三話 誰だって怒るときは怒る
姉さんを何とか宥め、家に入る。
「って言うか、なんで姉さんがここにいるの?」
姉さんが今度帰ってくるって言った日付より早い。
「なんか実咲ちゃんがナツの学校に転校してきたって母さんから聞いたから。どういうつもりなのかしっかりと問いたださないとな~と思って急いで帰って来たの」
母さんめ。
僕の部下の誰かに聞いたな?
誰だ?
ウサギか?
それとも真面目なサルか?
全く、親には包み隠さず僕の正体を明かしているけど、僕の部下を簡単に使わないで欲しい。
「ハハハッ。考え過ぎだよ、姉さん」
動揺しながらもはぐらかそうとする。
「じゃあ、なんでナツは実咲ちゃんのこと名前で呼んでたの?」
「うっ。そ、それは・・・」
いきなり本題を切り出されてつい、言葉を詰まらせてしまう。
「なんでなの?」
問い詰めるように顔を近づけて聞いてくる姉さん。
「あ、あれから、より親しくなったんだから名前で呼ぼうかなって思ってさ」
あれからと言うのは勿論のこと、あの不良騒動のことだ。
「ふーん?」
僕のその答えに疑わしげな目で見てくる姉さん。
「ホントに?」
「ほ、本当に・・・」
か、躱せるか?
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・まあ、いいでしょう。そういうことにしておいてあげる」
そう言って視線を外す。
「ホッ」
「ただし!」
「な、なに?」
こちらを再び真剣な目で見てくる姉さん。
「私のことを名前で呼んで!」
「はい?」
唐突に言われて一瞬ポカンとしてしまう僕。
「だって、実咲ちゃんだけずるい!」
「ず、ずるいって言われても・・・」
「私も名前で呼んでほしいの!」
そう言って訴えかける姉さん。
「・・・・・・美香」
僕はギリギリ姉さんに聞こえるくらいの声でボソッと名前を呼ぶ。
姉さんはそれを聞いて笑顔だ。
「はい!これでおしまい!」
「えー!」
「姉さんは名前を呼んでくれって言っただけだしー。ずっと呼べなんて言ってないしー」
子どもの言い訳みたいにする僕。
動揺してるわー。
僕、動揺めっちゃしてるわー。
「うー」
「それじゃ、家に入ろ?」
そう言って僕は姉さんに家に入るように促す。
「・・・納得がいかない」
「勘弁してよ。姉を相手に呼び捨てなんて出来る弟はそうはいないよ」
「ナツが呼び捨てにする弟になればいいじゃん・・・」
口をとがらせて言う姉さん。
ちょっとイラッときたよ?
・・・・・。はぁ、仕方ない。
「姉さんを呼び捨てにするってことは姉さんって呼ぶなってことだよね」
「うん」
「じゃあ、僕は姉さんの弟じゃなくなるんだね・・・」
「えっ?」
「じゃあ、僕は姉さんとは家族じゃないから姉さんとは一緒に住めないね」
「えっ?えっ?」
僕の言葉を聞いて明らかに動揺する姉さん。
「じゃあ、僕。姉さんがこの家にいる間はどこか別の場所に住むよ」
「な、なつ?」
「だって、僕は姉さん・・・いや、美香さんとは他人だもんね」
「た、たにん?」
明らかにショックを受けている姉さん。
だが、いつもいつも振り回されているんだ。
僕だって怒らないわけじゃない。
そこまで聖人じゃないんだ。
「じゃあ、僕は行くから」
たまには反省してもらわないと。
僕は家に入らず、門の方に向かう。
「それじゃ、僕は行くから。じゃあね、美香さん」
今度は僕が家出だ。
読んでくれて感謝です。
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