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グラディウス・サーガ  作者: 一色十郎太
第二章 新大陸編
40/50

2-02 友達?

遅くなってしまいました。

何とか隔日投稿がんばりたいです。

 

「ちび! ゆっくりだぞ! ゆっくり!」


「ガウ、ガウ」


「わっかてる、言うてんで」


 事情も聞かず怒鳴りつけるのもマズイだろうと判断し、とりあえずはドラゴンのちびを着陸させることにした。

 といっても、ここは大海原。陸地の影ももう見えない。


 こうなると船に乗せなければならないが、ジダーン大陸では大型の部類に入る商船も、所詮は近海用。甲板が既にドラゴンのサイズを下回っている。

 仕方なく、中央の船室に覆いかぶさる格好で乗ってもらうことにした。

 バランスを取らなければ船が間違いなくひっくり返ってしまう。重量については賭けに出た。


「どわっ! しっ、沈む!」


「ガウガウ」


「大丈夫やて」


 ハナが気楽に通訳しているが、シュウの船は喫水線が船べり目一杯のところまで来ている。沈没か崩壊寸前である。


 おそらく、ドラゴン固有の浮遊魔法でも使っているのだろう。それでも、ちびは身体を休められているようで今にも眠ってしまいそうな様子である。


 シュウは、ちびのことはこの際置いておくことにしたようだ。ちびの頭に乗ったままご機嫌なハナに一応来意を尋ねる。


「で? お前は何しに来たんだ? 散歩か? 迷子か?」


「ややなー。ウチも(あん)ちゃんと一緒に行くに決まってるやん」


 シュウは、予想通りの答えにこめかみを押さえる。ミーシャも苦笑するばかりだ。


「……一応聞くが、お前、サトラのところで待ってるって約束したよな。なあ?」


「あんなあ、ウチも待ってよ思ってん。でもな、ちび呼んでみたら呼べたねん。スゴイやろ? 遠くてウチの声聞こえん思っとったんに」


 いまいち理解しづらかったが、王都にドラゴンを呼び出した、ということがわかった。

『人間』になったハナがまだ魔力が高いままなのだろうか。それとも遠く離れたハナの声を聞けたドラゴンを流石だと思うべきか。どちらにしろ、おそらく王都は大混乱だろう。後でサトラに謝らなければと悩むシュウだった。


 しかし、ハナの答えは答えになっていない。


「だからな、何でここに来たんだ?」


「ウチも(あん)ちゃんと一緒に行きたいんや! ちびも(あん)ちゃんと一緒がええ言うとる!」


「うぐっ……」


 王城で留守番する約束を破った理由を聞いていたはずだったが、ここまでストレートに言われると返す言葉が出なかった。何せ、すでに外洋まで飛んできてしまっているわけなのだから。


「シュウさん……」


 黙って二人の遣り取りを見ていたミーシャが心配そうにシュウに話しかける。


 そのミーシャの表情を見たシュウは、『あ、ダメだ』と思った。

 ここで追い返すわけにもいかないのは確かである。周りは何もない大海原なのだ。


「わかったよ! 連れてけばいいんだろ!」


「ホンマか! やったで、ちび! (あん)ちゃんと一緒や!」


「ガウーッ! ガウーッ!」


 さっきまで眠そうにしていたちびまで目を輝かせて雄叫びを上げる。どうやら、シュウは本気でちびにも懐かれたようである。


「はーっ……しょうがねえなあ……しかし、どうすっかな……」


 シュウは、ハナの件は諦めたものの、別の心配をしていた。自然、ちびの巨体に目が行く。


「なんや、(あん)ちゃん? どうかしたんか?」


「そうです。どうかしたんですか?」


 ハナとミーシャはわかっていなかったようなのでシュウが説明してやる。


 シュウが手に入れた船はかなり高性能らしく、航行は魔道具を組み込んだ推進装置によって行うのだ。風と水の魔法らしいとは聞いているが、そこは重要ではない。問題は、ちびを乗せたままでは出力が足りないことだ。無理に動かそうとすれば、今度こそ船が分解してしまうだろう。


 ちびが泳げるかどうかはわからないが、どちらにしろ船を動かす時はちびに降りてもらわねばならない。だが、ちびもずっと飛びっぱなしで入られないだろう。休憩の度に船を停止させることになるが、時間が無駄になる。


 確かに、目的地などないのだから予定の時間もないといえばそうなのだが、食料の問題がある。

 シュウは、確かに無謀と評される男なのだが、腹を空かせたまま旅をしようとは思っていない。準備した食料の減り具合でジーダンに戻ることもミーシャや魔王と決めてあるのだ。


 ハナはともかく、ちびの食料までは用意しているわけがない。予定の航行距離の半分になってしまう恐れがあるのだ。


「なんや、そんなことか」


「え? ハナさん?」


 シュウの話を聞いていた二人の反応は全く違っていた。

 ミーシャは、シュウとの初対面のときの泣き虫がどこに行ってしまったのかと思うほど、この新大陸探索航海に意欲的なのである。それだけに航海の中止の可能性に動揺を隠せないようだ。


 対照的に、ハナはいつも通り気楽に構えている。しかも、状況を弁えての発言のようなのだ。

 シュウもそのことはわかったらしく、憤らずに話を聞くことにした。


「ハナ。どうにかなるのか? ちびって泳げるのか?」


「あんな、ちびはあんまし泳げへんけど、ごっつ泳ぎの上手い友達がおるんや。(あん)ちゃんのいるとこ、教えてくれたんも友達やで」


「そ、そうか」


 そう答えたものの、相変わらず話の要点がずれている気がするシュウであった。


 だが、一つ謎が解けた。

 ハナが、いくらドラゴンに乗っていたとしても、この何も目印になるものがない大海原でよくシュウたちを見つけられたな、と不思議だったのだ。


 なるほど。友達か。

 そう思ったシュウは、ある予感がした。


「ハナ。その友達って……」


「うん? 呼ぶんか? そやな。ちびもまだ休みたいみたいやし、呼ぼか?」


「いや、待て……」


「クローっ! こっち来てんかー!」


 悪い予感に包まれたシュウはハナを止めようとしたが、間に合わなかったようだ。

 ハナの声は大海原に響き渡る。


 シュウが諦めて、その『友達』の登場を待つことしばらく、ついに『友達』が現れた。ちなみに、シュウは待っている間、『友達』が誰かは聞いていない。聞くのが怖かったからだ。


「キュイーっ!」


「なんじゃ、ありゃ!」


 巨大な黒い蛇、そうとしかシュウには思えなかった。海面から鎌首を擡げている状態で少なくともドラゴンのちびより、この船よりも大きい。


『……ふむ、リバイアサンか……』


 ミーシャの口を通して魔王から解説が入る。

 現れたのは、海のドラゴンといわれる、伝説の魔獣『リバイアサン』であった。


「クロ、よう来てくれたな。あんがとな」


「ガウ、ガウ」


「キュイ、キューイ」


 ハナは恐れることもなくリバイアサンに話しかける。ちびも居眠りから目を覚ましたようで、何か話しかけていた。

 リバイアサンは船にその長い首を近づける。おそらく、会話のためなんだろう。


 だが、人間にとっては恐ろしいとしか思えない。


「しゅ、シュウさん……」


『……落ち着け。攻撃の意思はなさそうだ……』


 怯えたミーシャの表情のまま、落ち着いた魔王の声が聞こえてくる。非常に不思議な光景だ。しかも、目の前には伝説の魔獣。


「なんじゃこりゃあ!」


 シュウはそう叫ばずにはいられなかった。



読んでくれてありがとうございます。

新連載『管理神サマ(笑)の愚痴』もよろしくお願いします。

http://ncode.syosetu.com/n4475dt/


1/30 ハナの台詞『あんちゃん』→『(あん)ちゃん』に変更。

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