ステータス
直人は目を覚ます。
すぐさま、自分がいるこの場所が自分の部屋ではない事にきずく。
そこはログハウスの様な作りの小屋であった。
直人は薄い布を掛けられ、体操マットの様な、マットレスに寝かされていた。
「知らない天井だ。」
「・・・あっ、起きた。」
口から出たお決まりの直人のセリフに、反応する声が聴こえた。
声は高めの少女の声だった。
おそらく、この小屋の住人かなにかだろう。
直人は隣に立っている、少女に目を向ける。
金髪に近い茶髪に翡翠の様な瞳。整った顔立ちは直人の二次元嫁に匹敵する程であった。
「どこか痛いところは・・・。」
「あっはい、大丈夫です。・・・ここは?」
「ここは私の家だよ。あなたは川の上流から流れて来たの。」
「そうですか・・・。」
「・・・。」
静寂。
生粋の現代オタクである直人は当然の如く非モテでありボッチであった。その為、目の前にいるような美少女との会話の経験など無かった。
そして、川守である少女も人との会話をするのは得意とは言えなかった。
直人は必死に思考する。
自分が今まで読ん来た古今東西の異世界転生ものの知識をフル活用し、この沈黙を打破するために。
まずは、この美少女が何者か聞いてみることにした。
「あなたは誰ですか?」
「私?川守。」
「川守さんですか?」
「うん。」
まさかの苗字。
しかも、和名。
そういえば、今までなんの疑問も無く目の前の美少女・・・川守と会話出来ている。
思い切って直人は聞いてみる。
「もしかして、ここは日本ですか?」
「ううん。ここはヤハエ王国のゴルダ領だよ。ニホンって国は聞いたことない。」
どうやら、日本ではないのようだ。
聞いたことのない地名である、異世界と言う事だろうか。
まだ色々と疑問が残るが、今度は少女・・・川守から口を開いた。
「あなた、名前は?」
「えっと、・・・三枝 直人です。」
「そう。珍しい名前ね。あっ、そうだ。
本当に異常がないか念のためアナライズペーパーで調べるから。」
「アナライズペーパーって何ですか?」
「えっ?」
「えっ?」
「アナライズペーパーだよ?」
「すいませんわかりません。」
不味い。直人は自分が何かとてつもない事を言った事にきずく。
「もしかして、記憶喪失?」
「!、えっと、多分そうかな。」
・・・どうやら、勝手に誤解してくれたようだ。必死だった直人はこのまま話を通す事にした。
「・・・そう。じゃあアナライズペーパーのことも・・・。」
「覚えていないや。」
「分かったわ。ちょっと待っててね。」
そう言うと川守は、何かの表のが書かれた紙を持ってきた。書かれている表は全ての欄が空欄だった。
「これがアナライズペーパー。一番上の場所に名前を書いて、身体のどこかに貼り付けるて使うの。」
直人は川守に言われたように、空欄の一番上に名前を書き、腕に貼り付ける。
すると、残りの空欄に文字が浮かび上がる。なんだかあぶり出しに似ている。
【サエグサ ナオト】
【男】
【正常】
【生命力強化、言語習得、コンテナ】
どうやら、この世界ではステータスをこの様にして確かめるようだ。
「上から、名前、性別、状態、スキルだよ。うん。本当に大丈夫みたいね。多分あなたがあの川を身一つで下れたのは生命力強化のお陰ね。他のスキルは聞いたことのないスキルね」
川守がそう教える。
直人は考える。おそらく言葉が通じるのは言語習得のお陰だろう。コンテナはいわゆるアイテムボックスやストレージと呼ばれる物だろうか。おそらくこれが直人の望んだチートだろうか。
直人はそう思考を巡らす。
しかし、その思考が長く続くことは無かった。
『ガァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!』
直人にとって、とても聞き覚えのあり、2度と聞きたくない鳴き声によって・・・。
※紛らわしいですが直人はこの作品の主人公ではありません。
明日も1話投稿
夏休みの課題が物理的に襲ってくるホラゲって斬新じゃない?