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グラディウス・サーガ  作者: 一色十郎太
第二章 新大陸編
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2-06 夢か現か

 

「キャア! シュウさんが!」


 未知の島で迎えた朝はミーシャの悲鳴から始まった。


 お嬢様育ちのミーシャだったが、シュウと出会ってからすっかり野宿に慣れたようで、必要とあらば夜の見張りもする。昨晩はその必要がなかったため十分な睡眠が取れた。

 それだけにテントを女性陣に使わせてくれたシュウのことを心配してハナと二人様子を見にきたのだが、シュウの姿が見えない。


 もう起きて探索にでも出かけたのだろうかと考えたミーシャだったが、まだ眠ったままのドラゴン・ちびを微笑ましく眺めている内に、ふと地面の方に目をやると、そこには人間の足が二本。


 シュウだ。


 ミーシャは慌ててシュウの足を引っ張ろうとする。

 ハナはちびを起こそうとするのだった。


「ちび! (あん)ちゃんが潰れてまう!」


「ガウ~?」


「ちびさん! 早く起きてください! シュウさん、しっかりして!」


 昨晩は見張りの必要もなかったが、一応のことを考えちびのそばで寝ていたシュウだが、運悪く寝返り? を打ったちびに圧し掛かられてしまった。地面が砂地でなければどうなっていたことか。




 ◇◇◇




 シュウは夢を見ていた。


 夢でなければ寝惚けているのだと自覚していた。


 瞼が開かない。どうしても周りの風景を見ることができない。


 だが、目の前に誰かいるのがわかる。何故見えないものがわかるのか、そのわけはわからないが、何者かがシュウに語りかけてくる。


『ニンゲンよ。足掻く者たちよ』


「誰だ? 魔王のオッサンか?」


 夢の中だからか、どんな声をしているかシュウには判別できなかった。それでも話し方から男だろうと感じる。


『我は、人が神と呼ぶ存在』


「カミ? 何だ、それは?」


『魔王と同質であり、また対でもある』


「ワケがわからん。何のようだ? オレは眠いんだが」


『ニンゲンよ。『鍵』を授けよう。北西に進むのだ』


「北西? 何がある? カギって何なんだ?」


 シュウは、相手が見えないことに不安になりながらも、疑問に思ったことを聞いていく。

 だが、答えはなかった。


「おい! 人がこうして聞いてんだろ! 何とか言え!」


『ニンゲンよ、足掻く者たちよ。働きに期待しているぞ……』


「おい!」


 それきり声は聞こえなくなった。

 シュウの目の前から人のいる気配も消えた。


「何なんだよ、一体……」


 夢の中でそう呟くシュウだった。



 ◇◇◇



「――っていう夢を見たんだ。オッサンじゃねえよな?」


 砂の中から助け出され、ハナの回復魔法をかけられながらシュウは不思議な夢について話しはじめた。


「ちびさんに圧し掛かられてよく夢なんて見てられましたね……」


 シュウの話を聞いていたミーシャは呆れ顔だ。しかし、シュウが実際問いかけたミーシャの持っている剣に封印されている魔王の反応は違った。


『……若き剣士よ。夢ではないのかもしれぬ……』


「なんだって? やっぱりオッサンだったのか?」


『……我ではない。だが、そなたの中に強い魔力を感じる……』


「魔力?」


『……うむ。人間のものではない。魔族の持つ魔力に近いものだ……』


「おいおい。オレは魔族になっちまったのか?」


「あんちゃんウチと同じ?」


 既に魔族から人間になっていることを理解しているはずのハナだったが、何故かシュウの発言を喜んでいた。

 しかし、シュウの戸惑いもハナの喜びも魔王によって否定される。


『……そうではない。魔力の塊が身体の中を漂っているだけだ……』


「なんじゃそりゃ。薄気味わりいな。オッサン、抜いちまってくれよ」


 魔力を抜き取る。或いは吸い取るというべきか。その能力は以前サトラが勇者の剣をして『魔剣』と言わしめたものである。シュウは気軽に考えているが。


『……その方がよかろう。娘よ、()を抜くがよい……』


「……はい、わかりました」


 シュウに剣を向けるのは気が引けたが、ミーシャは魔王の指示に従い勇者の剣を鞘から抜き、剣先をシュウに向ける。


『……ぬ……どういうことだ……取り出せぬ……』


「おいおい。冗談だろ?」


 魔王の発言はシュウたちを愕然とさせた。

 これまで魔族の村の住人たちから、あるいは狂った魔族・ノリヤドの魔法攻撃から魔力を吸い取ってきた実績がある魔王の言葉とは思えなかったのである。


『……すまぬ。理由はわからぬが、そなたの身体から魔力を抜き取ることができぬようだ……』


「おいおいおい。どういうことだ? それよりも、放っといて問題ないんだろうな」


『……わからぬ、としか言えぬな。その魔力をそなたに与えた者の意図がわからぬうちは我にもどうにもできぬ……』


「意図? そういや、カギとかカミとか言ってたな」


『……鍵であるか……結界と関係があるやもしれぬが、神とはまた大仰な……魔王を名乗る我が言える立場ではないが……』


「カミって、アレだよな、神サマのことだよな」


『……わからぬ。魔族にも土地神や山神を崇める習慣はあるが、実際に会った者はいないだろう……』


「魔族が神サマを崇めてるってのも変な感じだが、まあいいや。神サマがくれたんならそんなに心配もいらないだろ」


 魔王に処理できなかった魔力の塊が自身の身体の内にあるとわかったシュウは、始めこそ動揺したものの、魔王と話しているうちにいつもの調子を取り戻したようで、成り行きに任せることにするらしい。


「シュウさん、本当に大丈夫ですか?」


「心配してもしょうがないだろ。それよりもメシにしようぜ」


「はあ……」


「ガウ! ガウ!」


(あん)ちゃん! ちびが狩りに行きたいんやて!」


 シュウを圧死に追い込んだことを反省してか今までおとなしかったちびだが、食事と聞いて張り切り出した。シュウもその気持ちを察し、昨日ちびが島上空を飛んでも問題なかったこととを考慮して許可を出す。


「そうか。行くのは構わんが、ハナはダメだぞ。結界とかいうのがあるらしい。調べ終わるまでは我慢しろな。あ、ちびは昨日言ったとおり人がいないか注意してくれよな」


「わかった。ウチはここで待っとる。ちび、気ぃつけるんやで」


「ガウ!」


 ちびは一声吼えると砂浜から飛び立ち、あっという間にジャングルの向こうに消えた。


「さて、またスープでも作るか。お、そういやクロの姿が……」


「キューッ!」


 噂すれば陰。海の方に目を向けるとリバイアサンの巨体が現れる。巨大な魚がプカプカしているのも御馴染みの光景になりつつある。


「なんだ。また獲物を捕ってきてくれたのか? いつも悪いな。ちびも狩りに行ってるから先に食べててもいいぞ」


「キュウ、キュウ」


「ちび待ってる、やて」


「そうか。じゃあ、一緒にメシ食おうな」


「キュー!」


『……人間と魔獣。魔族でなくともこれほど感情を通わすことができるとは……』


 魔王の呟き。それが聞こえたのは、依り代になっているミーシャだけである。

 シュウは、ハナに手伝わせて食事の用意をしているところであった。






読んでくれてありがとうございます。

『管理神サマ(笑)の愚痴』もよろしくお願いします。

http://ncode.syosetu.com/n4475dt/


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