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ハイ・ハイ・ハイ!  作者: ティキ+
第一部 始まりはその目から 
1/59

プロローグ

はじめまして!

ご存知の方はどうもです!

新連載です。

楽しんで頂けたら幸いです。

では、どうぞ!


プロローグ



 始まりは物心が着くか着かないか、そんな時期だった。


 気づいたとき、すでに僕は孤独だった。


 それは僕が三歳の時。

 

 始まりは親だった。

 

 親が僕を捨てたのだ。

 

 養護施設に僕を預けたんじゃない。

 

 文字通り僕を捨てたのだ。

 

 捨てることが決まった時のことはいつになっても忘れることはできない。


 僕の目の前で両親が決めて僕に直接その場で僕に捨てるといったのだから。

 

 そこから僕の施設での生活が始まった。




               ・・・




 それから三年間が経った。


 親に捨てられたことが僕のトラウマになったのか、親しい人を作らなくなった。


 作れなかったと言ってもいい。いや、むしろそちらの表現が正しい。

 

 簡単に言えば、誰にも心を開かなくなったのだ。


 そんなある日。


 施設にある女の子がやってきた。


 その子は明るい性格ですぐに施設で人気者になった。


 でも、なぜか不思議なことにあるときを境に女の子は僕に話しかけて来るようになった。


 それも一回だけじゃない。初めは面白半分や罰ゲームか何かだと思った。


 しかし、それは違った。


 僕を見かけるたびに何度も何度も話しかけてきたのだ。


「いっつもいっつも、だらしない顔してるわね」


 そう言って毎回毎回話しかけてきた。


 僕は顔には出さなかったが、話しかけてくれることが嬉しかった。


 だけど、トラウマが邪魔して僕はその気持ちを女の子に話すことが出来なかった。


 それに、こんな暗い僕が施設の人気者に話しかけるのはダメだとも思っていた。


 だからいつも生返事しかできなかった。


 そして女の子が来てから少し経ったある日、誰かを引き取りに恰幅のいいおじさんがやってきた。


 どうやらどこかのお金持ちらしい。


 そのおじさんは娘を早くに亡くしたらしく、明るくて元気があってどんな人でも平等に接することのできる子を引き取りたいらしい。


 何人か候補はいたが、最後にはあの女の子が選ばれた。


 僕にいつも話しかけていたことが決定打になったらしい。


 大人たちが僕に話しかけている姿を見ており、そのことを話したらすぐに決まった。


 その子は引き取られるとき、みんなにさよならの挨拶をした後、どういう訳か僕のところに来た。


「さよなら。もし次に会ったら・な・・け・・したいな。だ・ら、わた・・・と、わす・・・で」


 僕はそれに頷いた。


 その言葉がたまらなく嬉しかった。


 この子は僕を捨てないと感じたからだ。


 そして女の子は引き取られていった。


 僕はたまらなく悲しかった。


 そうして気づいたんだ。


 僕はあの女の子が好きだったことに。


 暗い僕にいつも楽しそうに、嬉しそうに話しかけてくれたあの子が。


 でも、気づいたときには遅かった。


 あの子はもう引き取られていったのだから。


 もしかしたらあの女の子が遊びに来るかもと思い、毎日待ち続けたが女の子は一向に姿を見せなかった。


 施設の大人に聞くとどうやらかなり遠くに引っ越してしまったらしい。




                ・・・




 それからまた一年が経った。


 僕はさらにより一層暗くなっていた。


 もう会えないという気持ちが僕をそうさせたのかもしれない。


 あの子がいなくなり、僕に話しかけてくれる人はいなくなった。


 もちろん、施設の大人たちは話しかけてくれていたけど、事務的なことだけだ。


 そんなある日、仲の良さそうな明るい夫婦がやってきた。


 僕はそんな仲の良さそうな夫婦を見て自分とは対照的でその光景が眩しく、そして羨ましくなった。


 僕には縁がないものだと思っていたから。


 その夫婦は子供を一人、引き取りたいらしい。


 でも、条件を言わず、自分たちの目で判断したいらしい。


 それはこの施設ではごく一般的にあることだから施設の先生もすんなりと許可した。


 でも、その夫婦の選び方は少しおかしかった。


 子どもたちを集めて、一人ずつ目を見ていったのだ。


 当然、僕もその中にいた。


 僕は嫌がったのだが先生に強引に連れられて来てしまった。


 夫婦は順番に見ていって最後に僕が残った。


 最後に残った僕以外には納得のいく子がいなかったらしい。


 そして、最後に僕の目を見た。


 その瞬間、二人は立ち上がった。


「「この子を引き取らせてくれませんか?」」


 と同時に言った。


 その言葉に僕は動揺を隠し切れなかった。


 どうして僕なんかがいいのだろうと不思議に思った。


「これからよろしくね」


 夫婦の内の女の人がそう言って僕に話しかけた。


 でも、僕はそこでも生返事しかできなかった。


 明日迎えに来ると夫婦は言い、帰っていった。


 僕は数少ない自分の物をリュックサックに詰めた。


 引っ越し。その言葉に少なからず、ワクワクした。


 晩御飯が終わったあと、施設のみんなにお別れの挨拶をして僕はそのまま眠った。


 特に個人的にお別れをする人もいなかったからだ。


 次の日になり、夫婦がやって来た。


「さあ、行こう」


 僕の手を握りながら男の人がそう言う。


 僕は手を繋がれたことにビックリして、返事が出来なかった。


「ふふっ。緊張しないで?さあ」


 女の人にも手を握られ、そう促されて僕はそれに頷いた。


 そうして僕は引き取られた。


 そして、夫婦の家に出発した車の中で僕は意を決して聞いてみた。


「どうしてこんな僕を引き取ったんですか?」


 すると


「あなたにはとても強い心があると思ったの」


 と女の人は言った。


「君には将来、人の心を読む力が、人の本質を見抜くことが出来る力がある」


 と男の人が言った。


「そして、一番の理由はね、私たちは子供が大好きなのよ」


 と女の人が言った。


「「だから私たちの息子になってくれないかな?」」


 仲良くシンクロしたその言葉に僕は


「うん。僕には難しいことはよく分からないけど、こんな僕でもいいならよろしくお願いします」


 少し子供っぽくなかったが、しっかりとその問いに答えた。


 嬉しくて少し震えていたけど、それでも。


 そして移動から一時間ほど経ったとき、家に着いた。


 着いたは着いた。でも、豪邸だった。


 外観はどこか外国を感じさせたけど、何故か不思議と帰る場所なんてないと思っている僕に自分の居場所だと感じさせる。


 そんな優しい雰囲気の家だった。


 僕では一日使っても見て回れないくらいだ。


「ここがこれから君の家になるんだよ」


 男の人はそう言った。


「ここが?」


「ああ」


「すごいお金持ちだったんですね」


「そんなにすごくはないさ」


 そう言って門をくぐる。


「すごい。あんなに家が遠い」


「まあ、五分もしたら着くから」


 そう言うと門の近くにあった車庫に車を駐車し、夫婦は車から降りた。


 僕もそれに続くように車から降りた。


 そうして夫婦は僕を両サイドから挟んで歩き出した。


 歩くこと五分。家に到着した。


「中もひろーい」


 僕は玄関からそのまま数歩歩いてエントランスの中央に止まり、ぐるりと回りながらそう呟く。


「帰ったよー!」


 そう女の人が言うと奥から声が聞こえた。


「おかえりなさーい」


 ぱたぱたと女の子が走ってきた。


「この子が新しい家族?」


 女の子は首をかしげながら言う。


「何歳なの?」


「ななさい」


 初めて会った自分と同じ年くらいの女の子につい緊張して舌足らずに答えてしまった。


 でも、女の子は気にしなかった。


 僕のその言葉が嬉しかったのか、女の子は満面の笑みを浮かべた。


「じゃあ、私がお姉ちゃんね!」


 僕と女の子の会話が一旦終わると男の人が話し出した。


「では、自己紹介をしよう」


 そう男の人が言って三人が僕の前に並ぶ。


「君の父親になる高波翼だ。よろしく」


「君の母親になる高波沙耶子よ。よろしくね」


「これから君のお姉ちゃんになる高波美香だよ。これからよろしく~我が弟よ!」


 全員が言い終える。


「じゃあ、君の番だ」


 お父さんが僕に言う。


「僕の名前は夏月。よろしくお願いします」


 僕は一拍置いて恥ずかしげに言う。


「お父さん、お母さん、お姉ちゃん」









 これは僕が二人の女の子と新しい両親と出会ったことで始まった物語だ。





読んでくれて感謝です。

この作品の投稿は不定期です。

最初のうちはドンドン更新しますが、おそらく(というか十中八九)途中で更新が鈍ります。

でも、必死に構想を練っているので末永いお付き合いをどうぞよろしくお願いします。

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