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グラディウス・サーガ  作者: 一色十郎太
第二章 新大陸編
45/50

2-07 壁

 

「さて、メシも食ったし、森の調査と行くか! ヤロウども! 気合を入れろ!」


「おーっ!」


「ガウガウ!」


「キュウキュウ!」


「あ、クロは留守番な」


「キュ~……」


 クロの捕ってきた巨大魚とちびの捕ってきた熊の魔物で朝から豪華な食事を摂ったシュウはテンションが高い。先ほど死に掛けたことなど完全に忘れているかのようだ。


「ミーシャはどうする? クロとここで待ってるか?」


 ハナと違ってすぐにはシュウのテンションに乗れなかったミーシャに一応提案してみるシュウ。調査ともなれば魔王の力が必要になるのは明白だが、たらしのシュウと呼ばれたほどだ、女性には気を使える男なのである。


「い、いえ、行きます!」


「そうか。オッサンも何かあったら頼むぞ」


『……うむ。わかっている……』


「よし、じゃあ出発だ!」


「おーっ!」


「ガウーっ!」


「お、おー、です」


「キュ~キュ~」


「クロー、行ってくるでー。待っててなー」


「キュ~」


 こうしてシュウ一行はクロに船とキャンプ地を任せてジャングルに踏み入った。


 ちびは飛ばずに、その巨体で道を作るように一同の先を進む。昨日と今朝のちびによる調査では人間、もしくは魔族の姿は確認できなかったようだが、朝食で饗されたように魔物の存在は確認されていた。先頭をちびに任せるのもその対策である。アースドラゴンでも出てこない限りちびに敵うモノはいないであろう。


 もとより魔王の『直感』が頼りだったが、今はもう一つ指針ができた。


「夢でな、カミってのが『北西』とか言ってたんだ。この島のことだと思うか?」


『……わからぬが、進んでみる他なかろう。幸いというべきか、結界は海からこの島にも続いているようだ。結界を見つけたらそれに沿って進むといい。おそらく基点となる場所があるはず……』


 シュウたちがキャンプした砂浜は島の南西辺りにある。そこから北西は海しかない上、ちょうどクロが結界に消えた方向でもあった。もしかしたらあそこが目的地かとも思ったが、魔王は島の内部に結界の基点があると感じているらしく、一応島の北西部を目指すことにしたのだ。

 海岸線沿いを進んでもよかったのだが、岩ばかりであったので森を北に向かって進むことにする。


「わかった。ちび! このまままっすぐ頼む!」


「ガウ!」


 隊列は、ちび、ハナ、ミーシャと来て殿をシュウが務める。背後からの襲撃はシュウが警戒するというわけだ。


 たまに魔物の姿を見かけるが、それもちびの巨体を見て慌てて逃げ出すため森に入って三時間何事もなく距離を稼ぐことができた。だが、これといった発見もなく一回目の休憩となる。


「まあ、すぐに何か見つかるとは思ってなかったが、ホントに何もなかったな」


「そうですね。あ、ちびさん、これもどうぞ」


「ガウ」


 休憩中、水や食料は当然持参してきたものの、道々採取した木の実を食べてみる。ほとんどちびが興味を示したものなので、昨日はシュウが毒見などしていたが、今となっては全員が何の不安も感じることなく口にしていた。


 三十分後、未知の毒に中ったということもなく探索が再開される。


「さて、もう大分来たから何か見つかってもいいと思うんだが……」


 シュウは後ろを振り返ってみる。砂浜のキャンプ地からほぼ一直線に道が出来ていた。森の回復力にもよるだろうが、数日は迷うことなく辿れるだろう。

 そして再び前方に目を向ける。

 小さくはないとはいえ島である限り直進すれば必ず海岸線に辿りつくはずである。遭難の心配はないだろうとは思うが、シュウは気を引き締めた。


「ちび! (あん)ちゃん! ちびが!」


「ハナ! どうした! おおっ?」


 探索を再開して一時間後、突然ハナが大声を上げる。ハナに似合わぬ焦りようであった。


「しゅ、シュウさん、これって……」


 ミーシャがそれほど驚かなかったのは二度目の体験だからか。

 シュウも、ハナの叫び声には緊張したものの、実際の光景には『またか』と思っただけであった。

 そして、魔王のお墨付きが出る。


『……やはり結界があったか……』


 シュウが見たのはちびの尻尾だけが浮いていて、次第に何もない空間に引き込まれていくような場面であった。昨日海でクロの首が現れた状況の逆である。これでちびが引き返してきたら同じ場面が見れるだろう。


 ちびを追いかけようとするハナを一旦引き止める。

 結界に人間が触れるとどうなるかわからないためである。


「おーい! ちびーっ! 聞こえるか! 戻って来い!」


 何もない、これまでの道程と違いちびの通った痕跡も見当たらないジャングルに向かって声を掛ける。

 魔王の説明によると人間の目を誤魔化す『幻影結界』と呼ばれるもので、音は聞こえるはずだという。


「ガウー?」


「ちび! 心配したで!」


 魔王の予想通りこちらの声は聞こえたようで、ちびがすぐに戻ってきた。

 こちらも予想通り、始めは空中にちびの顔だけが浮かび、次第に全身が現れる。

 ちびの様子から、クロと同じく結界に関して気付いてもいないようであるのが不思議だった。


 ちびが完全に結界の外側、どちらが内か外かはわからないが、シュウたちの元に戻ってきたところで二度目の休憩をかねて協議が行われる。


「オッサン、これからどうすればいい? あの結界って結局人間は通れないのか?」


『……わからぬ。人間だけでなく魔族にも有効な結界のようだ。我にも結界の向こうは見通せぬ……』


「木や石は通るんだけどな……」


 シュウは休憩中、座ったままその辺に落ちている枝や石を結界方面に向かって放り投げていた。

 空中にスッと消えていく様子が面白いのか、ハナもどんどん投げていく。

 ちびは、石などが消えるようには見えていないらしく、逆にハナやシュウの行動を不思議そうに見ている。


「よし! こうしててもしょうがねえ! 行くか!」


「え? シュウさん、どうするんですか?」


「なに、突っ込んでみるだけだ」


「危険です! やめてください!」


 考え無しのシュウをミーシャが止める。サトラがいれば同じことを言っただろう。


 シュウは少しばかり考える様子を見せたが、背負っていたバスタードソードを引き抜き結界に向けて構える。


「シュウさん!」


「大丈夫だ。信じろ」


 何が大丈夫で何を信じろというのか、ミーシャが言葉にするのに困るほどの自信満々の態度である。


 だが、シュウはミーシャの心配も考慮したのか、突撃するような真似はぜずバスタードソードをゆっくりと結界に向かって突き出すだけだった。


「お? おおっ」


 予想通りというか、木や石を投げた時と同じく剣先が空間に飲まれていく。

 実験であるのは本人もわかっているらしく、突き刺したり引き戻したりして、さらに剣先の状態を調べていた。


 次は生身を試そうという段になって魔王がある提案をしてくる。


『……待て。我で試してみよ……』


「魔王様?」


「オッサンでか? オレが持つとしゃべれなくなるが、いいのか?」


 勇者の剣・グラディウスは魔王の依り代になっているミーシャが持っているのが一番効率がよい。だが、シュウにはミーシャに実験をさせるつもりはなかった。


『……我が結界を抜けられるかどうかを試すだけだ。通りさえすれば向こう側の様子も詳しくわかろう……』


 通り抜けられるちびにハナが説明を求めても、森が広がっているとしかわからない今の状況では、魔力の流れを感じられる魔王が向こうに行くのが最善手なのは確かである。


「よし! やってみるか。ミーシャ剣を寄越せ」


「いえ、私にやらせてください」


「何?」


「こうして私も木や石なら通すことが出来ますから、魔王様の剣も大丈夫なはずです」


 シュウとの出会いで積極性が増したミーシャがやる気を見せる。事実手にした木の枝を結界に差し込んでいる。ハナも真似していた。


「ねーちゃん、がんばってや!」


「ガウガウ!」


「しょうがねえな。気を付けろよ」


「はい!」


 ハナとちびは、よくわかっていなそうだが、ミーシャを応援し始める。

 これではシュウも強く反対できなくなった。

 ミーシャはグラディウスを背中から覚束ない手付きで引き抜き、結界に対して剣を構える。


「魔王様、行きます!」


『……うむ……』


 魔王からの短い答えの後、ミーシャは慎重に剣先を結界に近づける。


「え? あれ?」


「どしたんや、ねーちゃん?」


 その場で立ち竦んでいるミーシャを見てハナが訝る。

 シュウの見立ては至ってシンプルなものであった。


「剣が通らんみたいだな。何か壁があるみたいだ」


 結界があるって言ってるだろ! サトラがいればそう突っ込んだだろう。


「はい……何かにぶつかっているみたいです……」


 ミーシャは、気落ちしたように答えた。

 文字通り、シュウたちは壁にぶつかっている。


読んでくれてありがとうございます。

『管理神サマ(笑)の愚痴』もよろしくお願いします。

http://ncode.syosetu.com/n4475dt/

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