初戦闘。
草原に入ったが、MOBが見当たらないので探しながら話す。
草原は3センチくらいの草が一面に生えていて、所々に少し背が高い草があるのが見えるのでヒスイに尋ねると、採取ポイントらしい。採取ポイントで採取するつもりで『採取』と発言するとアイテムがいくつか採れるそうだ。プレイヤーが採取した直後でも他のプレイヤーには問題なく採取できるらしい。
とりあえず採取ポイントを目指して歩き出す。
採取ポイントに到着したので、早速採取してみると薬草が3つ手に入った。そして、
『次の採取可能時間まで 2:59 』
という表示がでた。どうやら3時間おきに採取できるみたいだ。
この採取ポイント来るまでに他のパーティーとすれ違っただけでMOBとは出会えていない。向こうのパーティーもあまりMOBとは遭遇できていないらしい。
その人たちによると、サービス開始直後に他のプレイヤーより先行したい人たちなんかがこぞってMOBを狩ったせいでリポップが追い付いていないようだ。その人たちはゲーム内で2時間ほど前に森のほうへ狩りに行ったらしい。
とりあえず次の採取ポイントに向かって出発する。
「戦闘になったときの配置を決めておくわよ。ラプスとダイが前衛で、私とコウとミーナが後衛よ。でもコウ、あんたは相手の数が減ったら前衛に交じって攻撃を受けてみなさい」
「ン、分かった」
「前衛に入っても攻撃しようとするなよ?下手に食らったら痛みに慣れてないうちは動けなくなるぞ」
「俺だって痛いのは嫌だし、ガードに徹するよ」
「ガードするときなんだが、相手の攻撃に合わせてガードするんじゃなくて、クリティカル判定のある頭や鳩尾を庇うんだ。ここのMOBはラビともう少し強いラビットがいて、どちらもそこそこ素早いからVRに不慣れなままじゃ結構防ぐのが難しいんだ」
「りょーかい。慣れてきたら《格闘》でもやっていけそうなのが救いだな」
「魔法はかなり速くて、真っ直ぐ飛んでくれますけど、一瞬で命中するわけではないので、えっと、えふぴいえすのぐれねえどらんちゃあ?位の時間差を意識するといいですよ。最初は当てることだけを考えてうってくださいね」
「そっか、ありがとう」
引っ越す前は俺の家がみんなの家の真ん中位にあったこともあって、俺の家でゲームなんかもよくやった。
なぜか皆堂さんはFPSが異常に上手くて、操作を覚えると凸スナでぶっちぎりで勝つこともあった。皆堂さんの上官は「我が軍は圧倒的ではないか!」とか調子乗ってても許されるレベル。
そんなことを話していると、やっとMOBを発見した。
「ラビが3匹、ラビットが1匹ね。まだ気づかれてないみたいだから、配置を保って接近して、魔法で先制するわよ。」
丸っこい角が生えた灰色に白い斑点のあるウサギが4匹転がっている。一応《鑑定》を使ってみよう。1匹ずつ注視して、《鑑定》するように意識する。
ラビ Lv,3 獣
雑食の獣。主に草原に生息する。弱い。
ラビット Lv.1 獣
雑食の獣。草原や森に生息する。ラビよりはマシだが、弱い。
ダイの説明とレベル差から考えると、ラビットはラビの上位種のようなものなのだろう。ラビットの方が角も身体も一回り大きく、耳の形が立派なようだ。
気づかれるギリギリまで近づいて、魔法で先制攻撃する。
「ファイアボール」
「ウインドボール」
「ファイアボール」
それぞれ小声で適性の高い属性魔法を唱える。属性魔法スキルのLv.1はボールの攻撃呪文だけだ。どの位威力に差が出るのかわからないのでヒスイと同じファイアボールを使ってみた。
うげ、目に見えて俺のファイアボールの方が小さい。ヒスイのは50センチより大きい位で、俺のは30あるかどうか位だ。とりあえず一番手前のラビに向かって発射。
「ピィッ!?」
うし、当たった。ヒスイが魔法を発射した方向には、かなりのダメージを負ったラビが2匹。なるほど、グレネードランチャーというのは上手いたとえで、着弾点からの爆風ダメージがあるのだろう。ミーナのウインドボールは残ったラビットを瀕死にしていた。切り傷が痛々しい。
ラプスとダイは既に走り出して、あ、俺が攻撃したラビがサクっとやられた。とか思ってたらヒスイが攻撃したラビも倒した。
「ほら、攻撃食らってきなさい」
「ん」
ラプスとダイはラビットから距離をとったので、近づいて行っている俺が一番近くなった。
ラビットは一矢報わんとばかりに俺をキッ!とにらみつけると、血が流れるのも無視して走ってくる。俺は杖を持ったまま、ダイのアドバイス通り頭と鳩尾を庇うように構える。ラビットは距離を詰めると、俺の胸目掛けて跳び上がった。
腕に鈍い痛み。そのまま地面に転がったラビットはラプスにサクっとトドメをさされて、光の塊になって、消えた。HPバーを見ると4減っていた。
「どうだった?」
「うーん、これくらいなら大丈夫だけど、本来の威力で4発連続で食らったらガード外しちまいそう。でもちょっと経ったらそこまで痛くないな。ていうかウサギに対する罪悪感で心が痛むんだが」
「まぁ、そこは割り切るしかないわな。それも慣れるもんだよ」
「そういうもんかぁ」
近寄ってきていたヒスイが言う。
「今のあんたがソロだと先制2回魔法を当てたとしてもラビ1匹倒しきれないんじゃない?で、そのまま囲まれてフクロにされて終わりよ」
「それもそうか。アドバイスありがと」
「ま、みんなでもうちょっと付き合ってあげるから、とっととVRに慣れなさい。そしたらこのあたり位ならソロでも行けるでしょ。あ、そうそう、ドロップは自動でストレージに入ってるから、心配しなくていいわよ」
「へー」
その後も後衛に交じって狩りを続けていると、だんだんとMOBと遭遇するまでの時間が短くなってきた。
「やっとリポップが追い付いてきたみたいね。もう少し狩るわよ!」
狩りの中でポーションを飲む。そこはかとなく青汁っぽい。飲み干すと、渇水度が5回復して、満腹度が10下がった。驚いたが、ヒスイが「仕様です」と言うので仕様なら仕方がないと諦めて携帯食料を食べる。モサモサしているのにベチョっとしているという新食感。聞こえはいいがジッサイ微妙。味は…カ○リーメイトのプレーンが近いだろうか。中指を太くしたような大きさの塊を食べきると、50位になっていた満腹度が30回復した。
「満腹度や渇水度は常時減っていくんだけど、動いたり、武技…えっと武器を扱うスキルレベルが上がると使えるようになる、MPを消費して発動する必殺技みたいなもんね。これを使ったり魔法を使うと減りが早くなるから、気をつけなさい」
「そっか、さんくす」
「今日はこれくらいね、帰りましょ。」
「まだMPには余裕があるぞ?」
さっきからちょいちょい魔法を使っているがボールのMP消費は5なのでMPの自然回復と合わせてまだ少し余裕がある。
「えっとな、夜になると草原でもウルフっていう森の奥の方にいるMOBがポップするんだが、夕方でも稀にポップするんだ。昼なら今のパーティーでもなんとかなるだろうが、夜は視界が悪くなるから厳しいんだよ」
「そうなのか。夜に活動するときはどうすればいいんだ?」
「光か闇魔法のエンチャントを使うといいぞ。光のエンチャントはMDFが、闇のエンチャントはMATが上がるんだが、どちらも弱い光でも見えるようになる効果がある」
「種族固有の探知方法もありますよ。森人族は風のエンチャントを使うと感覚で敵の位置が把握できます。流石に地中までは感じられませんが…」
「獣人族は五感が鋭いから、大体の場所は何とかなるぞ。獣人にも種類があるから、一概には言えないけどな」
「山人族は土のエンチャントで地中と地表の敵が感じられるようになるぞ。俺とミーナが一緒にいれば索敵はなんとかなる」
「ヘーソウデスカヨカッタネ」
「ん?気に障ることを言ってしまったか、すまんな」
「いや、いいって、お前悪くないし」
ダイ爆発しろ。でも耳がピクピクっとしたミーナさんがかわいいので許す。
そんな風に話していると門に着いた。
「じゃぁ、今日の狩りの成果を確認するわよ」
みんなでステータスをみてみることになった。ワクワクしながらステータスをみようとするも、ヒスイが「ねぇ、ワク○クさん状態なの?ねぇ、ねぇ」と竹ひごっぽいものでプスプス刺してくる。
無視してステータスを開く。
このゲームではレベルアップを知らせることも、全回復することもありません。
ダイはタンカーをする予定ですが、今のエリアでは被ダメージが少なく、防御系スキルの経験値効率が悪いのでもう少し先のエリアから盾を装備します。剣を買って余ったお金はミーナさんの魔法の威力をあげる指輪にまわされました。
爆発しろ。