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グラディウス・サーガ  作者: 一色十郎太
第一章 ジダーン大陸編
21/50

二十一 集結

2話目です。

 

「なんだ、なんだ。嬢ちゃんたち、やるようになったな……」


 不意に聞こえてきた声に再び臨戦態勢を取るサトラ、サラ、ミーシャの3人だったが、その声の主はシュウとサトラ王子の剣術の師匠、ヤザン師であった。


「先生! クガト先生も! ご無事でしたか!」


 二人の安否については、弟子であるシュウの生命力のしぶとさから同じように想像できたので、実は大して心配していなかったものの、実際に元気そうな姿を見てサトラは心からホッとする。

 森の中から出て来たばかりのようで、後ろにクガト老人の姿もあった。足元には縛られた何人かの黒ずくめの男たちの姿も確認できる。


 二人の老剣士は協会職員らを引きずりながらサトラ王子たちに近づいてきた。


「おハナ坊、久しぶりだな。なんだ、『ちび』はでっかくなったが、おハナ坊はちっとも大きくなってないな」


 クガト師がドラゴンの頭にまたがっている少女に声をかける。


「剣のオッチャン! あんなー、今度大きくなれるんやて」


「そうかそうか……ところでな、ちびでこの辺一回りして、他に誰か隠れてないか見てきてくれんか。ちびなら人間の匂いもわかるだろ」


「うん、ええよ。行くで、ちび」


「ガウ!」


 快くクガト師の要請を受け入れ、ハナはドラゴンを飛び立たせた。


 残りのメンバーはその場で再会の挨拶をすると共に、簡単な情報交換を始める。

 その前に、一つ気になることがあった。


「先生。その人は……協会の人のようですが……」


 ヤザン師とクガト師は縛られた魔法協会のメンバーを足元に転がしていたが、明らかに同じ黒ずくめの格好をした人物が縛られもせずヤザン師の後ろに立っていたのだ。


「ああ。コイツか。もう協会にゃ戻れねえだろうから、縛らんでもいいだろ」


「お、王子殿下……」


「う、裏切りもの……」


「わ、私はただの通信係です! 殿下暗殺なんて大それたこと!」


 縛られた職員との遣り取りで何となくわかった気がするが、一応詳しく聞く。


 つまり、この男はジョナンというそうだが、クガト師の山小屋爆発の日に襲撃してきた魔法協会のメンバーだったそうで、ヤザン師とクガト師が生きていたくらいであるから、建物の外にいた者にも生き残りがいたのだ。

 馬車に戻って協会本部に連絡しようとしたところを寸前でヤザン師に阻止され、逆にウソの情報を本部に送らされたのである。


 魔術本部は、ジョナンの報告をもとに王子は死亡したと見ているようで、今日ここに来た協会職員はその確認作業をするはずであった。


 既に情報を得ていたヤザン師たちは森に隠れ、作業員たちを隠密に捕獲する作戦に出る。

 そこへシュウたちがドラゴンに乗って舞い降りたので、かなりハデになってしまったのだ。


「……なるほど……向こうはボクたちが死んだと思っているのか。今なら攻めやすいな……」


「ところで、バカの姿が見えんが……」


 サトラ王子がヤザン師とジョナンの情報をもとに作戦を練り始めると、そのヤザン師がある人物について言及する。

 名前を出さなかったが、在席していた人間はすぐに誰のことかわかった。


「シュウなら、あの辺で黒コゲの氷付けのはずですが……それより、先生。これからの行動についてなんですが……」


 親友の生死についてはあまり感心を示さず、サトラは作戦について頭を悩ます。

 氷付けにした張本人のサラ王女も、魔王の精神体を身体に宿すといった非日常的経験をしたミーシャも、騒ぐほどのことではないと涼しい顔であった。


「何やってるんだ、あのバカ。修行が足りんな……」


「ハナさんが回復魔法をかけてくれますから、そのあと存分にしごいてやってください……各荘園についてですが……」


「おーい。誰もおらんかったでー」


「ガウガウ!」


 空から声がかかる。

 ドラゴンの能力は凄まじく、ロクに作戦も立てられないうちに周囲の探索が終了したようだ。サトラ王子にとってはよかったのか悪かったのか、微妙なところである。


「……よっしゃ、場所を変えるか。こいつらもここに置き去りというワケにもいかんからな」


「……ワシも久しぶりに人里に下りるか……家もなくなったしの」


「え? どちらに?」


「アルカーノの屋敷だ。アイツは剣はまだまだだが、まつりごとには熱心なほうだ。きっと王子たちの味方になってくれる」


 アルカーノ卿は、この間までヤザン師が剣術指南として滞在していた地方領主であった。


 サトラはその提案に乗る。

 とりあえずは、氷付けのシュウと、魔法協会のメンバーを救出することに。


「ひ、ひでえな、おまえら……」


 ハナの回復魔法で意識を取り戻したシュウの第一声はこれだった。


 一同は大いに笑う。

 そばでは同じく回復魔法で命の助かった協会職員たちが複雑そうな顔をしていた。念のためヤザン師たちが用意していたロープで縛り上げられている。武器などの装備も取り上げられていたのでもう脅威にはなりえないだろう。


 さて、どうやって場所を移すか、という問題になったが、置いていかれそうになると心配したハナが再びドラゴンでの移動を提案した。

 山中での移動だけならともかく、人が住む町まではどうか、と思っていたサトラ王子たちは悩んだ。


「……こいつらが戻らなきゃ、いずれバレるぜ。あと、2日か3日だな」


 ヤザン師は捕虜とした協会メンバーを指し示して助言する。

 今は死んでいることになっているが、生きていることが協会本部に伝わるとどんな手を使ってくるかわからない。


 サトラは、この際速攻で相手の不意を突く作戦を選ぶことにした。

 そうと決まれば、このパーティーは慣れたものである。さっそく行動に移った。


 まず、協会の馬車に移動する。


「こ、こちらジョナン。本部、聞こえますか?」


『ジョナンか。キクラーである。どうだ、調査隊は到着したか?』


「ど、導師さまですか! じょ、ジョナンであります!」


 サトラは、ヤザン師のアドバイスどおり魔法協会本部にウソの報告をさせようとジョナンに協力を求めた。


 もう逃げることもできないジョナンは黙って従ったが、まさか協会の責任者、大魔導師・キクラーが直接連絡を受けるとは思っておらなかったようでかなり焦っていた。

 そばで監視しているサトラ王子もヤザン師も意外さを隠せなかったが、声を押し殺して、目と指でジョナンに合図を送る。


『挨拶はよい。さっさと報告せんか』


「はっ! ちょ、調査隊は既に到着しており、調査も完了いたしました!」


『で? 結果は?』


「はっ! お、王子殿下の遺体が確認されました」


『……間違いないな?』


「はっ! 間違いございません! ほ、他に同行者3人と、剣術指南役ヤザン師、山荘の持ち主の遺体を確認しております。私と同行した協会職員も全員死亡であります!」


 ジョナンは、上司のことは怖かったが、もっと地位の高い王子が目の前にいるし、何より、剣を構えているヤザン師の顔が何より恐ろしく、言われたままの虚偽の報告をせざるを得なかった。それに、どうせ以前にも虚偽の報告をしていたので、今更本当のことも言えない。


『……そうか……よくやった。これで王子の替え玉が使える……』


「は?」


『なんでもない! それより! アサトガはどうした! なぜ直接ヤツが連絡してこん!』


「は、そ、それは……」


 ジョナンはチラリとサトラ王子を見やった。

 サトラは軽く頷く。

 これぐらいの展開は予想済みであったようだ。ジョナンは指示されていた通りの原稿を読み上げる。


「しゅ、主任たちは、地下道の探索に……」


『地下道だと?』


「はっ、山荘跡を調べましたところ、抜け穴らしきものを発見いたしまして、念のためにと、かなり深いもので調査隊総出で探索に当たっております」


『……まさか……おい! それは調べなくともよい!』


「は? で、ですが……」


『命令だ! すぐに本部に帰還しろ! アサトガにそう伝えろ! そうだ! 王子の遺品はすべて回収せよ! わかったな!』


「は、はっ!」


 ジョナンが返事をする前に魔法通信は切れたようだった。


「ボクの替え玉とか言っていましたね……」


 魔法通信装置の前で精根尽き果てたジョナンに改めて通信の終了を確認した後、サトラはヤザン師と通信内容を検討してみる。


「都合がいいじゃねえか。王子暗殺の実行犯は確保してるんだし、協会の責任者がそんな真似をしたってわかりゃ、言い逃れはできねえだろうぜ」


「そ、そうですね。好都合ですね……」


 相談した相手が悪かったのか、弟子といい、なんとも気楽な結論である。


「こっちは終わったぞ」


 協会の馬車にシュウが顔を出した。

 シュウたちは、ここに来る時に乗ってきた馬車の用意をしていたのである。


 ドラゴンに持たせて飛ぶため、馬は解放し、捕まえた協会の職員たちを押し込めた。大事な証人である。捨てていくわけにはいかない。

 ミーシャたちは、残していた荷物がそのままであったことに喜び、早速着替えているという。


「よし、じゃあ、早速行こうか」


 サトラ王子の決定で行動に移される。

 

最近主人公の影が薄い……


1月18日編集。

ちびのセリフ? 追加。

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