くなってるんスか?」
「さっき私のこと名前で…」
叶はいつも「お前」とか「オイ」とかで、滅多に私を名前で呼ばない。
「前は普通に呼んでくれてたのに最近呼んでくれないから私の名前忘れられたのかと思ってた」
ちょっと拗ねた私は結局c組の教室に着くまで一言も会話せず歩いた。
「オイ、とりあえず荷物置いたら講堂集合だぞ」
割と席が近かったのが嬉しいと思ったり嫌だと思ったり複雑だが今は圧倒的に嫌が勝っている。
「あ〜もう。柊月講堂行くぞ…これでいいんだろ?」と面倒くさそうに差し出す叶の手に
「今度から名前で呼んでよね。」
とわがままを言いながら答える。
────。
そして始まる。入学式。
まだ入学式もやってないのに3話です。
まとめるの下手です
「柊月」とあんまり出てこないので作者本人が名前を忘れそうですごめんね柊月ちゃん。