2-04 島が見えるぞ~
次回は二月二日(木)に投稿します。
予定になかったハナとの合流から三日。
シュウたちは未だ洋上にあった。
ちびとクロが交代で船を動かしてくれているのでかなり効率が上がっている。しかも、主にクロが食料となる巨大魚や海獣を捕ってきてくれるので、食料も野菜・果物を除いて余裕が出てきた。当然、魔物の襲撃を危惧する必要もない。逆に移動中することがなくて困ったくらいだ。
そして午後になってその航海に変化が訪れる。
「島だ!」
残念ながら、遠目にも大陸とはいえない大きさなのがわかった。
だが、少なくともジーダン大陸では存在を確認されていない島のようである。なぜなら、ここが通常の航行では何十日もかかる距離であることと、ここまで安全に来れたのがリバイアサン・クロのおかげだからだ。更に言えば、ちびとハナがクロと友人でなければシュウたちもとっくに襲われていてここまでは辿り着けなかっただろう。
それに、魔王の言葉も気になる。
『……間違いない。あの方角より微弱な魔力を感じる……』
元々魔王の『直感』に従って進行方向を決めていたので何かしら期待できる。
ただ、海にはリバイアサンのような強力な魔物も多いので、魔力を感じたからといって特別なことでもないのだが。
「よし! ちび! あの島まで頼むぞ!」
「ガオーン!」
張り切ったちびは雄叫びを上げ、船を加速させる。勿論、シュウたちは船酔い防止のためちびの背中にいる。
あっという間に島が近づいてきた。
大陸とは呼べないまでも、割と大きな島である。無論、人間の目から見たらである。ちびが飛べば一周するのにもあっという間だろう。
洋上から見える範囲の島は鬱蒼としたジャングルだけのように見える。人間が住んでいるかどうかわからないが、気を付けるに越したことはないとシュウはすぐに上陸することを選択しなかった。ちびに停止してもらい、ミーシャともども船に乗り移る。
ちびには、ハナとともに島まで先行してもらい、海岸に停泊できそうなところを見つけて先に休憩していてもらう。その間、シュウたちは船を本来の動力・魔道推進装置で動かし、島の周囲を時間をかけて調査する予定だ。人間を見つけたり何か問題があったらすぐに戻って来いとも忘れずに伝えた。
「わかった。行くで、ちび!」
「ガウ!」
ちびがいれば魔獣などについては危険を感じないが、未知の島であることにそこはかとなく不安になるシュウであった。
だが、既にパーティーの一員と認めているハナたちのこと、信頼する気持ちの方が勝っている。
「さて、俺たちも行くか。あ、クロも休んでていいからな」
「キュウ?」
ちびと交代かと思ったらしく姿を現したクロにシュウが告げる。
「キュウ! キュウ!」
「ん? 何だって?」
「あの、シュウさん、手伝いたいと言っているのでは?」
ハナがいないので正確なコミュニケーションは取れないが、この三日でミーシャもすっかりクロに慣れてしまったようだ。
「ん? そうなのか?」
「キュウ~」
「そうか。だけどなあ……あ、そうだ!」
「キュ?」
クロは首を傾げる。鳴き声とポーズは可愛いが、図体が図体のため見る者によっては恐怖の対象だろう。
「じゃあ、クロにはこの船を先導してもらおうか。岩礁とかあったら教えてくれ」
「キュウ!」
「よし、頼むぞ。このまま左から回っていく」
シュウは、当然航海については素人である。魔道推進装置があるので船を動かすこと自体は問題ないが、海図や暗礁については全く知識がない。ミーシャと二人で船旅をしようと考えること自体無謀の証明なのだが、サトラ国王をはじめ、結局指摘しなかったのは人徳のおかげであろうか。
それでも、出発前に船大工や船員たちからレクチャーしてもらっていたので、幸運にもこれまで何とかなっていたのである。
しかし、未知の島に上陸するとなれば海底の状態もわからないまま突っ込んでも大事故の元である。そこまで無謀じゃないとシュウも密かに思っている。
伝説の魔獣に先導させるなど、誰も考え付かないことだが、安全面は保障された。
「キュー!」
一声嘶くとクロは船の前に出てゆっくりと進みだす。
「よし、ミーシャとオッサンは島の様子を探ってくれ」
「わかりました」
シュウは船室から前方のクロの移動ルートに従って慎重に操船する役、ミーシャは船の進行方向右側を向き、島の観測役を勤める。魔王が何か感じると言っているのだからこの役割分担は妥当だろう。
しばらくは魔王にも何の反応も見られなかった。島もただジャングルが続いている。
「あ! ハナさんとちびさんです!」
岩礁が突き出した海岸までジャングルに覆われていた光景が変わり、砂浜が見えたところでミーシャが声を上げる。
シュウも、前方を注意しながらだが、島に目をやると、ミーシャの言うとおりちびが寝そべっている姿が見える。ハナもこちらに気付いたらしく両手を振って飛び跳ねていた。どうやら二人に問題はないらしい。
シュウはそう判断し、前方に再び目を向けた。
あれ、と思ったのは、クロの姿がいつの間にか消えていたからだ。
クロの姿から目を離したのはハナたちのほうを向いた一瞬である。一体どこに、そう疑問に思ったが、相手は海竜のこと、海底が深くなっていて潜ったのだと極めて常識的に判断した。
だが、
『……止まるのだ……』
「! シュウさん! 止めてください!」
魔王からの指示をミーシャが慌てて伝える。
「わかった」
シュウも、クロが海中から出てくるまで待つつもりだったようで、素直に指示に従い停船させる。
「何かあったのか?」
「わかりませんが、魔王様が……」
『……この先に結界がある……』
「結界? なんだそりゃ?」
「きゃ!」
シュウが魔王の言葉の意味を尋ねようとしたところ、ミーシャが悲鳴を上げる。
「キュ?」
クロが現れたことが原因なのだが、今更ミーシャがクロの存在に怯えるわけがない。驚いたのはその出現の仕方だった。
「クロ! 大丈夫なのか!」
シュウも驚きの声を上げる。主にクロの身を案じて。
クロが現れたのは海中からではない。
空中からである。
それはちびのように空を飛んでというわけではない。いや、見方を変えれば飛んでいるようにも見える。ただし、首だけが。
そう、クロの首だけが船の前方に浮かんでいるのだ。
「キュウ、キュウ?」
『……心配ない。あれが結界だ……」
クロの『何のこと?』とでも言っているかのような返事と、魔王の説明が入る。
「と、とりあえず、クロ。こっちに来てみてくれ」
「キュウ?」
シュウの指示に従ったクロが素直に船に近づいてきた。
「おわぁ~」
「しゅ、シュウさん……」
不思議な光景だった。
クロが近づく度にクロの体が空中から伸びてくるような、そんな光景である。
『……ふむ。魔獣には反応しない結界か。何の意味があるのか……』
「オッサン、説明しろ」
クロが完全に姿を現した後、無論海中部分は見えないが、クロの様子に異常が見られなかったことを確認してからシュウは、一人状況をわかっていそうな魔王に説明を求めるのであった。
魔王は魔王で別の疑問を抱えているようである。
『……人為的な結界だ。おそらく魔族と関わりがある。だが、魔獣が素通りできる意味がわからぬ……』
この場で結論は出せない。それが魔王の答えだった。
「仕方ねえ。今日は時間もねえし、少し周りを調べてハナのところに向かうか」
島を一周くらいはできそうな時間はあったが、結界の効果とやらもわからないうちは無理はしない方がいいと、シュウは判断した。
ミーシャも同意する。
船は、砂浜方面に舵を取った。
読んでくれてありがとうございます。
隔日投稿の予定ですが、わかりやすく偶数日にするため調整します。
次回は二月二日(木)の予定です。
新連載『管理神サマ(笑)の愚痴』もよろしくお願いします。
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