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何でも屋。  作者: 燦々sunsun3さん
2/2

異世界から戻ってきたわん。

「次は何が出るのかしら」

 まるでガチャガチャでもしているかのような言い方で季蒔が言う。

「おいおい、これは遊びではないんだぞ。でも何が出るんだろう」

 セガールも説教っぽく言いながらもどこかわくわく感を隠しきれない。

 俺もその一人で次のアイテムがどんなアイテムなのか、誰が装備するのかを妄想して少しだけ心が躍った。チータイが俺達の為に時間稼ぎをしてくれているというのに。

 デブゴンは鬼神速と化したチータイの速さによって、押され始めているのが状況判断から確認出来た。いくらチータイが疲れ素早さが衰えていてもそれをアイテム装備効果で補っているので今の所はぎりで大丈夫だと思うだけど、この先はどうなるのか戦況を読むことは出来ない。

 早く、早く次のアイテムを生み出してくれ。そんな願いが心の奥底から湧き上がってくる。

「はあっ、はあっ。産まれたわ」

 宝ちゃんが言った。よっ! 待ってました。

 宝箱を開けると、そこには二つアイテムが。

「どうやら双子のようだな。良く頑張った。宝ちゃん」

 旦那の宝王が言う。

 アイテムを宝ちゃんの中から二つ取り出す。それは腕に付ける腕輪だった。そしてそれを鑑定するのは盗賊のセガールだ。

「うおおっ、まじかよ。これもS級のアイテムの双子の腕輪じゃんか」

 セガールが驚きと興奮を隠しきれないで言った。

 セガールの説明によると、別々の人が腕輪をそれぞれ嵌めると、二人は腕輪を外すまで合体出来ると言う、合体アイテムだった。これに興奮したのが、今は骸骨に一時的に魂をうんこから移されている雲母ちゃんだった。

「それがあれば、それがあれば俺のうんこの体とこの骸骨の体が一体になれる」

 しかし、魂は今はうんこの方にないので、それは叶わぬ願いと分かり雲母ちゃんはがっかりした。ここで武魔が提言した。

「俺は勇者見習いだから合体は出来ない。季蒔は女だし、セガールは盗賊として特化していて、鑑定も出来るから、合体して弊害が出たら困る。だからつまり楓、お前がその合体アイテムを使え」

「えっ、俺?」

 まさかの白羽の矢が立ち、俺は困惑した。でも合体する相手がいないじゃん。幽霊のスケさんはそもそも腕輪を付けることが出来ないし。そしたら、不死鳥のフェミXがこちらをちらっと見た。こっちみるな!

「私で良かったら」

 よかないよ。

 でも成り行きで、俺はフェミXと合体することにした。

「フォオオオオオオ!!!」

 合体した時の興奮はまるで異性のパンツを被った時のような昂揚感だった。被ったことないけど。

 そして俺は楓Xとなり、不死鳥楓となった。

  不死鳥と融合したことにより、使える特技が増え、俺は全員を回復させる特技を使うことが出来るようになった。

「なによそれ。私の魔法使いとしての立場ないじゃない」と少し季蒔はふくれていたがそれでも、これで常に回復し続けるデブゴンに対して不利はなくなったわけだ。

 まずは近くにいた全員と、そして次にデブゴンと直接闘っているチータイを完全回復させた。

 回復させたことにより、体力満タン時でデブゴンと互角のチータイは装備品の布の素早さが加わっているので、これでデブゴンよりも完全に上に回った。

「ありがとうでござる」

 チータイの声が聞こえ、そこからはデブゴンが一方的にやられるばかりの光景が目立ってきた。

 そして武魔の父親はチータイの噛み切り技で、ハサミで紙を切るように綺麗にデブゴンの背中から武魔の父親を切り取って救出した。

「と、父さん」

 武魔が今度は父親と抱き合う。これでデブゴンに対して思いっきりチータイは攻撃出来るはずだ。

「ぶっぶっ。いくら攻撃しても俺の精神力がやられなければ死ぬことはないぶー。なぜならば俺の心に魔王様の魔法がかかっているから、心が折れない限り、仮に肉体が消滅してもまた復活するぶー」

 またとんでもないことを言いやがった。これはもうどうしようもない。と思っていたら、雲母ちゃんが俺達にこそこそ話をした。

「あの作戦をしてくれ」

 あの作戦とは雲母ちゃんを仲間にして少しした時に、話し合った作戦だった。

「いいのか。それをしたらお前の帰る肉体はなくなってしまうんだぞ」

「いいんだ」

 今は骸骨に魂を移されている雲母ちゃんが言った。

 その作戦とは……。

「おい、お前、俺を覚えているか!」

 雲母ちゃんがデブゴンに対して声を張り上げた。

「ああん? 何だお前はぶー」

「俺はこの塔でお前に産み落とされたうんこだ。今はわけあって骸骨に魂を移されている。お前の魔力が中途半端に強いからうんこにまで魂が宿るんだ。お前は俺の苦しみを考えたことがあるのか? たい肥にされるでもなく、メタンガスで利用されるでもなく、ただ誰にも見られる、気づかれることなく、塔にあるうんこの気持ちを。これは誰も知らない所で咲いている花なんか比べ物にならないほど、哀しい現実だったということを」

「ああ、お前あのうんこか。知ってるも何もだって俺、わざとお前のこと魂宿してうんことして産んだんだよ」

「な、何だと? な、何故そんなことを……」

「ただの暇つぶし? それにしてもまさかうんこが骸骨に魂を移されて俺の復讐に来るとはな……いやはや人生と言うのは分からないものだな」

「人間じゃないお前が人生を語るな!」

 セガールが言う。

「ぶっぶ。何とでも言うがいいぶー。結局勝つのは俺ぶーよ」

 とそこで、骸骨になった雲母ちゃんが袋の中から取り出したのは……。それは自分の元いた肉体。つまり今はただのうんこそのものだった。

「これでも喰らえーー!!」

 チータイにやられ弱り切っているデブゴンの口の中に雲母ちゃんは自分の元肉体を放り込んだ。

「ヴォオオオオエエエ!!」

 断末魔の叫び声を上げるデブゴン。今がチャンスだ。

「行け! 精神が折れている今がチャンスだチータイ!」

「ガッテンだい!」

 江戸っ子のようにチータイは言って、デブゴンを攻撃した。

 その破壊力は凄まじく、空間が震え、天井から猛毒の破片が降ってきて、デブゴンに突き刺さった。デブゴンに猛毒は効かないかもしれないが、それでも毒以外の肉体的な直接的ダメージを与えることが出来るだろう。

 予想通り、デブゴンはチータイの猛攻と、天井の破片の波状攻撃で柔らかなぷよ体が一瞬固くなり、その後、その固くなった肉体にひびが入り、粉となって砕け散った。そしてその粉もその後、完全に消えた。

 デブゴンが死んだことにより、天井の表面上の破片ではなく、天井そのものに穴が開いた。

「何これ、綺麗」

 澄んだ青空がそこには何もさえぎることなくあり、それはつまりダンジョンを攻略したことの証明でもあった。

「ふーん。やっぱデブゴンがボスだったんだ。ボスをやっつけたら塔がこういう風になるわけね」

 塔の開いた穴の横には輝く梯子が穴横から降りて来て、そこを伝えば塔の外、つまりこのダンジョンから出られるというわけだった。

「皆ありがとう、皆のおかげで憎きデブゴンを、そしてこの塔を攻略することが出来た。心から礼を言う」

 武魔がお礼の言葉を言った。

「例には及ばねえよ」

 とセガールが言ったのを皮切りに、皆の口からこちらこそありがとうの声が聞こえてくる。

「私も宝王と結婚出来たし」

「わしも宝ちゃんと」

「俺もうんこから骸骨に転生できた」

「俺も仲間になれた」

 とスケさん。

「拙者もこの塔でさらに強くなれた」

 とチータイ。

 そして腕輪を外した俺からフェミXが分離し、「私も助けてくれてありがとう」と言った。

 季蒔も恥ずかしそうに礼を言って、俺も言った。

 そして、塔の宝の取り忘れがないか、よく考え、なかったので、俺達は外へと出ることにした。

 塔の上から下界を見下ろす。

 国立公園の人が豆粒のように見え、駐車場の車もまるでおもちゃだ。

 でも、塔を攻略してもどうやったらここから降りられるのだろうか。と思っていたら皆が光に包まれて、塔の受付入口付近までテレポートで運ばれた。

 光が皆から消えると、受付の女が慌てた顔をして近寄ってきた。

「だ、ダンジョンを攻略したのですか? 信じられない。生存率0%のダンジョンを。これから国に報告するのでそこで待機していてください。マスゴミが駆けつけますから」

 マスゴミって言ったよこの女。

 ものの数分してマスコミが長蛇の列を作りインタビューを俺達にしにきた。

 俺達は武魔の両親や仲間にしたモンスターのことをあまり言わないように上手くかわしながら言った。あまり目立たせたく、そして目立ちたくなかったからだ。

 インタビュアーが去ると、俺達にカードが一枚配られた。

「これはただいま国から特例で支給されたライセンスカードです。このダンジョンは国の指定のダンジョンなので、ライセンスカードを使えば今後どの有料ダンジョンにも無料で入ることが出来ます。良かったですね」

「それはすごいな」

「それと、クリアした証として、渡した駕籠とか袋はあなた達にあげますね」

「やったぜ」

 というわけでダンジョンの地下はクリアしなかったけど、塔を一応初めて攻略した報酬として色々と貰えた。

  そして父親と母親を助けたことにより、武魔のモチベがその後急降下した。

「別に魔王倒さなくてもよくねえ?」

「ちょっと! 何言っているのよ。武魔!」

 季蒔が少し焦る。

「そうだぞ。気持ちは分からなくはないが、魔王を倒すことは勇者パーティーにとって使命と言ってもいいと思うぞ。勇者として生きて行くと決意した以上、それを投げ出すのは情けないぞ」

「まあ、確かに。しょうがないから魔王を倒すまでは旅を続けるとするか」

 気力をなくした武魔に母親と父親が語り始めた。

「なあ、武魔。俺とお母さんを助けてくれてありがとう」と父親。

「そんなこと当然だよ。父親だろ」

「私からも礼を言うよ。武魔」と母親。

「だから当たり前のことをしたまでだよ。これからは俺はもっと親孝行をしなくてはいけないんだよ」

 と武魔が言った所で、父親と母親はかぶりをふった。

「ねえ。実は武魔に隠していたことがあるんだけど」

「何だい。母さん」

「実は私とお父さんは魔族なんだよ」

「はいっ?」

「そして、私とお父さんは魔王の手下なんだよね。ぶっちゃけ」

「またまた、ご冗談を」

「うん。それは本当の話だ。そしてデブゴンに囚われていたのも、魔王様の意志で何だよね。そしてその訳とは、お前が一番ショックを受ける精神攻撃を与えることなんだよね。そして更に魔王様に対する憎しみを募らせて、そこを美味しく頂こうと魔王様は考えていたんだよ」

「また、そんな嘘を。だって俺、勇者の血を引き継ぐ男だよ。だから父さんは元勇者で、母さんは賢者でしょ。たぶん。俺の予想によると」

「それは間違っているよ。俺は魔王の右腕として働いていて、母さんは魔王の左腕として働いていたんだ。で、どっちも悪で悪と悪が合わさって、マイナスとマイナスでプラスの勇者である武魔。お前が生まれたんだ」

「何それ。悪と悪が合わさったら最悪になるんじゃないのかよ」

「いやあ、どうしてこうなったのか。まあでも俺と母さんはお前にショックを与えると言う、命令を遂行したから、これから魔王様の元に帰るね。じゃあ、武魔。今度会う時は敵として会おう」

 そう言って、武魔の母さんと父さんは、背中から羽根をゴキュゴキュとその場で肉体改造をして生やし、空を飛んでどこかへと行ってしまった。その時、空から魔王城への行き方が書かれている地図が降ってきた。

 そしてそういうわけで、やはりどうしても魔王を倒さなくてはいけないということが皆分かった。

 しかし、魔王の強さというのは未知数で姿かたちすら文献にでさえ、残っていない。実体があるのかないのか、それすらも分からなかった。

 しかし魔王城の地図があるということは存在しているとうのは確定していた。武魔の両親が嘘をついていなければ……だが。というかあの両親もしかして魔王が存在していることすらも模造しているのかもしれない、なんてちょっと、いや結構真剣に考えた。魔王は存在していませんでした。実はもっと武魔に精神的ダメージを与える為についた嘘でした。実は私達が魔王でした、とかそんなオチはご勘弁だ。だが、もし本当にいや、この世界にモンスターがはびこっていること自体、魔王がいることの証明にならないだろうか。なので、魔王が実際にいると仮定して行動を進めるのは当然のことだ。だがデブゴンの強さは半端なかった。デブゴンは魔王の手下だというのに、あの強さ。そういえばデブゴンも魔王様と言っていたから魔王は確かに存在するのだろう。その時、ようやく確実に存在すると思った。そして魔王はデブゴンの遥か上に立つ存在だ。つまりもっと魔王は強い。チータイがいなければ、そして仲間が子作りで生み出したアイテムがなければ、いや他の仲間も誰一人かけていたとしても、俺達パーティーは確実に全滅させられていただろう。スケさんも雲母ちゃんに骸骨肉体を譲歩したし、雲母ちゃんも最後デブゴンにうんこを喰らわせなければ、デブゴンに精神的ダメージを与えることが出来なかった。そしてフェミXの毒除去と俺との融合による全パ回復特技も間違いなくなければ死んでいた。だからこのままでは魔王を倒すのは今でさえギリなのだから難しいかもしれない。そう思った俺は皆に提案することにした。

「なあ、もっとダンジョンを攻略しないか?」と。

 「ダンジョン攻略?」

「ああ、今のままでは魔王を倒すのはしんどいと思う」

 武魔と俺が会話をしていると、チータイが会話に入って来た。

「拙者もこのままではいけないと思う。魔王の手下ごときに手こずっているようではこの先は暗いでござる。だから楓の意見に賛成でダンジョンをどんどん攻略、あるいは修行をして強くなるべきだと思うでござる」

 パーティーの中で、ダントツの実力者のチータイが深刻そうに言うのだから、それは相当に深刻な状態なのかもしれない。

 そして話あった結果、ある一つの考えが浮かんだ。

「俺達、別々に行動しないか?」

「別々って一体どういうことよ」

 季蒔が眉間に皺を寄せて言う。

 俺は説明する。

「うん。つまりだな、例えば俺とチータイと武魔はダンジョンを攻略組にして、セガールと季蒔は修行をして、盗賊や魔法使いとしての腕を磨く、そして宝ちゃん夫婦は子作りをしてアイテムを量産する。フェミXとスケさんと雲母ちゃんは行きたい所に行く、とまあそんな感じにな」

「なんでよ……私達パーティーじゃない」

 季蒔が少し哀しそうな顔をして言った。

「うん。でも常に一緒にいることで成長出来るとは限らないかもしれないだろう。場合によっちゃ成長が妨げられる可能性もある。いやその言い方は違うな。別々に行動した方が、早く成長できるかもしれないということが言いたかったんだ。今はまだ魔王は何も世界に対して行動を起こしているとは言えないかもしれないが、いつ突然魔王が世界を攻めてくるかもしれない。そんな今の状態じゃ、呑気にしている時間は俺達にはないんじゃないかと俺は言いたかったんだ」

「それは確かにそうだけど……。でも、でも何だか寂しいなあ」

「なあ、こう考えてみるんだ。イルカは寝るときは片方の脳だけ眠らせるらしい。溺れない為に。そして次にもう片方の脳を眠らせ、今度は寝ていた脳が起きているらしい。つまり片方ずつ寝るんだって」

「何が言いたいのよ」

「俺達もいつも一緒に行動するんじゃなくて、別々に行動してみて、そしてイルカの脳が両方ばっちり起きている時のように、俺達が合流して一緒になった時に俺達というイルカの脳がばっちり起きて組み合わさった時にすごい力が発揮できるとは思わないか?」

「ちょっと何言っているか分からないです」

「例え下手過ぎ」

「頭がおかしい」

「暗号解析班の要請を求む」

 自分でもよく分からない例えのまま皆に伝えたら、やはり自分がよく分かっていないのに、相手に分かるはずもなく、伝わらずに皆にひどく暴言を言われました。

 しかし俺の意図はどうやら皆に伝わったらしく、皆でそのことについて話し合われた。

「そうだな。楓の言うことももっともかもしれない」

 武魔が開口一番、そう言った。

「そうね。どうやら私達ここで別れる必要が今後の為に必要かもしれない」

 季蒔もどこか覚悟した様子で言った。

 セガールも無言で頷く。

「じゃあ、どういうパーティー分けにする?」

「うん。それなんだけど、さっき楓が提案した案で僕は良いと思う」

 武魔が言うと、皆が頷く。

 それについてはすぐに決まったので、後はスケさんと雲母ちゃんとフェミXと宝ちゃん達についてだ。

 振り分けについては俺と武魔とチータイはいくらチータイがいるとはいえ、ダンジョン攻略組なので、先ほどのダンジョンのように今後どんな強敵がいつ何時現れるか分からないので、俺達のメンバーには回復薬のフェミXとアイテムを作る為の宝ちゃん夫婦を入れることにした。そしてある種個人修行の季蒔とセガールに幽霊のスケさんとうんこ骸骨の雲母ちゃんが行動を共にすることになった。

「で、いつ合流する?」

 セガールが言う。

「そうだな」

 武魔がしばし考え、こう言った。

「30年後にまた会おう!!」

「長いわ!! 誰だか分からなくなるわ!! というか絆が薄れるわ! というか年を取りすぎて自分の星に戻ったら浦島太郎状態になるわ!」

 俺は突っ込んだ。

「というのは冗談で……」

 武魔が言い直した。

 おい武魔、そんな冗談を言う奴だったのかよ。

「まあ、せいぜい半年から一年後かな」

「そうだな。そのくらいならいいかもしれない」

 季蒔が頷く。

 そしてより細かく話し合った結果、ちょうど二年後の今日、今いるこの場所で合流することにした。

 というか、季蒔によるといつでも検索魔法でどこに誰がいるか調べることが出来るらしいので、そこまで心配することはなさそうだ。スマホ的なのもこの世界にはあるらしいけど、それはどうやら必要なさそうだ。

 というわけで僕達パーティーはここで二つに分かれ行動をすることにした。

 「二手に分かれてからもう一年半か……」

 俺はとあるS級のダンジョン内でなんとはなしに呟いた。

「そうだな。早いもんだよ。今頃、セガール、季蒔、それにスケさんや雲母ちゃんは何をしているのだろうな」

 武魔が言った。

 そう言われて俺はあいつらのことを回想する。

 たかが一年半、されど一年半。写真などを持っていない俺はもうあいつらの顔すらもぼんやりとしか思い出せない。薄情ものと言われてもそれは事実だから否定のしようがない。というか人間と言うのは忘れる生き物だからある意味しょうがないよね。

 俺達はあの後からこの世界に広がるダンジョンを片っ端から攻略してきた。とはいえ、一年半足らずじゃ25、6のダンジョンが限度だが、それでも俺達は一年半前と比べると比べ物にならないぐらい強くなったと言う自負がある。

 俺は正直、今の力は当時戦ったデブゴンを瞬殺出来るほどの力を獲得したと思っているし、武魔は完全に覚醒して勇者になった。チータイはいきなり成長期に入り、ミニチュアサイズの生き物から大人の虎ぐらいの大きさにまでなった。フェミXは新技をどんどん身につけたし、宝ちゃん夫婦はアイテム子作りで日夜子作りに励み、1000のアイテムを生み出した。その9割がS級アイテムで残りの1割がSS級アイテムだった。これも愛し合っている夫婦だからこそのことだ。そしてそのSS級アイテムは身につけたら普通の人間がレベル40ぐらいに匹敵するぐらいの力を獲得できるアイテムばかりなので、正直力がついた俺達が装備したらそれはもう反則級の強さでS級ダンジョンも無傷で攻略できるようになっていった。そしてその強さに胡坐をかいて、ここ最近ではちょっと自堕落な生活を送っているような気がする。そしてダンジョンの最上階に辿りついた。

 そこには魔王がいた。この世界を支配する魔王だった。へっ?

「よく来たな」

 魔王は重く沈むような低い声で言った。

「いや、ここに魔王がいただなんて」

「さあ、かかってくるがよい」

「いやいや、メンバーまだ揃っていないから、出直してきます」

「かかってこないならこちらから行くぞ!!」

 向かってきた魔王を俺達は瞬殺した。

 ここまで俺達強くなっていたとは……。

 魔王は死ぬ間際、最後の言葉を発した。

「その強さは反則だ。俺の代わりに魔王になってくれ」

 そして魔王は死んだ。

「もちろん断った」

 魔王が死んだ後、どんよりとした曇り空が晴れ渡り、ファンファーレが世界に鳴り響き、世界に平和が戻ってきた。モンスターはこの世から消えた。

 そして更に半年が経ち、メンバーが合流する日が訪れた。

「おいおい、お前達魔王倒しちまったのかよ」

 開口一番セガールポチが言った。

「す、すまん。攻略していたダンジョンの一つに偶然魔王が住んでいたんだ」

「まあ、別にいいけどよ。俺達大してして修行していなかったし。なあ季蒔」

「う、うん。そうね」

 季蒔はどこかもじもじしながらそう言った。季蒔の後ろに小さな人影が見えた。

「紹介するわね。この子、私とセガールポチの子なの」

 いやいや、怪しいとは思っていたけどお前等できていたのかよ。というか修行しないで子作りしていたのかよ。

「というわけだから、どっち道俺達お前等の力にはなれなかったわ」

 俺は呆れて物も言えなかった。

 と、そこに。

「チータ、チータタイガー!」

 殺気、そしてその殺気を感じ、攻撃を受け止めるチータイガー。

「よく私の攻撃を躱したわね。あなた。あら、あなたもチータイガーなの」

 そのチータイガーは言った。あ、このチータイガーには見覚えがある。この世界に来たばっかりの時に出会ったあのチータイガーにそっくりだ。

「あら、あなたたち。どこかで見たことあるわね。そうだわ。私の陰毛を抜き取ったあのパーティーね」

 やはりそうだったか。ということはつまり。

「お、お母さん?」

 チータイが言った。

「お母さんってどういうことなの? あなた」

 チータイガーがチータイに向かって言った。

「僕はね、お母さんの陰毛から複製魔法で作られたチータイガーなんだよ。名前はチータイ」

「あら、そうなの。じゃあ私の子供なのね。ふーん。結構可愛いじゃない。頑張るのよ。人生は辛いことも多いけど楽しいこともあるわよ。じゃあね。チータイガーは群れは作らないからこれで私はおさらばするわね」

 言って、チータイガーは風のように、いや風となって去って行った。

 その瞳にはうっすらと涙が滲んでいたのは見間違いだったのだろうか。

「僕、お母さんの言葉に従って群れは作らないチータイガーらしく、一人で生きるよ。でも、人間には危害を加えないから安心してね。武魔、そして楓、君達とのダンジョン攻略とても楽しかったよ。僕と君達が闘ったら、もしかしたら永遠に決着がつかないかもしれない。それぐらい君達は強くなったよ。上から目線でごめん。君達とはもう会うことはないと思うけどあったら、一度手合わせを願いたいな。もちろん真剣勝負さ。じゃあこれでね。チータ、チータタイガー」

 そう言って、チータイも風のように、否、風になって去って行った。

 そしてその時、空から声が聞こえた。

「私は魔王だ。今は殺されもういない。これは死ぬ直前に我がメッセージを作成した」

 何言ってんだこいつ。でも声の主は半年前にダンジョンで戦ったあの魔王の声に違いなかった。

 俺達は魔王の声に耳を傾けた。

「実は武魔、セガールポチ、季蒔、楓、お前等は俺が生み出した。お前等は我が魔王の一部だった。記憶こそないが、お前等は私の体の一部だった。そしてお前等四人が我に向かってきて、お前等を玉砕して、お前等は俺の体の一部だよーんって言って、遊ぶつもりだった。お前等を武魔以外、別々の星に送ったのも我だ。そして四人はようやく合流して、我を倒す旅路を始めた。だけど、武魔と楓が予想外に強くなりすぎて、産みの親である我を超えて、倒してしまった。これは予想外だった。だけど、我がいない今、お前等はもう自由だ。さあどこへでも好きに行くがよい。そして死んでも魔王である我の元に戻ることはないから安心せい。じゃあそういうことでお前等は兄弟みたいなもんだから、余生を仲良くね。骨肉の醜い争いとかはしないでね」

 そして声は途絶えた。何だよそれ。まるで想像出来なかったわ。予想外のオチだわ。というか俺達が魔王の一部だって? どうりで強くなるはずだわ。まあいいわ。この力を手にしたまま、地球に帰ったら無双出来そうだし。

 色々と納得できない点は多々ある。魔王が魔王城にいなかったこと。でも魔王がいたダンジョンには小さな模型の城が置いてあったから、それが魔王城って言いたかったのかな。後、武魔の両親の件だ。あの魔王の右腕左腕と言っていた武魔の両親は一体何者なのか。たぶんあいつらも魔王から生まれたのだろう。ということはあの武魔の両親も俺の兄弟ということになる。もう色々とメチャクチャだ。まあいいや。とっとと地球に帰って、飯食って寝るとするか。そしてまた従業員俺だけの会社で何でも屋を開くとするか。楓じゃなくて、黒井のりぞう、として。

 こうして俺は皆と別れを告げ、地球に戻り何でも屋を一人再開するのであった。



                    †お・わ・り†

雰囲気を楽しむ雰囲気小説であると同時に、ウォーリーを探せの感覚で間違いを探し、それを楽しむ、間違い、矛盾探し小説ゲームでもあると思います。皆の前で音読するとより楽しめると思います。新たな楽しみ方を発見した方は是非ご一報下さい。

それでは皆様の御検討をお祈りします。

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