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グラディウス・サーガ  作者: 一色十郎太
第一章 ジダーン大陸編
14/50

十四 温泉かい?

短めです。

 

 サトラ王子とシュウ、そしてサラ王女とミーシャの四人は、それぞれシナト王国とジャナ王国を勝手に代表する維新チームのようなものである。

 二国間で戦争を自由に操る国家機関に疑惑を持ち、調査を始めたものの、それがバレて逃亡中の身の上になってしまった。


 現在、シナト王国の北方、もはやどちらの領土かもわからない山岳地帯に潜んでいる。

 本人たちは調査のつもりだが、調査対象の魔族の家に世話になっている状況は、お世辞にもスマートとはいえないだろう。見方を変えれば合理的ともいえなくもないが。

 ここに来て2日目、彼らは夜明けと共に起こされる。


「客なんじゃから、まだ寝ててもええぞ」


 長老はそう言うのだが、小さな建物のことゆえ、玄関で寝ているようなものだ。結果的にのんびりと寝てなどいられない。家の主人の長老は当然のこと、何か用のある村人がちょくちょく出入りしたりしてすこぶる居心地が悪いのだ。

 特にサラ王女とミーシャは、王侯貴族の令嬢としてだらしないところを見られるわけにはいかないという女の慎みというものがある。初日は旅の疲れと催眠魔法の効果で前後不覚に眠ってしまったが、もうそんな言い訳はできないと長老とともに外に出て行く。


「お手伝いします」


 一国の王女らしいのか、それともらしくないのか。サラ王女はこれまでの人生で経験したこのないはずの農作業の手伝いを申し出た。

 サラ王女を姉とも慕うミーシャは勿論、男として女性ばかりに働かせるわけにはいかないとサトラ王子も付き従う。


 そんな3人をよそに、我らがシュウは持ち前の神経の太さを発揮し、相手が王サマだろうが魔族の長老だろうが気を使う態度は見せなかった。さすがに睡眠は充分すぎたのか、起き出してはいたが、農作業の手伝いもせず、ヤザン師から稽古をつけられたばかりのバスタードソードの使い方をおさらいしようと、一人長老宅の前庭で剣を振っている。


 正確にいうと一人ではなかった。

 見学者がいる。昨日シュウ一行を案内してきた魔族の少女、ハナだ。


「兄ちゃん、クガトのオッチャンより強いんか?」


「あったりまえよ! あんな爺さん、目じゃねえ!」


 普段なら子供も農作業に借り出されているのかもしれないが、今日は特別なのだろうか、長老宅の玄関前に座り込み、朝食用の野菜の仕込み、豆の鞘取りなどをしながらシュウの剣術の練習を眺め、時おり声をかけてくる。


 かなりの時間が経過し、シュウたち普通に街で暮らす人間にとっての朝食時になって、やっとサトラ王子が帰ってきた。

 慣れない農作業の手伝いでかなり疲労困憊のようである。


「兄ちゃんら、風呂に入るか?」


 サトラ王子の惨状と、シュウも剣の稽古で汗をかいているのを見て、野菜の下ごしらえも済んだハナが粋な計らいをする。

 当然二人はよろこんでその申し出を受けた。特に本物の王侯貴族であるサトラの喜びようといったらない。サラトナ城を出発してから服さえ着替えていないのだから。


「こっちや」


 野菜を自宅かどこかに届けたあと、ハナに連れられ二人は集落からすこし離れた山中に分け入るのであった。


 東屋といえばいいのか、小さな建物が見えてくると、立ち上る湯気と共に硫黄の匂いが鼻につく。温泉がそこに湧いているのだ。

 ハナも一緒に入るつもりらしいが、タラシのシュウは当然気にも留めず、子供だからとサトラもそれほど気にすることなく、極自然に東屋に足を踏み入れた。


 そこで起こったのは、乙女の悲鳴。

 どうやら、サトラ王子と同じく畑仕事で泥と汗にまみれたサラ王女とミーシャが、村人にでも聞いたのだろう、一足先に来ていたのだ。

 一糸纏わぬ姿で、今まさに温泉に入ろうとしているところであった。


「ふえ~~ん! もうお嫁に行けな~い」


「見てはいけません!」


 かなり魔力が上がったサラ王女は、泣き出したミーシャを庇いながら、そして片手で自分の豊満な胸を隠すようなポーズで火球魔法を使った。

 特大の火の玉が二人を襲い掛かる。


「いいですか! 私たちがいいと言うまでそこにいてください! さ、ハナさん、一緒に入りましょう」


 地面に這い蹲る男二人にサラ王女はピシリと言い放ち、呆然とするハナを連れて温泉に向かうのであった。


「……あのじゃじゃ馬王女め~~。いつかヒイヒイ言わせてやるからな!」


「……おい、よせよ……またボクまで巻き添えになりそうだ……」


 哀れ、黒焦げの男どもは、ハナが回復魔法をかけてくれるまでそのまま放っておかれた。

 後で女性陣と交代で温泉に浸かったときにはかなり沁みたという。


 

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