ウサギは犠牲になったのだ。
おや、《鑑定》と《魔力促進》の様子が…?
ホテル(宿です)のベッドで目を覚ます。
完全に夜になってからログアウトしたので、もう日は出ている。
部屋から出て一階のロビーへ。ヒスイはまだ来ていないようだ。
「なぁ、ヒスイはどした?」
「さぁな、多分LINEの返信で忙しいとかだろ。もう少しで来るんじゃないか?」
「そっか、お前ら相変わらず人気者なんだな。お疲れさまだよ、ケッ」
中一の頃はみんなでよく一緒にいたが、中二のクラス替えでクラスが俺だけ別になった。その中二の間に、俺は結構オタクが進行して、あいつらはカーストのトップになっていた。中三ではクラスが一緒になったが、取り巻きみたいなやつがいっぱいいて、学校じゃあ全然話さなくなった。放課後はよく俺の家で遊んだけどな。なにが「アンタみたいなやつは戌亥君たちといたらダメなの!そんなこともわかんないの!?」だ。ブスは好きになってくれる人もいるだろうが、性格ブスは基本救いようがないぞ。戌亥たちにはバレてないと思っているのが更に哀れだ。
「そんなこと言うなよ。話したこともない女子にいきなり呼び出されて、告白されて、断ったら泣かれるんだぞ。俺も話したことない相手と付き合う気にはなれないけど、何回も繰り返すと俺が悪いことしてるように思えてくるし」
「そりゃぁ、まぁ、辛いだろうとは思うけど。俺はそんな経験したことねーしな」
「ヒスイも同じようなもんだぞ?俺たちがいる時しか素は見せてないし」
「は?あいつが告白?なんだそれ、ブフッ。女子高生のマジウケるとか意味わかんなかったけど、今分かった気がする。プスッ」
「お、おい」
「あの~」
ダイとミーナが何かを言いにくそうにしている。
「なんだよ、今久々に思い切り笑ってるのに」
「へぇ、そんなに面白いんだ?」
「あぁ、ここ2か月で一番だ。プフフフッ」
「私にも、詳しく、聞かせて?」
メギリ。
「ぎゃぁぁぁぁちょおま痛い痛い痛い!ヒスイお前魔法職だろなんでそんな力強えんだよぉ!」
「魔法スキルのLv.6でエンチャントを覚えるの。火属性はATKの強化よ。で、聞かせなさいよ、何が面白かったの?」
「ちょ、も謝るから許して!お願い!なんか出る!頭から出るぅぅぅぅ!」
「誠に申し訳ございませんでした」
「朝からMP使わせんじゃないわよ。ったく」
「俺だってHPが…減ってない?」
「町の中じゃエンチャントは発動できても攻撃呪文とか基本使えないし、プレイヤーへの攻撃もできないわよ。剣を握ったりしても、HPは減らないわ」
「じゃあなんでさっきのアイアンクローできたんだよ!おかしいだろ!」
「仕様です」
「なら仕方ないな」
仕様なら仕方がないのだ。たとえそれがバグにしか思えなくても。
門へ向かう途中、ふと思い出して尋ねる。
「んで、さっき武器の説明を聞き忘れたんだが、教えてくれないか?」
「そういえばそうね。じゃあ、私からは杖について説明するわ。杖は使用すればするほど、その杖を使った魔法の威力が上がるの。長く使っていると、たまに新しい補助魔法を覚えたり、ステータスに補助が付くこともあるわ。ミーナの指輪も同じよ。後、使っていると耐久度が減っていって、0になると壊れるの。0にならなくても、30を切ると性能が下がって、耐久度の減りも大きくなるわ。耐久度の減りは鍛冶屋とかの装備品を扱う店で補修してもらうの。耐久度が低いとかかるジェネも多くなって、かかる時間も長くなるから、早め早めの補修が大事よ。『装備』を開いて、確認してみなさい」
言われた通り『装備』を開く。木の杖を鑑定すると、
木の杖 武器(魔法) 耐久度92/100 熟練度12/100
ATK+3 MAT+6
木でできた杖。魔法の威力を底上げする。性能は「ないよりマシ」というくらいなので、早めに買い替えるべき。
「確かに、耐久度と熟練度があるな。耐久度が8減って、熟練度が12上がってる」
「え!?熟練度って何よ?そんなの見えないわよ?」
「さっきお前が使い続けたら~って説明してたじゃん。その関係じゃね?」
「そんな値表示されないわよ!…アンタ、木の杖に《鑑定》使った?」
「おう、レベリングも兼ねて。さっきステータス画面で見れるものに使っただけでスキルレベルあがったから、経験値もらえたってことだろ。レベルが上がって損はないだろうから、基本使っていくつもりだ」
「多分だけど、《鑑定》のおかげだろうな。スキルレベルが上がったら色々見えるものが増えるんじゃないか?新しいことが分かったら、俺たちにも教えてくれよ」
「ん。おけ。で、布のグローブについて教えてくれよ」
「そうだったな。とは言っても杖と変わりないぞ。さっきお前が発見した熟練値が上がれば性能が上がって、新しい武技を覚えることがあって、耐久度が0になると壊れて、30を下回ると性能が落ちる。補修について補足しておくと、スキルによって扱える素材が違うから、金属が素材の装備は鍛冶屋に、布が素材の装備は裁縫屋に、と、素材に合わせて店に行かないと直せないぞ。耐久度の減りが大きいと、補修に素材が必要になることもある」
「そっか、ありがとな」
「武器についてはこれくらいで大丈夫でしょ。一応言っておくと、各魔法も多分その熟練値があるわよ。後でみてみたら?」
「マジか。メインを火属性にしようと思ってたけど、他のも使ってみようかな」
「他の人より多くの情報が分かるなら、色々と魔法の用途とか、効果とか、調べやすいんじゃない?βの頃に聞いたんだけど、取得できるようになるのに何らかの条件を満たす必要があるスキルもあったみたいだし。一つの属性魔法で隠しスキルを発見したら、その条件は他の属性にも応用できそうだと思うんだけど」
「それもそうか。なら今日は《鑑定》と火の魔法のレベルを重点的に上げようかな」
「そうしときなさい。MPに余裕が出来た時や、魔法の威力を削っても対応できそうな時は《魔力調節》も使ってみたらいいと思うわ。さっきアンタが言ったことだけど、レベルが上がって損はないわ。」
「コウの当面の目標もできたことだし、今日も頑張ろうな。ミーナは、無理するなよ」
「大丈夫ですよ。自分の身くらい自分で守れます。それに、本当にいざという時はダイが守ってくれますし、ね?」
「おう、お前のHPは1ポイントも減らさせないぞ」
武器の説明を受けていたらいつのまにかバカップルが出現していた件。
こんな感じで一日が経った。ラビたちのリポップが追いついてきたが、先行組は森にいるので狩りのペースが昨日より激しかったし、昨日より長く時間が取れたので、狩りの成果も大きいだろう。アイテムから確認する。
ラビの肉 素材アイテム ×24
ラビのお肉。さっぱりしていて脂身が少ない。
ラビのしっぽ 素材アイテム ×5
ラビのしっぽ。細くてフワフワしてかわいらしい。
ラビの耳 素材アイテム ×7
ラビの耳。愛好家が多いので、比較的高く売れる。頭につければアナタもうさぎさん気分。
ラビの角 素材アイテム ×16
ラビの角。石ころよりも柔らかく、丸っこいのでかわいらしい。
ラビの毛皮 素材アイテム ×18
ラビの毛皮。駆け出し冒険者がよく防具に利用する。手触りがいい。
SPDも上がる防具が作れる。
ラビットの肉 素材アイテム ×10
ラビットのお肉。ラビの肉より臭みが強いが、適切な調理を施すとかなりのものが出来上がる。
料理する人の腕前によってはSPDにバフが付くことも。
ラビットのしっぽ 素材アイテム ×3
ラビットのしっぽ。細くてフワフワで更にしなやかである。
腰装備に使うとSPDが強化される。
ラビットの耳 素材アイテム ×2
ラビットの耳。愛好家の中でも超人気の品。頭につければアナタもかわいいうさぎさん気分。
頭装備に使うとSPDが強化される。
ラビットの角 素材アイテム ×4
ラビットの角。ラビの角よりも鋭く、石ころよりも固い。しかし、金属を貫くほどではない。
装備の装飾に使うとSPDが強化される。
ラビットの毛皮 素材アイテム ×8
ラビットの毛皮。駆け出し冒険者がよく防具に利用する。モフモフ。
SPDも上がる防具が作れる。
ドロップ率なんかは調べていないが、耳としっぽがレアドロップ扱いっぽい。素材の用途まで教えてくれるのは《鑑定》のレベルが上がったからだろうな。
次はステータス。
Name:コウ Lv.6 人族
HP:128/150 MP:7/100
ATK:45/52 DEF:31/52
MAT:35/52 MDF:25/52
SPD:45/52 DEX:35/52
重量値:10/46 ステータスポイント:9
よし、いい感じだ。ポイントはDEFに4、残りはSPDに振ろう。
次はスキルだな。
選択中スキル
《火魔法》Lv.4→9《水魔法》Lv.2→4《風魔法》Lv.2→4《土魔法》Lv.2→4《光魔法》Lv.2→4《闇魔法》Lv.2→4《魔力調節》Lv.2→6《魔力促進》Lv.2→5《格闘》Lv.3→6《鑑定》Lv.4→10
控え:
スキルポイント:11
主に火魔法を使って、《鑑定》は常時かけっぱなし状態でいた。それでもLv.10なのでレベルの上がりにくさはかなりのものだ。《魔力調節》は帰る直前にMPを使い切る為に使ったとき以外はMPを温存する為に使ってみた。…効率が悪いというのが実感できた。レベルが上がれば変換効率も上がるだろうし、まだ慌てるような時間じゃない。
そうだ、改めて《鑑定》を鑑定しておこう。ラビットの肉なんかの表記も増えてたしな。
スキル 《鑑定》 補助系統スキル
様々なものの情報を読み取るスキル。対象を視界に入れなければ発動できない。基本的になんでも調べられる。
アクティブアビリティ:鑑定の魔眼
MPを5消費して発動。普通に鑑定するよりも多くの情報を得られる可能性がある。
「ファッ!?」
「なんだホモか」
「ちげーーーよ!えっとな、…」
鑑定の魔眼について説明する。
「それ、かなり使い勝手が良くなったんじゃないか?MP使うなら魔法関連のスキルにも経験値入るだろうし。まぁ、まだその効果の程が分からないけどな。」
「そっか、魔法関連にも経験値入るのか。今1回できるけど、何に使ってみようか?」
「そうですねえ、《魔力促進》はどうでしょう?取得するときに必要なスキルポイントが8もあるのにMP自然回復だけでは効果が薄すぎると思うんです」
「確かに、盾や剣みたいなメインウェポンになるスキルでも大体5から7ポイントなのに、重すぎる印象を受けるな」
「んじゃ、やってみるぞ…『鑑定の魔眼』!」
スキル 《魔力促進》 補助系統スキル
魔力の生成や魔法への変換を促進するスキル。MPの自動回復速度が上がる。
アクティブアビリティ:魔力生成促進
念じるだけで発動可能。MPを30消費する。10分間MPが10秒の間に1回復するようになる。クールタイム・1時間
発動可能条件:スキル《魔力促進》レベル10以上
「ファッ!?」
「やっぱりホモじゃないか(歓喜)」
「だからホモじゃねぇよ!」
こいつ腐ってやがる。中三の頃、俺と戌亥が遊んでたらジッ…とこっちを見てることがあったんだが、眼が、なんか、ドラ○もんが「温かい目」になってる時みたいになってたことがある。今確信した。こいつは腐ってしまったのか…。マモレナカッタ…。
取り敢えず魔力生成促進について説明する。
「それ、かなり高性能じゃない?なんでこんな便利なスキルが使われてないのよ?おかしいじゃない」
そうだな、確かに。
「んー。あ、分かったかも」
ポク、pチーン!位の速さでラプスが思いつく。速いよ。
「まず、コウ以外の、俺たちみたいな《鑑定》を持っていないやつは、武技の名前を掲示板や図書館で調べて発動してるだろ?その時、自分が使ってるスキル関連の情報しか集めないよな?《魔力促進》はβでも早々とクズ判定されたからそもそも調べる人がいなかったのと、えっと、ミーナに聞きたいんだが、魔法の名前が書いてある本って、少なかったよな?」
「そうですよ。確か、今でもウォーター・エンチャントやウインドウォールなんかの一部の魔法は名前が書いてある本が見つかっていないはずです。1属性でもいいので魔法を見つけてしまえば、他の属性も、例えば「ウインド」を変えるだけで使えますから、誰も気にしていませんけど」
「おう、説明ありがとな。ミーナが言ったように、魔法関連の情報は結構不足しているから、探す人が少なければ見つかり辛いに決まってる。他にも、スキルの効果がパッシブの効果しかないスキルもあったし、いや、コウの《鑑定》がある今は分からないか。ともかく、《魔力促進》もパッシブの効果しかないと思われているし、アクティブの効果がある補助スキルは、大体スキルの名前でアビリティが発動するから、アクティブの効果がないか試した奴がいても、『魔力生成促進』と言った奴はいなかったんだろう。」
「確かに、ありそうだな。」
「私含め、みんなマヌケだったってわけね…」
「なんだ、お前も持ってたのか、《魔力促進》」
「βの時は、だけどね」
「お前、それでよく人のことあんなボロクソ言えたな…」
「(眼逸らし)」
「まぁ、いいけど。でも、魔法主体の奴は、取っといた方がいいことが分かったんだし、使ってみれば?」
「私は使ってみましょうか。まだ弓は使っていないですし、魔法主体で戦っていますから、レベルも10までならすぐ上がるでしょうし」
「私も使おうかしら。確かに便利そうだし。」
ヲイ。
その後は昨日と同じく、ギルドで依頼を終わらせて、消耗品を買って、寝る。
残金はしめて4200ジェネなーりー。大した金額ではないと言われればそれまでだが、黒字は正直に嬉しい。夕食は、親子丼にした。何でも、他人丼はラビの肉の下処理が大変だから、厨房のシフトの多い日しか出せないらしい。親子丼もとても美味しかった。
明日も狩りの予定なので、さっさと寝る。
お休み、みんな。
地雷チート始めました。