プロローグ
ここから第二部開始です。
よろしくお願いします。
それではどうぞ!
そこは懐かしい場所。
今はもうほとんど思い出すこともない私が昔いた施設。
その部屋の一室。
私たちが遊び部屋と呼んでいた場所。
そこに私はいた。
分かっている。
これは夢だ。
明晰夢ってやつだ。
私は施設では人気者だった。
だっていつも笑顔でみんなの言うことを聞いていたから。
同じぐらいの年頃の子たちには優しく、大人の言うことはしっかり聞いて、年上のお兄さん、お姉さんの言う通りにした。
これは捨てられた私の処世術だ。
身を守る術だ。
自分を押し殺すことはあの当時は本当につらかった。
でも、あの子には通じなかった。
それは私がこの施設に来て少し経った頃。
私が大分この施設に馴染めてきて、人気になった頃。
私はいつもの『いい子』をするため、ふと偶然視界に入った男の子に声をかけた。
「ねえ、一緒に遊びましょ?」
あの頃の私は調子に乗っていたのだろう。
自分に人気が出始めて安心していたこともあって一人でいるその男の子に手を差し伸べてあげた。
そういうふうに思っていた。
自分が上でこの子は下だと無意識に認識してしまった。
だからその子の言葉を聞いたとき、私は泣いてしまった。
「それ(いい子)をほめてくれるお母さんもお父さんもいないのに、どうしてそんなに頑張るの?」
その言葉で私の中で何かが変わった。
その後、泣いてしまった私を見た大人の先生がその男の子を叱った。
男の子は悪くないのに。
でも、私は泣いていてそのことが言えなかった。
それからだ。
私がその男の子を気にし始めたのは。
私はことあるごとにその男の子に話しかけた。
遊ぼうと声をかけた。
なかなか会話してくれなかったし、遊んでくれなかったけど。
今思えば、あれが初恋だったのかもしれない。
自分が一生懸命頑張って人気者になったことに気づいてくれた。
本当の自分を出せなくって本当はつらかったことに気づいてくれた。
私がそこ(今の私)にはいないと初めて気づいて貰えたのだ。
ある日。
めげずにその男の子を遊びに誘ったらついに「いいよ」と言ってくれた。
本当にうれしかった。
もし断られたら今度は泣いてしまうかもと思っていたので本当によかった。
施設にある数少ない遊具であるブランコで一緒に遊んでいたらその男の子がふと言っていたことがあった。
「正直なことって怖いことなんだ。何でも分かるって怖いことなんだ」
私はその言葉に疑問を持って質問したのだ。
「どうして?」と
男の子は言った。
「目の前のことが本当じゃないって分かっちゃうから」
「よくわかんな~い」
「そっか」
男の子は寂しそうに笑っていた。
成長した今の私が思うにあの男の子は精神的な成長が早かったのだろう。
だって、あんな言い方をするのだから。
その一回きりの遊びだけで男の子はそれ以降遊んではくれなかった。
それでも声をかけ続けた。
だって、あの頃はそうするしか思いつかなかったから。
自分が恋しているなんて思わなかったから。
でも、終わりは唐突に来た。
私はお父さん、つまり高原家に引き取られたからだ。
もう、男の子に会うことが出来ない。
そう思ったら悲しくなった。
でも、私がいなくなると聞いてもいつもと変わらず無表情な男の子にイラッと来た私は言ってやったのだ。
そのとき持っていた気持ちを伝えるために。
「さよなら。もし次に会ったらあな・とけ・・したいな。だから、わたし・・と、わす・な・で」
泣きそうなのを堪えながらしっかりと伝えた。
最後に男の子の顔を見ると嬉しそうな顔をしてくれていた。
・・・
そこで、私は目が覚めた。
「懐かしいな」
昔を思い出して少し干渉に浸る。
でも、時間がそんなにあるわけではないので制服に着替えるが、そこでハンガーに懸かっているもう一つの制服を見つけてうんざりする。
そう、私はつい最近転校したのだ。
今、着ている制服は前の学校の制服だ。
二度手間になったことに若干イライラしながら今の学校の制服に着替えなおす。
今日の課題を思い出す。
憂鬱な日々の始まりだ。
読んでくれて感謝です。
次の話もよろしくお願いします。




