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グラディウス・サーガ  作者: 一色十郎太
第二章 新大陸編
48/50

2-10 持って帰れば大儲け

 

「じゃあ、クロ。悪いがオレたちをあそこまで運んでくれ」


「キュウ!」


 結界の島探索三日目。

 魔王の感知していた結界の基点の場所。当初は崖の上に何かあると考えていたが、海から移動してきたところクロとちびが崖の下に然も何かありますといった雰囲気で、結果的に結界で隠されていた洞窟を発見したのだ。ここ以外に考えられないと結論付けたシュウたちは早速中を探検することに。


 一度船に戻ったシュウは、座礁しないように船を少し沖に停泊させ、ミーシャたちを連れてクロの頭に乗る。

 クロの大きさなら頭に三人乗っても崖の中腹にある洞窟にも余裕で届く。

 シュウは当然行くとして、魔王の知識は必要となるので依り代のミーシャも不可欠となる。そうなると残りはハナだが、一人置いていくわけにはいかず、結局全員で、ということに決まった。

 洞窟は、先ほどシュウが見たところ大きめだが、流石にちびは連れて行けない。


「ちびとクロは自由にしてていいからな。あ、まさかとは思うが、誰か来たら隠れてくれ。敵かどうかわからねえ内は攻撃すんなよ」


「ガウ!」


「じゃあ、クロ。頼んだ」


「キュウ!」


 シュウは後ろからミーシャとハナを抱きかかえるようにしてクロの頭に跨り、洞窟の入り口の結界を越えてもらった。

 洞窟内でクロから降りると、不思議なことに中からは海が見える。


「じゃあ、行って来る。夕方には戻るからな!」


 シュウたち三人は海にいるクロとちびに手を振ってから洞窟の探索に乗り出すのだった。


「ガウ~」


「キュウ~」


 三人を見送るドラゴンたちはなんとも寂しげであった。



 ◇◇◇


「ここは随分と明るいな」


 洞窟はほぼ水平にして直線。明らかに人の手によって作られたものだと思われ、洞窟というよりは地下道と言ってよい。

 何より、入り口から遠ざかれば光が入らなくなって当然のところを壁全体がほんのりと光っている。以前魔族の村に赴く際に使った地下道とはその点が異なり、それがシュウには不思議であった。


『……ここは魔石を多く含んでいるようだ……』


「魔石? 魔石って魔道具に使うアレか?」


 魔石とは魔物の体内からも採取できるが、鉱山からも採れる。魔力を貯めたり増幅する効果があるため、一般的には魔道具のエネルギーとして使われている認識がある。純粋な剣士のシュウではそのレベルの認識だが、実際は多岐に渡る。

 魔法契約では魔石の粉が入ったインクを使うし、また、魔石に直接光魔法を込めると照明になる。この洞窟の壁はその原理だろうと魔王は説明する。


『……うむ。魔族は魔道具をそれほど使わぬが、他に魔法陣の強化などにも使えるのだ……』


「魔法陣?」


『……例えば……結界……』


「おお……それっぽくなってきたな」


 歩くことしばらく。シュウでも魔王の魔法技術談義に付き合えるほどの短い時間で探索は一応の終了をみる。

 壁に突き当たったのだ。


 だが、一行に憂いの表情はない。

 分かれ道もなかった上、魔王のナビゲートによると結界の基点はこの先にあるという。

 ここまでの状況を踏まえると答えは一つだった。


「また結界だろうな。ちょっと見て来る」


 そう言ってシュウは壁に手を触れた。ミーシャもハナも黙って頷く。

 触ったという感触もなく壁に吸い込まれていくシュウの腕。今更躊躇することもなく、シュウは足を踏み出すとミーシャたちから見てシュウの姿は完全に壁の中に消えるのであった。


「何もない。というか、広い部屋みたいだな」


 すぐに戻ってきたシュウが報告する。


「部屋、ですか?」


「ああ。とりあえず来てくれ」


 実際に用があるのは魔王にだろうが、ミーシャもハナもここに置いていくつもりのないシュウは二人の手を取る。

 ミーシャもようやく慣れてきたようだが、流石に岩壁を潜る時は緊張したようだ。


「ここは……確かに広いですね……」


 崖から続く洞窟は高さ、幅ともに二メートルほど。比べると今いる空間の広さが段違いであることがわかる。高さはそうでもないが、円形の空間は半径数十メートルはありそうだ。ただし、壁も天井も地面もぼんやりと発光しているため正確なところはわからない。


『……部屋の中心が基点だろう。このまま進むのだ……』


「はい。わかりました」


「よし、行ってみっか」


 シュウたちは魔王の指示で空間の内部へと足を進める。


『……ふむ……なるほど……』


「オッサン、何かわかったのか? ここが基点とやらか?」


『……いや、まだだ。だが、そうだとも言える……』


 魔王の意味深な言葉に首を傾げる一行。それもまもなく解決する。


『……止まれ……』


「今度は何だ?」


『……ここが基点の中心だ……』


「ここが……」


 シュウは辺りを見回す。ミーシャも、ハナもそれに習った。

 既に自分たちがどこから入ってきたかもわからなくなっているが、部屋の真ん中だと言われれば、そうかな、という感じである。

 だが、それだけであった。


「で? ここに何があるんだ?」


 昨日も結界の基点と言われた場所を探索したが、特に怪しい物は見つからなかった。

 今も、部屋自体が発光していて不思議な感じはするが、特別なものは何一つない。それがシュウの感想だ。ミーシャも同じことであろう。


『……この部屋すべてが魔法陣なのだ……』


「なに?」


「え? こんなに大きな……」


 シュウもミーシャも驚きを隠せない。専門職でない二人が目にしたことのある魔方陣といえば大きくても二、三メートルぐらいなのだ。そして円形の図形に魔法文字が書かれているイメージがある。しかし、魔王に言われてもこの部屋にはそれが見当たらない。


『……わからぬのも無理はない。この部屋全体が魔石で出来ている。いや、或いは……』


「或いは何だよ」


『……島全体が魔石の塊なのかもしれぬ……』


「そ、そんな……」


 魔王の発言に驚くミーシャ。

 シュウも呆気に取られている。


『……おそらくだが……千年、我が封じられる前か後かは知らぬが、それだけの間大規模な結界を維持できているのが一点。そして、大規模といったが、結界はジダーン大陸を完全に囲む形であろう。さもなくば基点の場所と結界の意味がわからぬ。それだけの大きさを維持するためには文字通り山ほどの魔石が必要だ……』


「へー。それだけ魔石がありゃ大儲けだな」


(あん)ちゃん、ご飯一杯たべられるんか?」


「おう。ちびにも果物山ほど買ってやれるぜ」


「シュウさん、そんな気楽な……」


 魔王の推論にシュウとハナの反応は薄かった。

 ミーシャはミーシャで反応に困っていた。


 魔王の予測が間違っていても、この洞窟内だけで莫大な魔石鉱山を発見したことになる。

 何より、魔王の結界に対する考察が正しかったとしたら、歴史的な事実を発見したことになる。それは、魔族が人魔戦争の折に海に脱出したこと。そして千年の長きに渡りジダーン大陸が外界から隔離されていたこと、である。


 ジダーン大陸以外の新天地を発見できなかったのも、外の世界から誰も訪れなかったのもすべて結界の影響、ということなのだ。


「ああ、大変なことになりました……サラ様、どうしたらいいんでしょうか……」


 ミーシャは一人、ここにはいない姉とも呼べる親友に問いかけていた。

 当然答えは返ってこない。



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