表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グラディウス・サーガ  作者: 一色十郎太
第一章 ジダーン大陸編
26/50

二十六 突入・スルナダ城

2話あります。

 

 シュウ一行が北回りでジャナ王国王都に向かったのは、ジャナ国内の味方を増やすために必要なことであった。

 そのために最後の魔族・ノリヤドに時間を与えてしまうことになったのは仕方がない。


 しかし、ジャナ王国王城に近づいた時、シュウたち、特にサトラ王子はそのことについていささか後悔することになった。


「なに!」


 驚く一行が目にしたのはドラゴンの身体を掠めていく無数の火球。誰かが、いや、魔力の強い者が攻撃してきたのだ。


 さすがに野生の勘は鋭い。ちびは苦もなく火球をかわし続けた。

 だが、このままでは埒が明かない。


「ジョナン! 何があった!」


 危険を予告したジョナンにすぐさま状況を聞く。


 ジョナンによると、言いつけられたとおり遠見の術でジャナ王国はスルナダ城方面を監視していたところ、魔術師たちの一団を発見したとのこと。

 既にスルナダ城は魔術管理組合の指揮下に置かれているようだ。


「オレと師匠がやつらを引きつける! その隙にお前らは城に突入しろ!」


 シュウは陽動役を買って出た。


「ダメです! 向こうも遠見の術者がいます! 筒抜けです!」


 既に一蓮托生のジョナンは作戦の危うさを指摘した。


「なら強行突破だ! ハナ! ちびを突っ込ませるぞ!」


「ええよ。ちびは頑丈やからな! な、ちび?」


「ガウー」


 シュウの作戦はハナにとってわかりやすかった。

 ちびも機嫌のよさそうな雄叫びをあげる。


「ま、まて! それじゃ余計な犠牲者が!」


 サトラは、ハナもちびも心配だったが、それ以上にジャナ国側の被害を懸念する。


「あのな、サトラ。綺麗事だけじゃ世界は変わらねえぞ。もし死人が出たら、オレのせいにしてくれ。ミーシャの兄貴の分と合わせて責任は取ってやる!」


「シュウさん……」


 シュウの言動に、生前の兄の姿を見る思いのミーシャであった。性格はまるで違うが。


「サトラ様! 私もシュウさんと責任を負います! ニイサマの遺志を叶えます!」


「よし! よく言ってくれた、ミーシャ! おい! ジョナン! 王サマと大臣たちはどこにいる!」


 ミーシャの言葉に励まされ、シュウはサトラ王子の返事も聞かずに作戦を実行しようとした。

 ジョナンが城の内部を探り、その具体的な場所をミーシャが説明する。


「一番近くて、人のいない壁は!」


「あそこです!」


「よし! ちび! ぶっ飛ばせ!」


「ハイな! ちび、撃てぇ!」


「ガウーッ!」


 ハナの指示で、ドラゴンが城目掛けて息を吐き出した。


 ドラゴンブレス。

 サトラは、まさかこんな大技を再び使わせることになるとは思っていなかったが、代案も浮かばない上、このまま手を拱いていたら、最悪の場合シナト王国との本格的な戦争に発展するかもしれないと、シュウの行動を停められなかった。


 それに、正体がバレて暴走したノリヤドにできることは、まさに両国を戦乱に巻き込むことだろうと予想がつく。

 それだけはなんとしても避けねばならないのだ。

 現在の、ゲームのような戦争なら両国の民に遺恨を残さずに終わらせることができるが、本格的な戦争になると、大量の死者を出した上に、両国民同士が恨みを残したまま共倒れという最悪の結果になり得る。


 《逃げてくれてればよかったのに……》


 サトラは、シナト王国サラトナ城でノリヤドが正体を現したあと、もしかしたらジャナ王国からも逃げ出したかもしれないと考えていた。


「おい、サトラ。ヤツが逃げてたほうがよかった、とか思ってただろ?」


 ちびの開けた城の壁の大穴に、魔術師たちの火球攻撃を避けながら浮遊術で飛び込んだ時のことである。シュウが遠くを見ているような表情のサトラ王子に聞いてきたのだ。

 サトラは、親友のことながらその洞察力にドキリとする。


「え? いや……」


「前にも言ったろ? オレは面倒なことはさっさと片付けたいタチなんだよ。どこに逃げたかわかんねえヤロウを探すのはご免だぜ!」


「あ、ああ……そうだな……」


 短絡的だが、正論でもあるシュウの意見に目が覚める思いのサトラ王子だった。


 いつ目覚めるかわからない魔王に怯えるよりは、今封印を解いたほうがいいと主張し、結局目覚めさせてしまった親友。

 今回も同じことだ。顔も名前もわからない魔族が人間の社会に潜み、忘れたころに陰謀を張り巡らせていた、なんてことになったら今まで世話になった人たちに顔向けができないではないか。


 しかも、相手は長命なのだ。この場にいる人間が全員寿命で死んでからゆっくり行動を起こすことだってできたはずである。

 それを考えれば、こうして直接的な行動に出てこられたのは僥倖といってよいかもしれないと考え直す。


 《……しかし、なら、どうしてノリヤドはこんな行動を……やっぱり、こちらに魔王がついたから自棄になったのか……》


 気づけば、サトラはいつの間にか城内を走っていた。


 メンバーはいつもの若者4人。それに二人の師匠たち、シンシア卿とアルカーノ卿の合わせて8人である。

 ハナとジョナンは空中で待機らしい。


「ここです!」


 サラ王女が叫んだ。


 重い扉をシュウとヤザン師が押し開ける。無論、中からの攻撃を想定しながら。


1月18日編集。

ちびのセリフ? 追加。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ