五話 義姉登場
私は電話をし終えた後、いつまでも同じ場所にいるのは危険だと思い、急いで玄関の向 かって走り出す。
玄関に向かっていると5分ほど経っていた。
(どうやらここら辺にはいないみたい。急ごう。玄関で待つのが一番安全)
私はそう思いながら走っていると後ろから大きな影が見えた。
「ふ、ふふふ、ふふふふふふふふ。玄関に向かって来ることなんて最初から分かっていた わ」
「そ、そんな!?」
私は驚愕する。
「さあ、なんで私とナツの愛の巣に不法侵入してきたのかしら~?」
「ひいいいいいい!!!??」
私は本当に恐怖した。
っていうか怖すぎ・・・。
・・・
僕は家にようやく着いた。
そもそも、学校から家までノンストップで走れるほど僕は体力ないし・・・。
普通に途中で休憩を入れた。
最悪、危なそうだったらあいつらが出るだろうし。
すると何か話していた。
「さあ、さぁさぁ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
高原さんの顔には恐怖で彩られた顔になっていた。
「何故!?私と私のナツの愛の巣に勝手に入って来たのかしら~?」
「僕は姉さんの所有物じゃない!」
僕は姉さんの頭を軽くすっぱたく。
「いたっ!?」
「しかもここは高波家の家であって決して愛の巣ではない!!」
「ナツ~~」
擦り寄るように姉さんが僕に抱きついてくる。
「ごめんね。こちらは僕の姉の高波美香。見た通り、ブラコンという病気を患っているんだ」
「ええ⁉」
高原さんが驚く。まあ、そりゃあ驚くよね。あんな変態な感じで迫っていれば。
「姉さん。姉さんが追いかけていた子は僕のお客様」
「ええ!?」
姉さんも驚く。
「キッチンでごそごそしていたからつい泥棒かと思っちゃって」
「そんなことはいいから、ほら謝る」
「うう。ごめんね?怖い思いさせて」
「い、いえ」
僕は安心する。
「しかし、よかったね」
「へ?何が?」
「姉さんはこの歳で異種格闘で最強を誇っているからね」
「えええええええええ!??」
「少しでも立ち向かおうとしていたらボコボコではすまない凄まじいことになっていただろうし」
「後少しで、立ち向かうところだった」
「よかった~。本当にギリギリだったんだね」
「う、うん」
僕は安心してため息をつく。
それはそれとして、僕は姉さんに聞く。
「どうして帰って来たの?帰りはいつも週末でしょ?」
「ええ。今日はお父さんとお母さんが帰って来る日でしょ?だから帰って来たの」
「ものすごい薄い理由だ。思いっきり嘘だね。本当は?」
僕は姉さんの目を見てすぐに訊き返す。
「うぅ。相変わらずナツの目は精度良すぎだよ」
「目?精度?」
高原さんは不思議そうに僕を見る。
「ああ。僕の目はどういうわけか分かんないんだけどさ。その人がどんな人か、どんなことを考えているかをその人の目を見れば見抜くことが出来るんだ。僕は言いやすいから通目って略して呼んでいるけど」
「えっ!?じゃあ」
「大丈夫。僕はよっぽど信用している人か、怪しい人にしか使わないようにしているから」
僕は姉さんを引き剥がそうとしながら言う。
「まあ、最初に会った時に少しどんな人かは見させてもらったけど」
「それでもナツが連れて来たんだからいい子なんでしょ?」
「うん」
僕は頷く。
「でも、ここにいるために理由ぐらい説明して欲しいな」
姉さんが高原さんに昨日僕が同じように聞いたことを聞く。
僕と同じことをしたって言ったら面倒なことになるから言わないけど。
「わ、分かりました」
高原さんは気圧されていた。
これは後になって聞くことだが高原さんは武道の心得がいくつかあるからしっかりと自 分を律しているのだが、今回ばかりは姉さんの圧倒的美しさに圧倒されていたという。
まあ、姉さんは姉さんの学校とここらの近所で人気者だからな~。
「よく分かったわ」
僕が物思いにふけっていると説明が終わっていた。
「ただ、これだけは言わせて」
姉さんが真剣な顔になる。
「ナツは私のものだからね!」
「何言ってんの!僕は姉さんのものじゃないからね!」
「そ、そんな~」
露骨にがっかりする。
「だから僕に嘘や騙しは効かないから」
「あ、ばれた?」
急にけろっとする。
「そんなことじゃお姉ちゃんはへこたれないよ~」
「そんなことはとうの昔に諦めて分かっているよ」
「うふふ~~」
姉さんが懲りずに僕に抱きついてくる。
「まあ、そんなことより、姉さんが帰ってきたことだしちょうどいいや」
僕は姉さんに抱きつかれながらも高原さんに向き直す。
「これは少しの間でもここにいるための絶対条件なんだけどね」
僕は真剣な顔になる。
「ここにいる間は姉さんの友達ってことにしておいてね」
「えっ?どうして?」
高原さんは理解出来ずに訪ねてきた。
「あのね、僕たちの親はいざ、僕が女の子と仲良く話していたらすぐに結婚やら婚約やら 騒がしくて面倒なことになるの」
「ええ!?」
「つまり、もしも僕と高原さんが姉さんの仲介もなく仲良く話してなんかいたら・・・」
「そういうことになる、と」
「うん。だから気を付けてね。そういうのが嫌で家出してきたのにそうなったら本末転倒でしょ?」
「分かりました」
僕は頷いた。
「あ、後」
「?」
「もう、その猫かぶりは止めていいよ」
「⁉」
「言ったよね?そういうのが分かるって」
「え、ええ」
高原さんがたじろぐ。
「だから、もうそんな無理はしなくていいよ」
「そんな、無理なんてしてないです」
「あ、認めたね?」
「うっ!?」
「体にも精神的にも悪いから素でいいよ。ストレス溜まるでしょ?」
「そうよ」
姉さんが同意してくれた。
「わ、分かりました。後からやっぱりなしとか言わないでくださいよ」
「うん」
僕は即、頷いた。
とりあえず、家に帰ってご飯にすることにした。
読んでくれて感謝です。
次の話もよろしくお願いします。