二話 お泊り
女の子はポツポツと話し始めた。
「私のお父様がある日突然、勝手に許婚がいるから今度会えと言い出したんです」
「へえ~」
「それで、私は反対したんですけど決定だって言われて・・・」
「なるほど。それで逃げて来たと」
「はい」
「う~ん」
僕は考える。女の子は困っているみたいだし。
「ねえ。泊まる所あるの?」
「え?い、いいえ」
「じゃあさ、僕の家にいなよ。ほとぼりが冷めるまで」
「い、いいんですか?自分で言うのもおかしいですが、素姓知れない者を会ったその日に家に泊めるなんて」
「うん。まあ、明日は父さんのお客さんが来るから少し静かにしていてくれればそれでい いよ」
「あ、ありがとうございます」
「君、名前は?」
「私は高原実咲です。あなたは?」
「僕は高波夏月。よろしくね」
高原さんは一見お淑やかな女の子だが、実は僕、高原さんが猫をかぶっているということを見抜いていた。
素は自信過剰で、元気で明るい子だと。
「じゃあ、客室で寝泊りして。君は今日から僕のお客さんだ」
「はい」
明日は両親が泊りがけの出勤から帰って来る日だ。
その時に父さんの親友も連れてくるらしい。
姉さんは僕よりいい学校に行っているため、一週間の中、土曜、日曜以外は寮で寝泊りしている。
僕がこの家に来て何日か経ったとき、どうやら姉さんの心の何かに僕という存在がクリティカルヒットしたらしく、気づけばブラコンになっていた。
まあ、高校生にもなればもうお年頃。
ブラコンも鳴りを潜めると思っていたのだが、この十年で姉さんのブラコンは拍車がかかっていた。
なにやら最近は弟としてではなく、異性として見ている節がある。
確かに血は繋がってはいないが一応姉弟なのに。
今日は4月20日、月曜日。
姉さんが帰って来るまで残り、四日ある。
大丈夫だ。何も心配はない。
そう考えていたらついつい遠い目をしていたが気付いたら部屋に着いていた。
「それじゃあ、疲れていると思うし、まだ早いけど今日はゆっくりして。暇つぶしにゲームとか置いてあるから。もし用があったらドアの近くにボタンがあるからそれを押して。僕の部屋でチャイムが鳴るようになってるから」
「はい。ありがとうございます」
そう言って客室を出た。
「ふぁああ。ねむ。明日は早いだろうしもう寝ておこうかな」
そうして僕は部屋に戻り、眠りについた。
かなり早かったけどインパクトの強い出来事があったからか朝まで起きることはなかった。
一応チャイムが鳴ったら起きたよ?高原さんにトイレの場所教えてなかったんだ。
うっかりしてたよ。
ついつい腰を90度しっかり曲げて謝ったね。
・・・
「ナンパかな?」
私、高原実咲は客室で考えていた。
「でも、そんなに悪い人じゃないみたいだし」
それでも考え込む。
「まあ、私がほいほいついて行った時点でナンパだったら成功して違うどこかに連れて行 かれていたわよね。少なくとも、家に連れて行かれた時点で襲われていてもおかしくない。多分、本当に親切で連れて来てくれたんだ」
そう思い直し部屋を見る。
「私の家と同じくらい大きい家だわ」
こんな大きな家はどこにいてもあまりない。
他人の家に初めて入ったからちょっとそわそわしてしまった。
「でも、使用人がいない・・・、みたい・・、だったし・・・・・。」
そこで私の思考は止まった。
気付くと眠りについていた。
まあ、トイレに行きたくなった時に一回起きたけど。
トイレの場所を教えてもらってなかったことに気づいた時には絶望したけど。
ボタンを押したらすぐ来てくれて助かったわ。
ものすごい勢いで謝ってもくれたし。
まあ、出来れば早めに教えて欲しかったけど・・・。
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